第5話 なーちゃん
「ルカ!?」
ごめんアロ、私まだ何も役に立ってないね。そもそも私の固有魔法って本当に水の魔法なのかな?
「ッ、」
目がうまく開けられない、さすがに何にもなしで走ってくるのは失敗だったか。何にもなし…?私はポケットから杖を出した。
「あるじゃん…!」
走ってる女の子を見つけた、女の子に叫ぶ。
「危ないから…!」
女の子が私に気を取られて転んでしまった、それだけなら良かったのだが…
「ママー!!」
柱が倒れてきた、このままだと女の子が潰れる!私は女の子を引っ張ってできるだけ私の後ろまで持ってくる。危機一髪で避けれたが…
「君、名前は?」
「なーちゃんだよ、なーちゃんのママここで寝てるの!火のこと気づいてないんだよ!ママのとこ行かなくちゃ!」
「なーちゃん、ここは私に任せてくれないかな。ママのこと絶対助けるから、なーちゃんは外に走って出て。走るんだよ、後ろは見ちゃダメ。わかった?」
「ママ助かる?」
「もちろん!」
「お姉ちゃんありがとう!」
走って出口に急ぐ女の子、さて…あの子はまっすぐ階段へ向かってた。いるなら上の階か。私は近くに落ちてる包丁を手にする、ここがキッチンで助かった。私は長い火のついた髪の毛を根本から切り落とす、
「髪は女の命か…」
あの子はワンピースに合う綺麗なツインテールだったな。私は髪から服に移った火をたたいて消しながら階段を登る、そこらへんに落ちてたり倒れてるものに気をつけながら。
「ハァハァ…」
どこかから聞こえた私以外の苦しそうな息、そこには大きな棚の下敷きになってる女性がいた。なーちゃんと同じ綺麗な茶髪だ。幸いここにはまだ火が少ない、まだ間に合うだろう…私は棚に手を置き頑張って持ち上げる、ダメだ、ほんの少し持ち上がったかもわからないくらいの重さ。このままじゃ…
「…逃げて!私は助からな…」
「なーちゃんのお母さん、私が棚を持ち上げたらすぐに動けますか?」
「何を…?」
彼女は杖を構えた私を見つめる。下半身は棚の下敷きだけど、どうにかして動いてくれれば…
「フロート!」
棚をうまいこと浮かす…やばい、杖から伝わってくるこの負担…重い…
「早く…」
そもそもこの魔法って小さくて軽い物を浮かせる魔法、重いものには適してないようで私はすでに限界だった。足を怪我してるようで這いつくばってでも頑張って私のとこまで来ようと動くなーちゃんママ、もうそろそろ限界…
「もうおろして大丈夫…ありがとう…」
力を抜いた瞬間、棚は大きな音を立てて地面に着地した。
「捕まってください、この場所から早く…」
「危ない!」
フラフラしてる私には上から落ちてくる天井を避ける未来は見えなかった。私は諦めながら天井に手を向けた、
「水やっぱ出ないなぁ、せめて炎を全部消す…いや、炎を吸収して、これに向けて撃てれば希望が見えるんだけど…」
その時ボワボワした炎の揺れる音、ものが燃える音が消えた。その代わりに聞こえたのはものすごい風の音と何か固いものが二つぶつかったような音。
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