011


 魔術ギルドってのが有る。

 名前そのまま、魔術師が集まって色々やってるギルドだ。

 世界中に根を張る、デカい組織らしい。


 活動内容は良く知らん…ある程度実力が無いと、入れないから。


 その中に『根源魔導士オリジン』と呼ばれる、現在世界に七人しか存在しない、超越者が存在してる。


 その一人が、根源魔導士オリジン第三席。

 時の支配者『月時計の魔女』、逢魔 輝夜オウマ カグヤ


「――と言う訳じゃ、分かったかの?」

「へー、すげー」

「反応薄いのぅ?!」


 いや、魔術界隈の著名人とか、よく知らないし。


 とにかく、有名人だってのは分かったけど。


「まあ、出会った時から、只者じゃないオーラは出てたな」

「そうじゃろ?そうじゃろ?えへへへ!」


 笑い方が可愛いな。


「で、さっきのキラキラしたのは何だったの?」

「あれはな、『十六夜』と言う魔術で、簡単に言えば時間の流れをを遅くしたのじゃ」

「とんでもない事しやがったな」


 時間を操るって、ヤバすぎない?

 そういえば、俺は遅くならなかったけど?


「師弟契約しとるじゃろ、アレでお主の居場所とか、色々判るからの」

「ああ、なるほど」


 だから、俺が此処に居るって判ったのか。


「他人事みたいにしておるが、お主も『十六夜』を覚えるんじゃぞ?」

「え、え??」


 聞いてないよ?


「弟子だからの」

「弟子だからか」


 じゃあ、仕方無いか…。

 俺もしかして、とんでもない魔術師の弟子になってた??


 …後で考えるか、難しすぎる。


 とにかく、先ずは目の前の問題だ。


「で、あいつらどうするの?」

「捨て置けばよい、丸一日は痺れて動けんからの」


 メリンダは、師匠が改めて、麻痺の魔術で無力化した。

 今は、扉の前の廊下に転がしてある。

 そういや、ここの見張り何処行ったんだ?師匠がやっつけた?

 と言うか、屋敷全体こんな感じで、あちこちに人が倒れてるらしい。

 まあいいや、どっかに転がってるだろ。


 これ、どう収拾つけるつもりだろうな…まあ助かったけど。

 もう少し遅ければ、俺の尻は『ユニコーンクラッシュ!』されてたかもしれない。

 輝夜師匠には、感謝しても仕切れないな。


「しかし、お主まだ動けんのかえ?」

「それは、見ての通りで…」


 媚薬が抜けないんだよ。 

 下半身がイライラしやがる。


 しかも、眼の前には美少女、黒髪さらっさら、脚きれい。

 それが、媚薬効果で割増で可愛い、やばい。

 めっちゃテントが立ってる、静まって、頼む。

 いつ決壊してもおかしく無いし、そんな事になれば社会的に死ぬ、お婿にいけない。


 あ、そうだ。


「なあ師匠、これ魔術で解毒とか出来ない?」

「そんな事に魔術を使うでない、ほっとけば抜けるわ」


 いや、違うのがヌケそうなんですが。


「はぁはぁ…熱い…」

「むー、困ったのじゃ…」


 一番困ってるのは俺だけどな。

 着替えがないから、未だに変態ファッションだし。

 心なしか、カグヤさんもチラチラ見ていらっしゃるし。

 快感と羞恥心で、わけわからなくなってる…。


「なあ弟子よ」

「なんだよ師匠」

「いっその事、出しちゃえば楽になるのではなかろうか?」

「なるほどー!とでも言うと思ったか!?バーカ!!ばーーーか!!!」


 出来るか!アホ!!なんでお前はそうなの?!?!

 たまに碌なこと言わねーな!こいつ!!


「じゃがのー、 裸で前掛け膨らませとるし、その格好で、今更恥ずかしい事も無いと思わん?」

「最後の一線ってのが有るんだよ」


 やめろ、近寄るな。

 あー女子の良い香りするし、前屈みだと胸がチラチラ見えたりするんだよ。


「…なんで離れるの?もしや、妾の事…嫌いなの?」

「ち、ちがう!違うから今はちょっと…」

「え…あ!!そ、そろそろ…至りそうなの?」


 はい!至りそうです!


