第2話・殺人鬼狩り

 雨が降り続く路地道を、目元に黒いコウモリのようなタトゥーを彫った太った男が走っていた。

 何かから逃げるように、ずぶ濡れで走り続ける男の足がもつれて転倒する。

 泥だらけになった男が呟く。

「どうして、一年前に処刑された連続殺人鬼の【蛇形 サキ】が、ここにいるんだよ……なんでサキが、殺人鬼仲間を殺しまくっているんだよ」


 太った男の殺人鬼ネームは【鉄丸】……鉄丸は殺人に道具は使わない、鉄丸の殺人道具は己の巨漢のみ。

 カバのような強靭な体でターゲットを壁に押しつけて殺す。

 鉄丸は、圧死していく人間の苦悶の表情を、眺めるのが大好きだった。

「とにかく、今は逃げねぇと」

 立ち上がった鉄丸の目に、ドラム缶の上に立つ女の白い足が見えた。

 見上げた鉄丸の目に、雨に打たれて立っている蛇形 サキの姿が映る。


「ひッ!」

 悲鳴を発して、尻餅をつく鉄丸。

 ドラム缶の上に、立ったサキの生足の人工皮膚の表面を、生身の体とは異なるプラスチックやシリコンの表面を流れるような不自然な水滴の流れに鉄丸は気づかない。

 鉄丸は、無表情で見下ろしているサキに哀願する。

「頼む、見逃してくれ……同じ殺人鬼仲間じゃないか」


 無言で立っていた蛇形 サキMARK―Ⅱが、飛び降りるのと同時に、前腕ぜんわんから飛び出した幅広の刃物が鉄丸の首を切断する。

 チェンソーのように刃が回転する刃物で、切断された首が雨の中を転がり、鉄丸の倒れた体から流れ出た鮮血と、サキの体に飛び散った血を雨が洗い流す。

 殺人鬼を抹殺するジェノロイド【蛇形 サキMARK―Ⅱ】が言った。

「殺人鬼、鉄丸……抹殺完了」


 サキが殺人鬼を一人、始末した光景を街の監視カメラを使って見ていた、開発責任者がマイクに向って言った。

「ご苦労だった……もどって来いサキ」

 蛇形へびがた サキMARK―Ⅱは、指示に従って一番近くのメンテナンス格納施設へと帰って行った。

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