第4話 冷やかしなんかじゃないです

「ルカ!頼む、手を貸してくれ!」

必死に走ってきたアロは何らかのかすり傷や火傷のような傷がついてた。

「怪我…」

「そんなことより早く!箒貸せ!飛ばすからしっかり捕まれよ!?」

「あ、え?ちょっとぉ〜!?」

速い!速い!綺麗な景色を見る暇もなく必死にしがみついて、風が目に入らないようにギュッと目を瞑る。その時だった、何かが焦げたような臭い匂いがした。

「何…?」

ゆっくり目を開けるとそこには綺麗だった森に町が真っ赤に染まっていた。

「火…?」

「火事だ、多分タバコの事故だろう。場所が悪くて火が広がる速度が速い、もう何人か犠牲者が出てる。頼む、お前の魔法でどうにかしてくれ!」

「“この水全部まとめて放射したりできたらいいのに…”」

「?」

昼と全く同じことを言っても水が出ることはなかった、どころか声もいつも通りで魔法が使える気配はない。

「ごめん、無理そう。」

「は?そんなのやってみなきゃ…」

「ママー!!」

アロの言葉をよぎったのは小さな子供の叫び声だった。

「降りるぞ!」

少し減速しながらその子の元へ降りる、ピンクのワンピースを着た女の子だ。

「ママー!」

「こら!危ないだろ!」

火の中に飛び込もうとする女の子を周りの大人が必死に止める、状況から察するに女の子の母親が中にいるのだろう。

「ルカ!頼む!試してくれ!」

「水ー!」

やっぱり何も起きない、周りの大人は女の子を止めたり、逃げたりでそれぞれ必死だ。私はひたすら手から水を出そうとし、アロが私を応援する。そのやりとりを見ていた大人が痺れを切らした。

「お嬢ちゃん!こっちは必死なんだ!冷やかしなら帰ってくれ!」

「ママー!」

その時だった、大人の気がこっちに変わった隙に女の子が火の海となってる縦長のアパートらしき建物に入ってた。

「おい!」

「冷やかしなんかじゃないです。」

私は静かにそう呟いて建物へ入って行った。

「ルカ!?」

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