「よしわかった!妾に任せるのじゃ!

 こう見えて、お主よりずっと歳上じゃからな!

 ま、まあ…経験は無いが…な、なんとかなるじゃろ?!」

「おい、まて、やめろ、なにをする」


 余計な事すんな。


「大丈夫!アカシアの塔にある禁書庫で予習済みじゃから!!」


 禁書庫に、えっちな本を置くな!!


「あー!ダメダメ今は!マジで駄目です!!」

「えー!見たいのじゃ見たいのじゃ!!」


 なんでアンタは!好奇心優先で!後先考えずに行動しようとするんだよ!

 お前な学園の時もそうだったろ!!


 あっ。


 駄目。


「ほわあぁ、こ、これこんなになっちゃうの?!…え?!」

「お?!あ?!あああ!!あああああ!!」

「きゃぁぁぁぁ!!ふぁぁぁぁ!!!」

「あっ?え?あっ?あっ!あぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁ!!きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ああ?!あああああ?!?!

 ああああああ!!ああああああっ!!!



 ◇◆◇




 色々と事情があり、俺は今カーテンを巻き付けて服代わりにしてる。

 前掛けは、汚れてしまったからな。


「よし、媚薬の効果は切れたな」

「そ、そうか…良かったのう」


 不幸な事故は、あった。

 だが、今の俺は明鏡止水。

 まさに、賢者と言っても過言では無いだろう。


「輝夜、師匠…」

「言うな、弟子よ…何も無かった。

 何も、無かったのじゃ」


 無かった事にする気か。

 しょうがないな、ハハハ。


「はー、すごかった…」


 反芻してんじゃねえそ、おい、手の匂いを嗅ぐな。


 次からは、後のことを考えて行動してほしい。

 好奇心のままに動くな、マジで。


「…そろそろ夜が明ける頃じゃな、帰るとしようか」

「うん…いや待って?!」

「なんじゃ、煩いのう」


 やばい!ミカちゃん君の事忘れてた!

 あいつも助けてやらないと!


「師匠!ここにもう一人捕まってる奴がいるんだ!!助けてやらないと!」

「…何言うとるのじゃ?」


 ああもう!説明する時間も惜しいのに!

 とにかく、ミカの事を簡単に説明する。


「ん…、お主の話は分かったが、そんな者はおらんぞ?」

「…え?そんなハズは――」

「この屋敷程度ならば、妾の感知魔術から逃れることは出来ん。

 全員無力化したが、お主の言う男子おのこも、ドルバッグとか言う爺も、居らなんだ」

「そ、そんな…?」


 まさか、別の場所に?

 いや、ミカの性格だと、上手いこと逃げたのかもしれないが。


 その後、屋敷中を見て回ったが、二人は何処にもいなかった。


 ドルバッグのプレイルーム、らしき部屋は見つけた。

 デカいベッドと、拷問器具が並んだ…最悪な趣味の部屋だ。


 ただ、新しい血痕などは無い。

 やっぱり、逃げたのか…?


「此処に居ない事は確かじゃな」


 …考えても仕方ない、か。


「…帰るかぁ」

「うむ、お主を心配しておる者も、居るじゃろうしの」


 そうだな、マリーと雷牙も心配してるだろうし。

 しかし、この格好で外歩くのか…。

 俺の服、見つからなかったし。


「あの師匠、何処かで適当に服を着替え――」


 その時だった。


 地面が揺れる程の、破壊音が響いた?!


「な、何だ?!」

「外じゃ!門の辺りに来ておる!」


 門?!今のは門をぶっ壊した音?!


「む、何人か手練れの気配がするの…」


 魔力を探ったのかな、そんな事も分かるのか。

 まあ、師匠だし。


『――坊ちゃまー!!!何処ですかー!!!』

『――アニキー!!居んのかよー!!』


 あー、はいはい。


「輝夜師匠、あれ俺の仲間だ」

「おお、そうじゃったか」


 マリーと雷牙だ…よく此処が分かったな。

 あ、ケントさんの声も聞こえる。


「うむ、早く顔を見せてやると良い」

「…いや、すっげー速さで近づいてない?!」


 これ、ここで待ってた方がいいな?


