第2話 行ってきます

お父さんが亡くなった翌日、佐藤 輝さんこと探偵は私の家に来ていた。

「ほら、廊下とこの部屋だけ床が綺麗。」

他のとこは汚いってこと?喧嘩売ってるのかな…?

「葬式はいつの予定?」

「あ…」

「?」

「親が離婚した時、お母さんがお金とか全部持ってて…お父さんの家族はみんな事故死で、貯金とかあまりないし…」

「そっか…」

少し悲しい空気が流れた時、家の電話が鳴った。

「ちょっとでてくるね。」

私は駆け足で歩き、電話に出る。電話の先は大家さんだった。

「もしもし、美希ちゃんかい?」

「はい…」

「今回のことは気の毒だったね、家賃の話なんだけど…」

「えっ…?」

私は自分の耳を疑った、だってそれってもう…じゃあね、という声と共に電話が切れる。

「どうかした?」

「どうしよう…家、でてかなきゃいけない。」

「え…?」

「今まで払えてなかった分の家賃はいいから、もっと安いとこ見つけなさいって…」

オロオロとしてる私はまたもや耳を疑った。

「うちに来る?」

「え…?」

「二階建ての家でね、リビングは事務所になっていて、2階には開いてる部屋があるし。この小さなアパートに入るくらいの家具なんか簡単に入るだろうね。僕、一人暮らしだし。」

「ほんとに…いいの…?」

これ以上いい場所はないだろう、だけどこんなにも簡単に信用して良いのだろうか…?

「後から何かよこせって言ってこない…?」

「うーん、家事手伝って欲しい。別に家賃はいらない、儲かってるし。」

それで私は決心した。

「お邪魔します!」


それから引越しのためにいる物、売る物などを分けたり荷造りをしていた。お父さんの服、どうしよう…

「終わった?」

「お父さんの服どうしようかなって…」

「うちは広いからしまう場所なら十分あるし、無理して売る必要はないと思うよ。」

そうして私は洋服をとっておくことにした。だいぶ荷造りが終わった時、小さな写真が落ちてる事に気づいた。どうやらお父さんのお財布から落ちたようだ、そこには中学に入学した時の写真が写ってた。写真をぎゅっと握りしめてると水滴が写真に落ちた、その時初めて私がないてるという事に気がついた。そういえば私、お父さんが亡くなってから一度も泣いてなかったな…そう思うと涙が止まらなかった。

「…お父…さん…」


玄関で靴を履く、もう全ての家具を輝さんのトラックに乗っけおえた。大家さんに鍵を渡す。

「おせわになりました。」

「美希ちゃん、頑張ってね。」

私は微笑み返したらトラックの方へ行く、乗ろうとした時ふと大事なことを言い忘れてた事に気づく。

「行ってきます…!」

私はトラックに乗って事務所に移動した。


「そういえばどこに住んでるんですか?学校どうしよう。」

「すぐ近くだよ、中武中学でしょ?歩いて通える。そういえばお前苗字はなんだ?」

「田中です。」

「田中 美希か…探偵用の名刺作ってやる、偽名を考えなきゃいけないが…美希、美しい希望か。いい名前だな。」

わざわざ偽名を使うんだ…ってことは輝さんも偽名かな?

「輝って名前も偽名ですか?」

「あぁ、本名は西尾 彰人だ…」

「偽名で呼んだほうがいいんですよね…」

どうしよう、使い分け苦手なんだよな。あっ!

「あっきー!」

「?」

「あっきーって呼んでいいですか?これなら使い分けが楽ですし。」

「あぁ、ついたぞ。あと敬語もいらない。僕も中1だ。」

「へー、そうなんですね…え?」

同い年の子が一人、こんな大きな家に住んでるの…?私は自分の目を疑った。今日は何もかもが嘘のようだ。

「これからよろしくね。」

「よろしくお願いします…!」

敬語を使わないなんて恐れ多いけど…敬語苦手だしまあいっか。私が覚悟を決めた時、高そうな服やアクセサリーをつけた女性に声をかけられた。

「輝さん…ですか?」

「最初の依頼だよ、美希…いや、」

あっきーが私の耳元でつぶやいてこっちを見る。

「犬田 十希。」

「はい!」

私は今日から、中学生探偵犬田 十希!


田中 美希 [犬田 十希 (いぬた とき)]

平均的な身長の女の子、綺麗でサラサラな肩までの黒髪をハーフアップに。かなり整った顔立に落ち着いた様子でちょっと話し難い雰囲気をまとってる。胸がぺたんこなことをかなり気にしている。

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