015

 色々あったけど、セラフィ姉さんが正式に仲間になった。


「うむむ、何食うとったら、こうなるのじゃ…」

「重い、邪魔なだけ」

「本当に重いです!スイカ並みです!」

「持ち上げないで、でも軽くなった、楽…」


 …姦しいな。


「ま、うちのパーティーも賑やかになったな」

「おう!よかったなアニキ!!」


 剣士、軽戦士、魔術師、神聖魔術師だ。

 オマケで、世界最高峰のドジっ娘もいるが。


「あ、そう言えば義姉さん、何で魔術って言うんだ?」


 これは良いトレーニングになります!!とか言いながら、おっぱいを持ち上げてるマリーは放って置く。


 治癒とか回復と違うの?


「ん、治癒系の最上位、神の領域に触れる、魔術」

「…なんか凄そうだな」

「ん、そうでもある」


 わぁ、自慢げ。

 でも、神の領域って何?何か怖くない??


「身体の設計図、魂にある、魔術を使う時、そこを読み取る。

 そうすれば、欠損も治せる、凄く疲れるけど。

 そして、魂は神の領域、だから『神聖魔術』」

「なるほどな…」

「軽い怪我、治すだけなら、下位魔術でいい」

「普通に『治癒・回復』って呼ばれてる魔術は、その辺か」

「ん、下位は呼び方、地方で時々違う、ちなみに『ソウルアナライズ』は、神聖魔術」


 はー、何となくわかんないけど分かった。


「理解ってない顔、後で勉強」

「う、分かったよ…」

「ウィン君、出来なかったら、私の尻を叩く」

「普通、逆じゃないかな」


 もう尻は叩かないぞ。




 ◇◆◇




「ん、これで殴る」

「でっか!!ふっと!!」


 何あのゴツい鉄のメイス??

 あんなの入らないって!!

 おっと、いれる必要は無いんだった、うっかり。


 しかし、でかいメイスだな。

 セラフィ義姉さんは、一応戦闘も出来るらしく、あり得ない太さの鉄塊を振り回す。


「ふん、ふーん」


 やる気の感じられない、掛け声!!

 当たれば確実に死ぬ勢いの、鉄塊!!

 ぶるんぶるん!!おっぱいがゆれる!!!


 なるほど、メイスを避けてもあの巨乳が襲ってくる(物理的に)。

 二段構えの攻撃か。


「…。」

「やめて、そのジト目はやめて」


 ゾクゾクしちゃう。


 まあ、ふざけるのはこの辺にして。


「義姉さん、試しに何か殴ってみて?」

「わかった、ふーんっ」


 その辺に生えてる木でも殴るかと思ったら、思いっ切りデカい岩に行ったぞこの女!!

 ああ!いわがこなごなにくだけた!!

 今まで聞いたことないような、ボガァ!!って感じの破砕音がしたんだが…。


 森に居た鳥たちが一斉に飛び去って、獣たちが驚いて逃げだした、おい依頼どうすんだお前。


「わー!砂埃が目に入ったのじゃー!!」

「耳の良い雷牙が目を回してます!」

「ん、任せて『ミドルヒール』」


 おお、あれが神聖魔術か。


「おおう、痛えまだ耳がキンキン…しねぇな?」

「ん、治した」


 治すの早いな、さすがBランク冒険者。

 まあ、マッチポンプなんだが。


「あ!岩の破片に当たったエメラルドバードが落ちてきました!」

「ほぉ、早速仕事したのじゃ…?」


 …依頼のやつじゃん、さすがBランク。

 つか危ないな…誰も居ないのは確認してたけど。


「回復掛けながら殴ると、全力より上のパワー出る」

「…お主、身体のりみったーリミッターを外して殴っておるな?」


 …おかしい、俺は後衛を募集したのに、バーサーカーが来てしまった。


「お主もよく魔物を殴りに行くではないか」

「…そういやそうだった」


 でも、殴りたいんだよ。


「前衛四人も良いですね!」

「いや、やらないぞ?セラ義姉さんも後ろに引っ込んでね?」


 回復お願いします、ホント。



 ◇◆◇



「あっちに『グレイバイソン』だぜ!」

「あれは美味しいお肉ですよ!」

「よし!『鎌鼬』!!」

「がんばれー、がんばれー」

「ふれー!ふれー!なのじゃ!!」


 三カ月位経ったかな?

