殺人鬼ハンター・ジェノロイド【蛇形 サキMARK―Ⅱ】

楠本恵士

第1話・女性型ジェノロイド完成

 新緑の爽やかな風が渡ってくる高原に、その政府施設はあった。

 開けられた窓から吹き込む涼風が、機械が並ぶ部屋の中に立っている、女性型アンドロイドの銀髪のポニーテール髪を揺らす。


 責任者の男が言った。

「窓を閉めろ、他国のスパイに見られたらどうする。量産されるぞ」


 機械フレームで機体を固定されて、両目を閉じて立っているアンドロイドは、人工皮膚がかぶせられた頭だけが人間そっくりで。

 体の方は内部が露出した機械が、剥き出しの状態だった。


 ジェノロイドと名づけられた、アンドロイドの調整が終わったのを確認した、開発チーム責任者が言った。

「よし、ジェノロイドの体についているコードを外して体の方にも人工皮膚を着せよう」

 数人の開発者が、協力してアンドロイドの足の方から肌色の人工皮膚を穿かせて、人間そっくりな姿にする。

 両目を閉じた格好で立っている裸の女性のようなジェノロイドの姿に、開発責任者は少し目のやり場に困る。


「服も着させよう、下着から」

 女性開発者たちが、完成したジェノロイド【蛇形へびがた サキMARK―Ⅱ】に下着をつけて、デニムの古着ショートパンツ、体の前裾を縛った半袖シャツ、その上に赤い革の丈が短いライダージャケットを着せて。

 ヘソ出しスタイルをしていた、生前の蛇形 サキと同じ姿にした。


 開発責任者がタブレットで、処刑される前の、史上最悪の連続殺人鬼『蛇形 サキ』の服装映像を確認しながらうなづく。


「これなら、殺人鬼どもは蛇形 サキが生き返って地獄からもどって来たと勘違いして、震え上がるだろう」

 人々を震撼させた、十代の連続殺人鬼。蛇形 サキは一年前に極刑が執行された。


 しかし、不安定な社会の歪みの中で殺人鬼たちは誕生し続けて。

 その社会不安を解消するために、政府は殺人鬼を狩って抹殺する機械ハンターとして。

【蛇形 サキMARK―Ⅱ】を作った。

 

 殺人鬼を狩る殺人鬼マシン。

【蛇形 サキMARK―Ⅱ】が、ゆっくりと目を開けた。

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