第56話 文化祭①
『ここで校長先生からお話をいただきます。校長先生お願いします』
『みなさんこんにちは。えー、今日は一年に一度の文化祭ですね。私の時はそうですね…』
「校長話長いからな…。ちょっと切るか、これ」
教室のスピーカーから校長先生の声が聞こえ始めたかと思えば、何故か校長先生が自身の昔の話をし始めた。
しかし、そんなのは興味がない修哉がスピーカーをオフにしたことにより、校長先生の声はそこからは聞こえなくなった。
聞いてあげようぜ?一応この学校の校長だぜ?
「さてお前ら、今日は……年に一度の文化祭だ!!」
「「「うおぉぉぉぉ!!!」」」
静かになった教室で修哉が人一倍声を張り、数秒前に聞いたことのある言葉を叫ぶと、それに連なりクラスメイトも叫び出す。
ダメだ、もう校長なんていないものとされている。
まぁ、俺も校長は一旦置かせてもらって……、花守さんに文化祭に誘われてから早数日、みんなが楽しみにしている文化祭がついに今日を迎えた。
「よしよし、みんな元気だな。それじゃあ俺が今から言うことを復唱してくれ」
「「「イエス!」」」
「一年三組、三箇条!一つ!大繁盛を目指せ!」
「「「一つ!大繁盛を目指せ!」」」
「二つ!最優秀賞を勝ち取れ!」
「「「二つ!最優秀賞を勝ち取れ!」」」
「三つ!……とにかく楽しめ!!」
「「「三つ!とにかく楽しめ!!…うおぉぉぉぉ!!」」」
突然三組の三箇条という全くもって初耳のことを叫ばれたのにも関わらず、なぜかそれについていける三組のクラスメイトたち。
やばいってこの人たち、盛り上がり方が高校の文化祭じゃないんだって…、どっかの国際大会レベルの盛り上がりなんだって…。
「おーい、智ー」
「あ、修哉……何飲んでるんだ、それ?」
「これか?子供ビール」
「アホかお前?…いや元々アホか」
「は?…あぁ、安心しろ。智の分もあるぞ」
「そういうことじゃねぇ、バカ。そして要らん。こっちに向けるな」
俺が目の前で盛り上がりまくるクラスメイトたちを遠い目で見つめているとその中からワインボトルみたいな形状をしたものを口に咥える修哉がこちらにやってきた。
アホだろこいつ、なんでもう終わった感出してんだよ、一人だけ打ち上げの雰囲気になってんだよ。
「あ、そういえば智。花守さんのやつどなったの?」
「あ?あー、あれな。まだ対策が浮かばん…」
「あー、そうなん?」
すると修哉が例の花守さんの話をしてきた。
本当のところを言うと…、前日となった今日になっても一向に対策案が一つも浮かばないのだ。
お面をかぶるという案とかサングラスをつける案とかは思い浮かんだのだが、多分全部バレる気がしたからだ、サングラスに至ってはバレる気満々じゃないか。
「…おっと、そろそろかなー」
「ん?何が?」
「ちょっと待ってろ。…よいしょっと」
『…あの時は楽しかったですねぇ…。…おっと、そろそろ時間ですかね』
修哉は何かを思い出した顔をすると、再び後ろにあるスピーカーのボタンをオンにすると、なんとほぼぴったしで校長の話が終わろうしていた。
「え?なんでお前?」
「あぁ、今放送しているやつ俺の友達でな。ちょうど校長の話が終わる時間帯を教えてもらってたんだよ」
「あ…、だから校長の話のとこだけ切れたんだな」
というかそんなに校長の話聞きたくなかったのかよ…、今の行動見たら校長ガン泣きだぞ。
……別に校長のガン泣きは興味ないけど。
『それではこれで終わりにします』
『校長先生ありがとうございました』
『さて!皆さんお楽しみの文化祭まであと三十秒ですよ!』
話が終わった校長はその場から立ち去り、次にスピーカーからは元気良い男子のカウントダウンが始まり出した。
カウントダウンは徐々にゼロに迫っていき、残り半分の十五秒にまで迫ってきた。
『十一!』
『「「十!」」』
『「「九!」」』
残りカウントダウンが十秒に入った時、クラスメイトもスピーカーにあわせてカウントダウンの合図をしだした。
しかもしているのはうちのクラスだけではないようで、廊下からもカウントダウンの声が聞こえてくる、多分全校生徒がやっているのだろう。
「何やってんだ智!お前もだよ!」
「え、俺も?」
「あったりめぇだ!ほら、五!」
「あ、五ー」
すると隣にいた修哉に俺もカウントダウンをするように促され、五秒前から俺もカウントダウンに入った。
『「「四(!)」」』
『「「三(!)」」』
『「「二(!)」」』
『「「一(!)」」』
『「「「ゼロ(!)」」」』
『文化祭一日目スタートだ!!』
「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」」
てなわけで、騒がしくも文化祭一日目、スタートしました。
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