 俺達のパーティーも、安定してきた。

 ランクも、そろそろCランクになる。

 今回は、筆記を先に終わらせたから、後は実技だけだ。

『野外危険活動 甲種』は難関だったよ…。


「ん、雷牙ちゃん回復する」

「ああ、でも大したキズじゃないぜ?」

「駄目、猫ちゃん大人しくする」

「お、おう、分かったぜ…」


 義姉さんは、たまに雷牙を猫呼びしてる…。

 まあ、雷牙は怒らないし、逆らわないんだが。


 バイソンの中から魔石をグジュグジュ取り出しながら、義姉さんたちを見る。

 ぼわっとした光を当てながら、治療するセラフィ姉さんは凄く綺麗だな、喋らなきゃ美人だし。

 白に近いプラチナブロンドの髪を揺らしながら、毒だろうが何だろうが大体回復させる。

 飛び道具を防ぐ『結界』も張れる、頼もしい。


「ん、昇級、受ける?」


 義姉さん、雷牙の顎の下を、執拗に撫でてるのは何?

 ゴロゴロ言ってんだけど、ウケる。


「そろそろ頃合いですね!」

「ん、でも、Cランクの実地試験は、対人」

「ん、模擬戦でも有るのかな?」


いっけね、『ん』が移った。


「違う、賊の討伐、人相手」


 あ、そういう奴か…。


「しかしじゃ、それ程都合良く盗賊がいるかの?」

「いなければ、護衛依頼、そっちは難しい」


 護衛依頼でもいいけど、難度が上がると。


「大丈夫、悪い奴は、何処でも湧く…ふふっ」

「あ、はい」


 本職の顔が出て来てるぞ、義姉さん。




 ◇◆◇




 ギルドの会議室見たいな場所に、Cランクの昇格を控えた、九人程の冒険者が集められていた。


「つー訳で、お前らのCランク昇格試験は、野盗の討伐だ、オレら『銀閃の槍』が見る」


 ケントさんが試験官か。

 しかし、本当に対人戦闘になるのか。

 遂に、って感じだな。


「今回は複数のパーティーでの任務だ、知らねえお友達も居るが、集合時間に遅れんなよ、明日の朝イチ出発だ」


 急だな、まあ仕方ないか。


 とか考えてたら、赤褐色で角の生えた…鬼人族だな、そいつがイライラした様子で前に出てきた。


「オイ!明日だなんて聞いてねえ!!」

「今言っただろう?それに今日から一週間は空けておけっつたろが」

「それにしたって急すぎんだろうが!!あぁ!?」


 ガラ悪っ。

 まあ気持ちは分かるよ、でも馬鹿だなこいつ。


 もう、試験は始まってるのに。


「ガラッド、納得いかねぇなら、試験なんざ受けなくていいんだぜ?」

「んなこと言ってねぇだろうが!!」


 いや、これから犯罪者集団にカチコミしに行くっていうのに、のんびり準備とかしてられないだろ。

 だって、この街にも連絡員くらい居るだろ、バレたらどうするんだ。

 急な任務への、対応力も見られてるんだよ、大体一週間空けろって言われたら、野営くらい想定するだろうが。


 さて、うちのメンバーは、勿論全員分かってる。

 鬼人族の所は男三人か、騒いでるアイツがリーダーなんだろう、残り二人も便乗して騒いでるし。

 残り三人は逆に女性だけだな、真ん中のサイドテールがイライラしてる、こっちは主旨を理解してそう。


「話を進めるぞ、今回は此処の九人に加えて、Bランク『銀閃』から三人、Cランクが十人、衛兵隊から十五人以上の、総勢四十人程度で討伐隊を結成する」


 …ん、多くね?

