第52話 文化祭準備③
ピンポーン
「…あー、着いたのかな」
休日、特にすることもなくなりとても暇になった俺はソファの上で読書をしていると部屋のインターホンが鳴った。
いつもなら、誰だ?となるが今回はその相手が誰なのか俺はもうすでに知っていた。
ソファから立ち上がり画面に映る人物を確認する。
画面には予想通り水瀬さんと玉井さんの姿…ん?修哉?
俺が予想していたのは水瀬さんと玉井さんの二人だけだったのだが何故かその後ろから修哉の顔がひょこっと出てきた。
修哉には特に何も伝えてはいなかったのだが…二人のどちらかが誘ったのだろうか?
まぁ考えていても仕方ないので通話ボタンを押して自分の部屋に来てもらうよう話した。
案内は…まぁ修哉がいるみたいだしあいつがしてくれることだろう。
―― ―― ――
「おぉーここがさとるんの部屋かー」
「本当に花と同じマンションなんだね」
「よー、智ー」
「ちょい待て。お前は何しに来たんだ?」
ちゃんと修哉が案内をしてくれたらしくその後すぐ俺の部屋にやってきた。
そしてその中にはちゃんと修哉もいた。
三人が来るまで修哉がいる理由について考えてみたが全く心当たりがない、考えるのを諦めた俺はもう直接本人に聞くことにして、修哉だけ玄関のところで通行を止めた。
「当ててみ」
「なんでだよ」
「ヒント、飯」
「飯?」
しかし、俺の問いかけは逆に俺への問題として返ってきた、しかもヒント付きで。
えー……。
俺は修哉の服装を確認してみる。
上半身はバスケ部指定のウィンドブレーカーで下半身は学校指定の体操服の長ズボンを着用している。
「…お前今日部活あった?」
「おぉ、あったあった」
うん……。
そうだよね?逆にそうじゃなかったら何があるんだよ。
てかなんで俺はしっかりと問題を解こうとしてるの?
「…えーっと、部活が終わり腹を空かせながら帰宅中に水瀬さんたちに会い、俺が飯を作ると知ってお前も来た、とか」
「くっ、あぁー、んー…」
「なんだよ?」
「いや……お前には三角をやろう!」
俺がそれらしき…てかこれしかない気がするのだが、この問題に対する正解を言うと、修哉は少し考え始めた。
そしてその後すぐ俺に丸ではなく三角だと言い渡した。
三角ってことは惜しいのか?
「正解は部活で腹を空かせたので智に飯を作ってもらおうとした、でした。水瀬たちとはここであったんだぜ」
「もう丸だろ。てかせめて連絡よこせ」
と思ったがどうやら最初から俺の元に来ようとしていたかいないかの違いだけだった。
飯食いに来たんだから結局一緒だろ。
というかいまの今までなんの連絡もよこさず、突如として俺に飯を作ってもらおうと考えていたとか呆れを超えてもはや怖いわ。
今日とかじゃなければ俺がこいつに何をしでかしていたか…。
「さとるん準備オッケー?」
「あ、はい。今行きます」
「てか今から何するんだ?パーティー?」
すると部屋の方から玉井さんの声がした。
俺は今回の目的がこんな変な問題ではないことを思い出し、すぐさまその声に返答しながら部屋の中へと向かう。
そして同じく玉井さんの声が聞こえた修哉は俺の後ろを歩いてくるとともにそんなことを聞いてきた。
そういえばこいつの目的は俺の飯を食いにきただけでこっちの目的は何も知らないんだった。
俺はそんな修哉に素直に答える。
「あぁ、違う違う。文化祭の調理担当の人たちのために調理の手順の動画を撮影するんだよ」
言葉の通り、今回の目的は文化祭に向けた調理の撮影だ。
文化祭で出す料理、もちろん各々のちょうど良い酸味や甘味、苦味などはあると思うが出し物で出す料理の一つで、それを食べるのは来てくれたお客さんたちだ。
万が一でも同じ料理の味が異なるということはあってはならない。
なので作る料理の味付けなどを全員統一させる、そしてそのための方法というのが動画撮影だ。
二、三人組で班を組み、自分が作れる特定の料理を自宅で作り、他の人たちはその姿を撮影してあげる。
そうすればあとはメールアプリで動画を共有してあげることで見返すこともできるし、一人の時でも自宅で作れる。
「へぇ、考えたもんだな」
「まぁ、水瀬さんの案だけどな」
「ちなみに智は何作るんだ?」
「今日はとりあえずオムライスを作る」
「よっしゃぁ!オムライスだぁ!」
「もう食う気満々かよ…。まぁ一応材料は多めに作っといたからなぁ、いけるか…」
修哉はそういうとリビングのソファに思いっきりダイブして行った。
もとから今回作る料理を昼飯にしようと考えていた俺は水瀬さんと玉井さんの分と念の為のおかわりのためを思い材料を多めに取っておいた。
だから俺が先ほど、今日とかじゃなければ…、と言ったのもそれが理由だ。
俺は奥で「これして良い?」と俺のゲーム機を手に持つ修哉を適当に受け流しながら調理の準備にかかった。
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