第6話 仕方ない
平山 千代さんが真っ赤なワンピースを着て手を後ろで組んだままゆっくりと平山 陸さん、浮気野郎の方へに近づいていく。
「十希、全体が映るように動画撮って。あくまで自分をとっていたら彼女たちが写ってしまったように。」
「え?」
「早く、」
あっきーが急かすので携帯で自撮りポーズをしてみんなを写す、携帯に写っている平山さんたちを見た後私は後ろを振り向くことができなかった。
「きゃああああ!」
千代さんは真っ直ぐ陸さんの方へ行ったと思ったら途中で浮気相手の花さんのとこに行き、背中で隠してたギラギラと光るナイフで…気づいた時には全て終わっていた。
「ママァァァァ!」
砂場に倒れた花さんから真っ赤な血がすごいスピードで流れて砂が赤く染まっていく。
「まだ撮り続けて、まだ終わってないから」
あっきーは救急車と警察を呼んだようだ。携帯をポケットにしまった彼は走って花さんの娘、小町ちゃんのとこへ向かう。
「あら?あなたが悪いのよ?浮気なんかするから、けどね許してあげる。だってこいつらがいなくなれば…」
千代さんが静かな声で喋る、私はまだ携帯を見てるだけだ。恐怖で後ろを向けない、携帯から目を逸らすことができない。私はただ震えながら彼女がこっちを向かないこと、目を合わせないことだけを願った。
「あなたは私だけ愛すでしょ?」
今度は小町ちゃんを刺そうとする、泣き震えるのは当たり前だ。母親が殺され、次は自分が刺されそうなんだ。私は微動と出来なかったのにその場で初めて目を瞑ることができた。警察のサイレンの音がする、救急車の音も。次に目を開けて見えたのは警察に捕まった千代さんや救急車に運ばれる花さんなど。私たちも調査のため警察署で少し話してから解放された、花さんも病院で一命を取り留め一安心したところだ。
「あっきーは千代さんのことわかってたの?」
「人を殺すってこと?別に、ただそういうことが多いから。」
「?」
私は隣に座ってるあっきーの方へ振り向く。
「探偵はアニメと違ってほとんどが浮気調査だとか、ペット探しとか、そんな依頼しか来ない。そんな中で浮気調査を頼んでくる人ってね大抵二パターンいるんだ。」
私にピースサインを見せる。
「慰謝料を請求するために証拠が欲しい人、または浮気相手を知りたい人。」
私は千代さんの顔を思い浮かべる。
「まぁ、最初から浮気相手のことを狙っていたのかは知らないけど…」
“子供に罪はないからさ、”
私はその言葉を思い出す、今全てが起きたこの状況だからやっと理解できる言葉。
今回は誰も死なず、いい形に終わったのかもしれない。けれど、私はこの結果に納得できなかった。
「今回は仕方ないよ、死者が出なかったしいいじゃんか。」
そんなこと言われても私のモヤモヤは消えなかった。
"今回は仕方ないよ、死者が出なかったしいいじゃんか。“
ベッドの上で自分が言った言葉を後悔する、なんでもっと気の利いた言葉が言えないんだろう…僕はベッドサイドテーブルに置いてある写真をそっと引き出しに入れた。写真の中では黒髪の少年と金髪の少年が仲良く肩を組んでいた。
「何が正解なんだろうね、輝。」
スタンドミラーに映っている僕を見つめる、そこに輝はいなかった。
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