第2話 Pursuers

経済、魔法、医学、勉学、あらゆるものによって優れている世界一の王国、ソルティーヌ王国。そんな国の城から数マイル、城を囲う大自然の中で3人は世界地図を床に広げていた。子供一人分くらいの大きな地図だ。

「何するんだ?」

「私が倒れていたのは代々ここら辺、今いる場所はここであってる?」

指を指すと兄の方が頷いた、私に赤と青のペンを差し出してくる。

「使っていいよ、このペンなら消せる。」

世界地図はなんらかのファイルのようなものに入ってるようで簡単に消せるようだ、私はペンを受け取り遠慮なく書き始める。

「ありがとう。」

赤いペンで今いる場所、私が倒れていた場所に星のマークをつける。

「水の流れとかから私はここら辺から来てると考えるのが妥当だから、ここら辺にある国はバシージョ王国かヘルシア合衆国。もっと奥に行くとホーニア合衆国、ラントニア共和国。それ以上奥行ってもいいけど、流石に私の息が持つとは思えないし...」

「つまりルカは自分がここら辺から来たと思うのか?」

「うん、多分だけど私妹がいるの。その子を探したい。」

「そうか…だがどうやってこの国を出るんだ?」

「えっ?普通に…」

意味わからない質問をされ疑問に思ってるとずっと黙ってたアロが口を開いた。

「この国は昔ある連続殺人事件が起きてから出入りの警備が厳重なんだ、お前住民票とか持ってないだろ?どうやって出る気なんだ?なんかの役職につければいいが…」

「じゃあおすすめの役職ある?」

すると少し悩んだ様子をしたあと、二人が声を揃えて呟いた。

「「パースアーとか?Pursuer。」

「その役職って確か魔法使いがモンスターを追い求めるっていう架空の役職だったよね?」

「はぁ?架空じゃねぇよ、」

「架空じゃないし正確にはモンスター以外にも追い求めて研究して…時には依頼をこなしたり、まぁギルド的な感じだね。」

え?どうゆうこと?魔法使いって本当に存在するの?本での架空の話じゃ…

「ルカ、君の固有魔法って何?」

「固有魔法が架空のものじゃないと今日初めて知りました!」

なんなの?魔法って実在するの?本だけの話じゃ…その時私はそうゆう本を記憶喪失の前に読んでたということをやっと理解した、思い出そうとしても出てこないけどこうやってちょっとずつ…記憶が戻ればいいけど。

「そうか、魔法が使えるようになるのは大抵3から8歳の間だから…」

「もしも8歳になっても使えなかったら魔法不全者とされる、そしたらパースアーになるのは無理だな。それどころかこの国を出れる役職に就けるかどうか…けど魔法が使えれば何歳からでもなれるよな。もちろん依頼とかに年齢制限があったり、危ないのはダメだったりするけど。確か来月パースアーの試験があるはずだからそれまでに魔法が使えるようになれば…」

なるほど、そういえばこの二人は…

「二人は魔法が使えるの?」

「嗚呼、俺は火の魔法。火を自由に操れる。」

彼の手のひらの上からッボっと音を出して火が出てきた。いいなぁ、あったかそう。

「僕も火の魔法だけど治癒魔法に特化してる、攻撃魔法が苦手でね…」

「じゃあさ、魔法教えてよ。」

「え?」

こうして私は魔法の練習を始めることになった。


私とアロは魔法練習のためにあの砂浜に来ていた。

「…から…魔力を…して…することで…」

あの雲美味しそうだな…

「とりあえず基礎からやるぞ、ほら箒。最初は危ないから俺も一緒に乗る。」

「よろしく、アロ…君?」

「呼び捨てでいい、早く後ろ乗れ。」

箒を跨ぐと手のやり場に困る、アロをつかんだら怒るかな?