「この辺りから坊ちゃまの気配が…!何ですかこの豚は邪魔です!!」

「…今ふっとんだの、メリンダ女史だよな?」

「なんでこいつらぶっ倒れてんだ?アニキがやったのか?」


 あ、きたきたー。

 おーい、ここだよー。


「あっ!坊ちゃま!!」

「マリー…?!」


 何であのメイド、壁を走ってるのかな。

 ああ、通路に人が転がってるから、邪魔だったのか…。

 それどうやってるのか、後で教えて?


 マリーは俺の前まで来ると、両手の剣を捨てて、俺に抱きついてきた。

 久しぶりの、マリーの香りがする。


「ごめんなさい!!坊ちゃま!!うあああ!!」

「大丈夫だ、探しに来てくれてありがとう」


 だから、泣くなよ。


「アニキぃ、無事か!?」

「おう、ギリギリ無事だ!」


 色んな意味でな!


「あ、マリーちょっと良いか?」

「…グスン、何でしょう?」


 いや、このシリアスな空気で言っていいか分からないけどな。

 まあ、現実問題、困ってるので。


「いやぁ…何か、着る物持ってない?」


 下が寒い。

 せめて、パンツ履きたい。




 ◇◆◇




 マリーから着替えを受け取り、ようやく下半身のスースー感がなくなった、良かった。


 この服、マリーがスカートの中から出してた気がするんだが…こいつ、俺の着替えをスカート内に常備してるのかな?下着込みで?


「…うふふ、貴女が

「…ほほう、お主が


 …何で、マリーとカグヤ師匠は、笑顔で睨み合ってるのか。


「師匠さん、ちょっと向こうでしませんか?」

「奇遇じゃなメイド、妾もしたいと思うておった」


 え、なにあの空気。

 絶対に話し合いする雰囲気と違くない?


 あ、行っちゃった…ま、いいか。

 それより、聞きたいことがあるし。


「それで、ケントさん、どういった経緯で、ここまで来たんですか?」


 マリーと師匠はどっか行っちゃったし、雷牙は衛兵さん手伝って倒れてた連中を縛ってるから、ケントさんに聞くしかない。


「ああ、簡単に説明するとだ。

 ウィンが拐われてキレたメイドが、この街のラーストン商会事務所にカチコミして、お前の居場所を聞き出して此処に来た」


 うーん、腕力で解決したか。


「それって、衛士沙汰とか面倒な事になってません?」

「大丈夫だ、元々ガサ入れするのを一日早めた」


 それ、現場は良いけど責任者が困るヤツじゃない?


「あれだ、衛士隊からガサ入れの予定が漏れててな。

 危うく証拠を消される所だったから丁度良かったって、あいつら喜んでやがったぜ。

 不正の証拠がわんさか、オマケに地下室からは違法奴隷まで出て来やがった」


 あら、それは言い逃れ出来ないな。


「なあウィン、ここに会頭のドルバッグが居るはずなんだか、お前知らねえか?」

「いや、それが美少年と一緒に何処かに消えちゃって…」


 ミカ君、何処行ったんだろ。



 ◇◆◇




「話し合いは終わりました」

「うむ、平和的に解決したのじゃ」


 …何を話してたのかな?何か怖い。


「兎も角じゃ、細かい事は休んでからで良かろう」

「あ、日が昇ってきましたね!」


 うん、窓から朝焼けが見えるな。

 はあ…とんでもない一日だった…。


 衛兵さんたちも、事情は後日聞かせてもらうから、帰って良いと言ってくれた、助かる。


「弟子よ、妾は宿を取っておらんから、今日はお主の部屋に同室する」

「すいませーん!坊ちゃまはマリーがお世話してるので他の部屋に泊まってくださーい!」

「…なあアニキ、この黒い女ぁ何だ…オレの本能がやべぇ奴だって言ってんだけど」

「よし、お前ら一回静かにしような?」


 疲れてるんだよ、早く寝かせろ。



 ◇◆◇



「ふぁぁ…今何時だ?」


 あれから、飯食って身体拭いたら速攻寝落ちした。

 いつ寝たか、よく覚えてない。


「坊ちゃま、おはようございます」

「おはようマリー」


 多分昼かな、そこそこ眠れたな。


「で、何故俺はマリーの抱き枕にされてるんだ?」

「え、メイドが主人を抱き枕にするのは、常識ですよ?」


 そっかぁ、知らなかった。

 世界は広いなぁ…。


「そんな訳無いだろ」

「今日はそういう日なんです」


 そんな記念日、あったかな?