 いやいや、それちょっとした野盗の討伐じゃないだろ?!


 お、三人娘のリーダーの、サイドテールも前に出てきた。


「ちょっと!?その人数はどういうことなのよ!?」

「リリファも落ち着け。

 先に言っちまうが、今回は推定二十人規模のを殲滅する」


 …いきなり大仕事だな!?

 つか、盗賊結構居るな!!


「え、今この辺そんなに治安悪いの?」

「…王国がキナ臭え上に、各地で魔物の動きが活発なんだ、流れ者が集まっちまった」


 王国か、あの国は何かやりそうだしな。

 魔物の方は何なんだろう、そろそろ本当に、魔王とか出るの?

 

「街道から逸れた場所にある、廃村を根城にしているのは、既に掴んだ。

 ここから二日掛けて移動して、様子見ながら奇襲って手筈だ」

「だったら余計早めに言えや!準備出来ねぇだろ!!」


 …こいつ馬鹿だなぁ。


「あぁ?!誰が馬鹿だ!!」

「なっ!心を読まれた…だと?!」


 まさか、鬼人にはそんな特殊能力が有るのか?!


「坊ちゃま、思いっきり声に出てましたよ!」

「なぁんだ、ビックリした」

「もう、坊ちゃまったらうふふ」

「あはははマリーめ」

「てめぇら、イチャついてんじゃねぇぞ?!」


 悪かったって、えっと…名前何だったっけ?


「ごめんごめん、カラット?」

「ガラッドだ!人の名前を、唐揚げみてぇな言い方しやがって!!」


 美味いこと言うな、唐揚げだけに、ははは。


「ちょっと男ども!静かにしなさいよ!!」

「うるせぇな、女は出しゃばるな!!」

「はあ?女だから何だって言うのかしら!!」


 あーあー、何か飛び火しちゃったな。

 あれ、俺のせい?


「大体、アンタ達のパーティー以外は、依頼の意図を全員分かってんのよ!」

「な、なんだと?!」

「緊急依頼、集団行動、対人戦、野営を含む野外活動、全部Cランクに必要じゃないの!」

「な?!だ、だからって一日じゃ食料の準備だってキツイだろ!」

「それを普段から用意するのがCランクなの!甘えてんじゃないわよ!!」

「…ちっ、だからって試験でやるかよ」


 うーん、甘いなぁ。

 言ってあげた方良いかも知れない。


「いやな、言っちゃ悪いけど、一週間予定空けろって言われたら、何かあるって考えないか?」

「そ、そんなの分かるかよ…」

「ついでに、盗賊団の仲間とか街に潜伏してたら、ゆっくり準備してたら襲撃バレるぞ」

「ほら、アンタ以外は解ってるじゃないの」

「…ちっ、うるせぇな分かったっつーの」


 渋々だが、理解したみたいだな、良かった。

 この唐揚げ鬼は減点だろうけど、残念。


 まあ冒険者だからな、こういう血気盛んな奴もいる、うん。


「言っとくけど、そこの銀髪のアンタも信用してないから、アタシらの足を引っ張らないでよね」

「あっハイ」


 なんだこのサイドテール女こわっ。

 ガン付けてくるし。


「ガキども交流は終わったか?

 じゃあ、明日ギルドに集合だ。

 受験パーティーは『実家を追い出されたけどメイドさんと一緒に成り上がる』、『物理を極めれば殴れば魔術とかいらなくないか?』、『虐げられた次女は超絶魔法でざまぁする』の3パーティーだな」

「ヤメロォォォォ!!」

「イヤァァァァァ!!」

「ウグォォォォォ!!」


 読み上げんな!恥ずかしい!!


「クソが、絶対Bランクに上がって『鬼哭』に変えてやる!」

「ホント嫌なのよね、このパーティー名…」

「みんな、考えることは同じだなぁ」


 ちょっと親近感湧いたな。

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