第33話 体育祭③

 その後も特に大きな問題はなく毎回大盛り上がりな(主に司会と団員たちによって)個人種目はついに個人種目最後の借り物競走に移り変わった。

 あ、ちなみに俺の出た騎馬戦だが、チームの一人が俺ということもあり、チーム全体がうまく動くことができないまま呆気なく俺のところは最下位になった。


 スタータを上にあげ、音がするとともに一列目の選手たちが走った。

 徒競走のようにとにかくゴールを目指すわけではないので、ほぼ全員がランニングほどの速さで走っており、そのまま地面に置かれているお題の書かれた紙を手に取った。

 しかし、元気は今でもなおあり余っているようで、応援と実況の熱狂具合は変わらなかった。


 お題の内容はラケット、ボール、帽子など物はもちろん、性別、性格、更には意中の相手などたまにやばいお題がある人に関するお題がある。

 お題を確認し終えたのか数人は物が置かれているスペースに、もう数人は生徒がいるテントに向かっていった。


(はぁ……頼むから物であってくれ……)


 物だったらものすごく楽にスムーズに終わるのだが、人だった場合いわずともだが色々面倒なことになる。

 俺はそんなどうでも良いことを考えながら自分の番を待つのであった。


―― ―― ――


「次、八番目の人準備を」


 じりじりと肌が焼けていくように感じてしまったとき、俺の番の合図が出た。

 言われた通りにスタートラインに立つ。

 先生は七番目の人たちが走り終えたのを確認して、スターターを上にあげ、もう何回目かわからない音がなった。

 俺はそこまで速く走らず、お題の紙を手に取った。


 お題は……『女性』。

 ………神はとうとう俺を見放したみたいです。

 俺も流石に人関連のもの全てを引かせるなとかそこまで欲張りなことは言わないよ。

 けどもせめて男子とかさ友人とかさ修哉とか坂上くんとかを連れて行けるようなお題ぐらいにはしてほしかったな…。


 確かに女性でも花守さんとか水瀬さんとか玉井さんとか最近仲良くなった人を連れて行ける。

 なんなら楽勝だ。

 

 でもこれは俺以外の男子とかの場合だ。

 俺みたいなあと一工夫で反社会的人間に見えかねない男が女性を連れ出してみろ。

 色々騒がれて面倒なことになる。


 しかし、引いてしまったものはどうやっても変えられない。

 小さなため息をついてから少し早足で青団のテントに向かった。



「………あ、いた。花守さん」

「あれ、江崎さん。どうしたんですか?」


 俺はとりあえず最初に出てきた花守さんをお題の内容として来てもらおうと青団のテントにやって来た。

 やはり盛り上がっていることもあり、見つけずらさはあったものの案外すぐ見つかった。


「実は借り物競走のお題が女性でして…」

「あ、それで私を」

「お願いできる?」


 しかし、見つけられたものはいいのだが結局は花守さんが引き受けてくれるかなのだが…。


「はい、私で良ければぜひ」

「ありがとう…」


 相手が花守さんだからか話はスムーズに進んでゆき、その流れのまま最終的には快諾してくれた。

 あー、本当にありがたい…。


 目的を達成した俺はとりあえず一刻でも早くこの場を立ち去ろうとする。

 何故かって?

 それはもう予想通り周りがざわざわしているからだ。


 しかし俺も花守さんと話して途中で気づいたのだが、そういえば花守さんは学校一の美少女として知られる存在であった。

 だから異様に周りがざわついていたのか。

 友人として接していたので忘れていた。


「それじゃあ行こうか」

「はい」


 でも結局のところざわついていることには変わりはないので、俺はとっととその場を離れるべく、花守さんを連れてゴールまで向かったのだった。

 結果は二位だった。

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