空気読め
−−6月
6月といえば何を連想するだろうか。ジューンブライド?梅雨入り?いいや、もっと身近でインパクトのあるイベント。それは水泳の授業だ!
学校のプール授業がやって来た。とはいえ、まともな授業がある訳でもない。ガチ泳ぎしたい人はする。水遊びしたい人はその横で遊ぶ。プールサイドにはすでにたくさんの生徒が集まっていて、思い思いに過ごしている。まさに生徒の自主性を重んじた自由な時間だった。
忘れてはいけない、この授業が持つ最大のポイント。それは女子の水着姿が拝めるという点だ。藤田達もあの子がいい、この子がいいと品定めをしている。
「宮本ってあんなに胸でかかったのかぁ」
「隠れ巨乳ってやつじゃない?」
そんな会話が繰り返される中、女子達の視線がこちらに向かってきた。彼女達も俺達が何を話しているか察しているようで、あまりいい気はしていない。
「「ちょっと、男子ぃ〜」」
でた、女子の名ゼリフ。どんな時でも男子に対して女子が使う魔法の言葉。それを放ちながらクラス内カースト上位の女子グループ、石井を含めた数人がこちらに向かってきた。
「藤田君、あなた達は私達をジロジロ見て、授業中って分かってるんでしょうね?!」
「こっちも普通に授業を受けているつもりだけど」
藤田が軽い調子で答えるが、男の
「そんな風には見えないわ。ずっと私達の事を品定めしてたじゃない。最っ低!」
「
由佳からの追い打ちも止まらないのだが、ちょっと待ってほしい。俺はただ鼻の下を伸ばしていただけじゃない。ハーレムライフ計画にもとづいて堂々と鑑賞していたんだ。一緒にしないでくれ。
−−ある日の教室
「
藤田達は拝むように手を合わせながら迫ってきた。話を最初から説明しよう。期末テストまであと二週間。前回の中間テストで赤点・追試を受けた
入宮と岡田ともかなり早い段階から勉強会をやっているのが影響して、こいつらもやる気になったのか。問題なのは今形成しつつある俺のハーレムには男子四人という存在はあまりにも強く、理想の勉強会とはかけ離れていく事だ。
しかも前回、教師役だった田中の姿もここ最近見かけない。この肝心な時にどこ行った?
「だったら私も教師役になってもいい?」
隣の席に座っていた森田が手を上げた。彼女の中間テストの結果もかなり上位に食い込んでいたはず。
「そりゃ助かるけど唐突だな」
「
なるほど。敵の情報収集というわけか。
「そういう事なら放課後、図書館に集まろうか。ただしおまえ達、私語は許さないからな」
これで本当に追い出す口実ができる。これはいい手だ。こいつらも真面目に集中するしな。
−−図書館
放課後、俺達は図書館に集まった。予想通り図書館には静かな雰囲気が漂い、集中して勉強するには最適な場所だった。入宮と岡田もすでに席について俺達を待っている。
「ちょっと人数が増えたけど、今日も頑張っていこうか」
勉強会が始まると森田は効率よく進めていく。彼女の落ち着いた教え方のおかげで皆の集中力も高まっている。もっとも、女子だから男子陣が食いついているというのが実際のところなのだが・・・。
「お〜皆頑張ってるね〜」
ここでまさかの担任、永田先生が現れた。
「最近勉強会やってるグループがあるって司書の人に聞いたけど君達だったか〜。うんうん、関心関心」
「先生も何かアドバイスとかありますか?」
「そうだなぁ・・・」
と永田先生は少し考えた後、続けた。
「勉強も大事だけど、休憩もしっかり取る事かな。無理をしないように。たまにはハッチャける気持ちも大事だよ〜ん」
そうか、勉強以外のところにも気を配るべきか。いや待て、それって単に遊べって話じゃないだろうな。このタイミングでそれを言うか?
「じゃ、頑張ってねぇ〜」
「「
あぁ、集中力の崩壊が始まったよ。なんて余計な事してくれたんだ、呪うぞ。
「いやいや、先生の言うことは分かるけど、今はこっちに集中だ」
「でも
「それはそうだけど、今やる必要はない。休憩は終わった後だ」
「そうね、少し休憩を入れるのはいいけど、復習だってもうすぐ終わるんだし、今はもう少し頑張りましょう」
藤田達は渋々ながらも納得し、再び勉強に集中し始めた。勉強会は再び静かに進んでいったが、その時永田先生が再び現れた。
「そうそう、一つ忘れてたことがあるんだよ〜」
「あれ?先生、もう大丈夫ですよ。僕たち頑張ってますから」
「いやいや、これは重要な事だからって・・・うわっ」
と再びテーブルまでやってくると、その瞬間に彼女が持っていたプリントが散らばってしまった。
「ごめんね〜。ちょっと助けてくれない?」
全員が再び集中力を失い、散らばった書類を拾い集める事になった。
教師に対して言うのはなんだが、こいつが一番邪魔なんじゃないか?心の中では二度と登場がない事を祈りながら俺は勉強会に注意を向けた。
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