「手はここ、」

そう言いながら私の手を取って箒の前の方を掴ませる、私って案外腕短いのか…?ギリギリ届くからいいけど。

「そしたら飛べって言うだけで飛べる。早速試すからしっかり掴まっとけよ。」

「うん。」

「飛べ」

その声はいつもと同じ声なのになんだか違う音に聞こえた、さっき魔力がどうのこうのつってたな…魔力がこもった声は音が変わるのか?て言うか、

「高い…」

「は?怖えの?」

少し馬鹿にするように言われムッとする。

「怖いて言うか不安。」

「何が違うんだ?」

「別にこの高さから落ちても木をクッションにできるし怖くわない、ただ君を信用してないから不安なだけ。て言うかどこ向かってるの?」

「城下町の方、少し町を歩こうと思って。ついでにその服でかいだろ、新しいの買おうぜ。」

私が今着てるのはお兄さんのT-シャチと短パン、確かに少しブカブカだし短パンを紐で縛ってなきゃいけないくらいだからな…

「あー、そうだね…!」

急に強い風が吹いて咄嗟に目を瞑る、その瞬間に急な浮遊感を感じた。目を開けると私は落ちていて上には鷹のような大きな鳥が戦っていた、喧嘩でもしてるのかな?アロも箒を私の近くにいないのは逃げたのだろうか?それとも…だから不安だったんだよな〜。私は体を回転させ頭から落ちていた状況を足から落ちるようにしたら近くの木から垂れてる蔓を掴んで最悪の事態を避ける。蔓から手をはなしてうまいこと着地したら髪の毛などに着いた葉っぱを取る、少しかすり傷とかができたけどまぁいいか。うーん、どうしようこっからツリーハウス帰るまでかなりの距離あるからな〜。そんなことを考えてるとガヤガヤとした音が聞こえたので、音の方向に行くとそこには町があった。

「賑やかだな…」

「お嬢ちゃん、そこで何してんの?俺たちと遊ばない?」

話しかけてきたのは明らか不審者の見た目をした銀髪グラサンマスク3人組だった。

「私行くとこがあるので…」

後ろを向いて森に戻ろうとしたがそれは叶わなかった。

「水の玉!」

「!」

飛んできたのは名前の通りの水の玉、避けると後ろにあった木に当たり倒れた。嗚呼、これ当たっちゃいけないやつだ。

「ねぇいいじゃんか!メニー水の玉!」

ネーミングセンス悪…じゃなくてこの量は避けきれない。

「この水全部まとめて放射したりできたらいいのに…」

あれなんか声が…

「あれ?水どこに行った?」

私を襲おうとしていた水の玉が消えた、どうゆうことだ?

「ファイアーボール!」

上から小さな火の玉が不審者3人めがけて降ってきた、この魔法って確か…

「ルカ、ごめん。怪我はねぇか?」

「大丈夫、ありがとう。」

「今日はもう戻ろう、にいちゃんも心配してる。」

「うん、今度は落とさないでくれると嬉しいな。」

「ごめんって…」

そう言ってまた箒に乗って家に帰る、ドアの前でオロオロしてるお兄さん…てか、

「ルカ!心配し…」

「名前何?」

「えっ?」

「まだ名乗ってもらってない。」

アロはにいちゃんって呼ぶからわかんないんだよ…納得したのか手をポンっと叩いて私に言った。

「僕はロア、それよりも傷治すから動かないで。」

そう言ってあたたかい熱が私を包む、私の腕や足についた傷はみるみる治っていく。

「魔法って杖なくても使えるんだね。」

「ん?固有魔法以外は杖とかなんらかの魔法具がナイト使えないぞ、固有魔法も大型だったりすると魔法具が必要になってくる。」

へー、なんかめんど。

「ルカ、箒のるか?今度は一人で乗ってみろよ。」

箒を手渡され跨いでみる、えっと確か…

「飛べ?」

すると私はふわっと浮く、箒って長く乗ってると股痛くなりそうだな。そんなことを呑気に思ってると普通に落ちた…!

「ルカ!?」

「箒さーん?飛べー?」

あ〜、これダメだ。箒が邪魔で体が回転できず、受け身が取れない。このままだと頭から落ちるな…

「手からなにか放射できればな…」

そしたら体勢も戻せるし地面に叩きつけられることはないだろう。そんなことを呟きながら目を瞑ると少し冷たい風が私のほおにあたった。

「…?」

目を開けると手に水が溜まって放射された、うっ。冷たい…そのおかげで体勢は直せたし、このまま着地…

「…!」

「間に合った…!今のすごいじゃん!」

私をキャッチしたのはロアだった、お姫様抱っこ…久しぶりだ…

「あ、」

久しぶりなんだ、やっぱ思い出せない…

「今のルカの固有魔法じゃない?水の魔法!かっこいいね!」

水の魔法、さっきのグラサン不審者も確か…

「あ、」

"この水全部まとめて放射したりできたらいいのに…"

"手からなにか放射できればな…"

「もしかして…」

「ルカ、今日は家に戻ってご飯にしよう。」

「…うん」

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