「…なんで下着しか付けてないんだよ」

「こうすると、体温を感じやすいんです」


 それはそうなんだが、起き抜けはな?ほら、男子は色々…もういいや、勃っちゃってるから!!


「知ってますよ、当たってますもん」

「じゃあ、離れて?な?」

「イヤです」


 珍しくマリーが我儘だ。

 …いや、我儘なのはたまにあるか?


「ほら、もう起きないと」

「いやっ」


 あー、これは…なるほど。


 我儘マリーわがまマリーだな、懐かしい。


「勝手に、いなくならないでっ」


 そうそう、子供の頃に夜中トイレ行った後、庭で鳴いてる虫を探すのに夢中で、部屋に戻らなかった事があった。

 あの時もマリーが探しに来て、部屋に連れ戻された後に、こんな感じだったな。


「分かったよ、ごめんな」

「あやまらないで、約束して」

「…約束する、絶対にマリーの前から、居なくなったりしない」

「…ゆるす、ん」


 キスされた。

 ???????


「え?あれ??んんん????」

「坊ちゃま、温かいミルクを持ってきますね!」

「え、ああ、おう、よろしく」


 あれ、今キスされたよな?

 ん、気の所為かな??

 んーーーーーーー???





 ◇◆◇




 マリーは、さっきの事に全く触れない。

 あまりに平常運転で、俺から聞き難い。


 …よし、受け身で対応しよう。

 マリーが何考えてるかなんて、分からんし。


「はい!温かいミルクですよ!」

「おおおう!?あ、ありがとうな!!」


 おっと、意識するな。

 平常心、平常心


 とか思ってたら、ガチャっとドアが開いた。


「起きたか弟子よ!目覚めに濃くて苦ーい、ぶらっくこーひーをもって来たのじゃ!

 おっとと?!あわわ!!」


 …このポンコツ師匠は。

 何故、入り口の僅かな出っ張りで転ぶのか。


「ああ!床がこーひーまみれになってしまったのじゃー!」


 まあ、こうやって捲れたスカートにも気づかず、パンツ見せてくれるから良いんだが。

 白か、助かる。


「はぁー、坊ちゃまは子供舌なので、苦いのはダメなんですよ?」


 やめろ、子供舌とか言うな、敏感なだけだ。


「ふえぇっ、拭くの手伝ってくれて有り難うなのじゃ…」

「ふふ、良いんですよカグヤさん」


 うんうん、何だかんだ仲良くやってるかな?

 ちょっと不安だったが、良かった。


「…ですから、分かってますね?」

「…分かっておるのじゃ、マリーよ」


 …何かコソコソ話してるな、本当に仲良くなったのかな?


 まあいいか。

 俺は、四つん這いで床を雑巾がけする、パンツ丸出しのカグヤ師匠を観察するので忙しいから。

 あのマント着てれば見られなかったのにな、もしかしてあのマント、パンチラ防止用かな?


「ふー、甘い」

「お疲れでしたので、砂糖多めにしました!」

「ありがとう、丁度いいよ」


 本当、気が利くなあマリーは。





 ◇◆◇




 お昼に鶏肉のシチューを食べ終えて、宿でまったりしてた時の事。

 顔を真っ青にした、ケントさんが来た。


「…お前ら、ちょっと来てくれねぇか?」

「…何か有りましたか?」

「なんじゃ、荒事か?」

「いや、ドルバッグの野郎が見つかった…」


 あの、行方が分からなかった爺さんか。


「見つかったのは今朝だったらしいが、がドルバッグだと確認するのに、手間どってな…」

「…ケントさん、どういう事です?」

「言葉で説明出来ねぇ…見た方が早い。

 取り敢えず、中央広場まで来てくれ」


 …なんだ?

