第17話 強く

天才、この世は魔法と知識が全てだから魔法も勉強もすぐにできてしまう人は周りからチヤホヤされる。

他にも絵の天才、歌の天才、料理の天才…


器用で何でもできるお姉ちゃんは勿論周りから何でもできてしまう本物の天才、全知全能呼ばわり。


そんな姉の妹に生まれれば勿論期待される。



けど私は期待には応えられなかった。



散々言われてきた私に唯一優しくしてくれたのがお姉ちゃんだった。

彼女のおかげで大人は私に何も言わなくなった。


私に手を伸ばす姉の姿がすごく綺麗で、彼女とずっと一緒にいたいと思った。ずっと“お姉ちゃん”と呼びたいと思った。


例え彼女がいなければ、私はあんな言葉をかけられなかっとしても…






「は〜い、この子に傷がついてほしくなかったら腕輪をちょおだーい。」


私は三つ編みの女性に口を塞がれる。

あぁ、まただ。また私は足手纏いに…


ルカの表情は変わってないのに、こっちを見る目が威嚇しているように感じた。

その姿がお姉ちゃんと重なる。


「放射:ウィンドスラッシュ!」


私の方を向いて、意味ありげに頷く彼女の言いたいことを理解できたのはお姉ちゃんのおかげだろう。


飛んでくる風をうまいこと体を動かし避ける。三つ編みの女性は後ろに吹っ飛び、いけそうって思った時だった。


「!」


いつのまにか移動した女性がルカの頭を殴る。

片眼を瞑って痛そうに振り向くルカに必死に叫ぶと、目の前から急に岩が現れてお腹に直撃する。


「ゲホッ、ッツ!」


「ミア!!」


横を向くと茶髪男性が何か呟いていた。


あぁ、いたい。ズキズキする私のお腹を必死に押さえていると、今度はルカに攻撃が行く。


あぁ、やめて…お願いだから。


”やめて“


その一言が私は言えなかった。


いつもそうだった、私は何を恐れているのだろう…


“ミア、あなたはまだ弱いけど…

強くなれるよ、

いつかあなたに、守りたいものができて、

守らなきゃいけない時が来たら、


あなたは今とは比べ物にならないほど、強くなれる。”


お姉ちゃんの言葉を思い出す。

私はお姉ちゃんを守って、お姉ちゃんのために強くなりたかった。


お姉ちゃんに一番最初に見て欲しかった。


いつもみたいに、一番最初に…



けど、ごめんね。お姉ちゃん。


私には初めてお姉ちゃん以外にも守らなきゃいけないものができたの。


初めてお姉ちゃん以外の為に強くなりたいと思えたの。


「ワォーター!!」


壁に囲まれているおかげで水の逃げ場がなく、すぐに数メートルのプールができる。

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