第12話 誘拐犯
体育館倉庫から出てきた男性は包丁をここの生徒であろう子供に向けた。
「動くな、スタンガンを置いて手を上げろ。」
倉庫の扉の隙間からは瑞稀や他の生徒も見えた。
あっきーは言われるがままにスタンガンを置いて手を上げる、つられて私も手を上げると男性はゆっくりと近づいてきた。
その時、
「よし、そのままこっちに…!」
腕を後ろで縛られた瑞稀が男性に蹴りをかました。男性がふらつく、
その瞬間をあっきーは見逃さない。
「スタンガンは二つ持ってきてるんだよね〜。」
男性の腹部にスタンガンを押し込む、すぐさま倒れる男性。
「美希!」
「瑞稀!!」
私は泣きながら瑞稀に飛びつく。
良かった、彼女は大丈夫そうだった。
「私のために泣いてくれるのは嬉しいんだけど…それよりも縄解いてくんない?」
私はハッとして瑞稀の縄を解こうとするのだが…
全然解けない。
「はい、」
そう言ってあっきーが包丁で縄を切ってくれる。
「一件落着だね、最近行方不明になってる生徒がいるって聞いたからこいつらのせいじゃないかな?」
「え、じゃあ七不思議に興味あるって言うのは?」
「興味はあったけど、全く信じてなかったね。」
あっきー、役者目指したらどうだろう。顔いいし演技上手じゃん...
「あ!!」
声の方を見るとさっきまで捕まっていたオレンジ髪の男の子がいた。
「お前!今噂のイケメン転校生!」
「…誰?」
どうやらあっきーは彼のことを知らないようだ、包丁を振り回して遊んでいる。
「お前のせいで俺の彼女は…!」
「彼女は?」
「その…彼女が…好きな人ができたって…」
急に彼がゴニョゴニョし出したのを見てあっきーがどうでもよさそうに言う。
「へー、うけるー。」
「お前!!!絶対許さん!!」
オレンジ髪の人はあっきーに飛びつこうとするが腕を縛られてるせいで普通に転ぶ、
そんなやりとりをしてる間に瑞稀が体育倉庫に閉じ込められていた人たちを助ける。
少し落ち着いてから自己紹介が始まった。
「私は一年三組、早乙女 瑞稀。」
「同じく三組の西尾 彰人。」
「同じく、田中 美希。」
私たちが自己紹介をするとイラついた顔をしたオレンジ髪の人が口を開く。
「一年二組、池田 湊みなと!」
「同じく、河合 綾あやです、」
今度はおっとりとした感じのおさげの女の子が自己紹介をした。
その後にもう一人、湊くんと同じ髪だがもっと大人っぽい顔つきに優しい声の男性が口を開く。
「三年一組、池田 悠真ゆうまです。この度は本当に助かりました。」
池田って、兄弟ってことか…あれ?池田って確か…
「あ、思い出した。生徒会長だ。」
瑞稀の言葉で私も思い出す、なんで生徒会長がここに!?いや、生徒がいる時点でおかしいんだけど…
「生徒会長さんたちはなんでここに?」
あっきーが表情ひとつ変えずに質問する。
「実は、綾が明日ピアノのコンクールがあってね。その練習のためにここ一週間通ってたんだ。」
なるほど。きっと七不思議の一つ、夜に鳴り響くピアノは彼女なのだろう。
これで全ての謎が解けた!
「君たちはなんでここに?」
「七不思議が噂になっていたので、肝試し気分で来ました!」
あっきーがにっこり笑う、それに釣られて私たちも苦笑いをした。
それから犯人を縄で縛って警察に無名で通報し、帰ろうとした時だった。
外は真っ暗で灯りは遠いい為、持ってきた懐中電灯だけが頼りだったのだが…
「ねぇ、あれって。」
瑞稀が懐中電灯を屋上の方へ向ける、そこには屋上のフェンスの上で踊っている女性がいた。
噂通りの白色の着物のような服に真っ暗な髪型、
そして私は目を疑う。
「…足の方、透けてない…?」
後日、瑞稀からグループチャットに送られてきた屋上の写真には何も写ってなかった。
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