 ケントさん程のベテランが、ここまで狼狽する事が起きたのか?


 何があったんだ…。



 ◇◆◇




「…これ、何だ?」

「…ダイヤモンド、に見えますね」


 うん、宝石の像だ。

 キラキラして、綺麗だな。


「なんと悪趣味な…」


 そうなんだよな、ちょっと造形が悪い。


「そんで、で間違いないか?」

「…だと、思いますよ」


 自信ないけどね、キラッキラだし。


「アニキ、こいつに刺さってる剣も、ダイヤか?」

「そうだな、多分…」


 うん、背中から何本も剣が生えた、爺さんの像だ。

 それが、全部ダイヤモンドで出来てる。


「誰かが彫ったわけじゃ、無いよなぁ…」


 恐怖と苦痛に歪んだ顔って感じだ。

 リアルすぎる、怖い。


「魔力を感じるからの、間違いなく魔術師の仕業よ」

「つまり、魔術でダイヤにされたって事か」

「…しかし、これ程の技量…何者の仕業じゃ?最低でも『上級魔導師ハイ・ウィザード』じゃろうな…」


 魔術って、本当に何でも出来るんだな。


「その上、此奴は絶命しておらん」

「…おいおい嬢ちゃん、これで生きてるってのかよ」

「嬢ちゃんでは無いわ、たわけ」

「お、おう悪い」


 凄いな、生きてんのか。


「なぁ輝夜、魔術を解除すれば生き返るのか?」

「無理じゃ、これはの代物じゃ」


 それじゃ、何でこんな回りくどい方法で…。


「石化魔術の亜種…じゃが、言うほど簡単ではないな、見事な物じゃて」


 カグヤ師匠が、他人の魔術を褒めるのは珍しいな。

 それ程の魔術師って事か。


「生きておるから、貫かれた痛みも感じ続けておる筈じゃ」

「…それ、ずっと拷問されてるみたいな感じなんじゃ」

「うむ、そして…この様な事を仕出かすのは、あの闇ギルドしか居るまい」


 闇ギルドか、盗賊とか暗殺者とかがいる、犯罪者組織な。


「ちっ、報復ギルド『浄罪パーガトリー』の仕事かよ」

「間違いないじゃろ、あやつらはやらぬ。

 死んで逃げる事を許さず、生かして罰を与え続け、煉獄で贖罪させるが目的じゃからの。

 この派手で吐き気を催す所業は、幹部の仕事じゃろうな」

「このジジイ、よっぽど恨まれてやがったか…」


 おお、師匠とケントさんが、何か格好良い会話してる。

 うらやましい…。


「良いなぁ、俺も仕事の出来る冒険者の会話にまざりたい」

「坊ちゃま!次の機会に頑張りましょう!」

「アニキ、今日はまだ尻の穴を見てもらってねぇぜ」

「お主ら自由すぎんかの?」


 話が難しいのが悪い。


「で、この爺さんどうなるの?」

「ダイヤと云うても、壊す方法は有る。

 砕けば此奴も死ぬじゃろ」

「ここに置いてたら、ダイヤ目当てで砕きに来る方が出ますね」


 このまま苦しみ続けるよりは、楽か。


「その方が、此奴にとっては幸福かもしれぬが…トサカ頭よ、この国は死刑は在るのか?」

「…いや、無い。

 死ぬまで働かせる刑罰はあるけどな」

「ふむ、では…こやつはずっと、このままかも知れぬの」

「大きな声じゃ言えねぇが、この国にはな…死刑に出来ねぇ、こういう奴を保管しとく、倉庫があるって話だぜ」


 うわぁ、その倉庫入りたくない。


「オレはこの後も手伝うけど、お前らはもう帰っていいぜ」


 うん、帰ろう。

 話聴いただけで、疲れた…。


「それでは、少し遅くなりましたがお昼ご飯ですね!」

「うむ、おなかすいたのじゃー」

「アニキ、俺の尻の穴はどうだ!」

「んー大丈夫いつも通りだ」


 結局、ミカは逃げたのかな?

 無事でいてほしいな。


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