番外編 出会い
レイヤーカットされた髪型をポニーテールにした女の子、服も身だしなみも周りとは違って金持ち感を出した彼女は早乙女財閥の令嬢と言ったところか。早乙女 瑞稀だった。
自分でもわかるくらい、小さい頃は捻くれていた。
先生たちは私の身分や、護身術での強さを見て恐れている人もいれば、つけ入ろうとしてくる人もいた。
そんな環境で育てば他と比べて大人になるし、捻くれても仕方ない。
「田中 美希です、よろしくお願いします。」
その日は転園生が来た。若い先生の隣には私よりも背が高い、同い年くらいの女の子がいた。
私と違って綺麗で傷一つない白い肌に腰まである長い髪。
この時はまだわからなかったけど私はきっと彼女に、”対抗心“と言う感情を抱いていたのだろう。
それだけで済めばよかったのだが…
「彼女は今日から入ったんだけどね、早乙女さんと同じ5歳なの。同じ幼稚園のはずよ?彼女に道場内を見せてあげてくれない?」
護身術のクラスまで同じになった、正直言って案内をするのは嫌だった。
私は他と違って遊びに来てるわけではないのだ、そう思ったがこれも点数稼ぎと思って仕方なくその子を案内してあげることにした。
「えっと、名前…?」
「瑞稀、好きなように呼んで。」
後ろを振り返らずに自己紹介をする。
「えっと、じゃあよろしく!瑞稀!」
こいつ!!はじめっから呼び捨てだなんて!!私のことを知らないのか!?私はあの早乙女財閥の…
そこまで考えて辞めることにした。だって友達ができないのは…みんな私の前では気持ち悪い笑みを浮かべるのは全部、家計のせいだから。
「瑞稀、どこ向かってるの…?」
「トイレ、一番大事でしょ。」
私の素っ気ない感じに合わないと察しったのかそれから美希は頷くだけでどこを案内しても何も言わなかった、
まぁ私にとっては好都合。
気に食わなかったのは彼女がすぐに私と同じ最高階級までやってきたことだ。
なんて考えて数週間後、私の人生を変える日がやってきた。
「瑞稀ちゃん、知ってる?飼育小屋に入った新しいうさぎ、たんぽぽ食べるんだって!」
「えっ、本当?」
うさぎがたんぽぽを食べるのは一般的だが、前までいたうさぎはドライフードなどしか食べなくって私は好奇心で飼育小屋に近づいた。
すると先にケージの前にいたのは美希だった。
「あっ、瑞稀…」
彼女の手にはたんぽぽが握られてた、
私は口を尖らせて彼女に聞く。
「何してるの?」
すると少しビビったのか、体を縮めて言う。
「うさちゃんね、たんぽぽ食べるんだって。だからあげにきたの…」
「は?」
いつのまにかそんな言葉が口から出る。
「私があげるからあんたは消えて。」
「え、でも…」
「でもじゃない!」
いつのまにか叫んでしまうと美希も声を上げる。
「やだよ!私が先にいたんだもん!!」
そのまま私たちは暴力での喧嘩になる、私たちは互角の強さだったらしくなかなか勝負がつかなかった。
とうとう疲れ切ってしまった時、先にたんぽぽを食べてもらった方の勝利という結論におちいた。
「「食べて!!」」
私たちが叫ぶとうさぎは鼻をヒクヒクさせながら美希の方へ行って、たんぽぽを咥えた。
「やった!」
彼女がそう呟いた時、うさぎが私の方のたんぽぽも咥えて…
「ッペ!」
ケージの外に吐き出した。
このうさぎは高級ドライフードしか食べない、贅沢ものだったのだ。
「ッフ、」
美希が笑うと私も爆笑する。
「あはははは!」
お腹を抑えて笑いこげて、
それから数分。笑うのに疲れた時、私たちは顔を見合わせてもう一度笑った。
それからだ、美希と親友になれたのは。
彼女は私の身分関係なく接してくれたから喋りやすくて、すぐに仲良くなれた。
美希が早乙女財閥を知ること、私が彼女の家計問題を知ったのは当分先になるのだが…
そんなんで私たちの絆は揺るがなかった。
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