007

 漢二人、上半身裸になり向かい合う。

 何故脱いだんだろうな、流れかな?

 まあ相手は、毛がふっさふさなので、脱いでる感じせんが。


 あれだな、防具脱いだらますます直立するネコじゃん…。


 だが…鍛えてるな、コイツ。

 冒険者やってるだけある。


「俺はあっちの獣人に賭けるぜ!」

「あの体格差で魔術師だろ?殴り合いで勝てるワケねぇ!」

「いやまて!あの銀髪の小僧、中々鍛えてるぜ!?」

「何だあのデカい傷痕は?ガキのくせに修羅場くぐってやがるのか?!」

「こいつぁやるかもな!オレは銀髪のガキに賭けるぞ!」

「大穴狙いかよ、やめとけやめとけ」


 広い場所がいいから外に出ようと思ったんだが、凄い慣れた感じで酒場のテーブルがどかされて、あっという間にリングが出来上がった。

 イベント扱いだな、流石冒険者。


 あと、人の喧嘩で賭博はじめんな。

 倍率は七対三で俺が不利か、ぐぬぬ。


 それはいいけど、俺らの間に立ってるアンタは何?さっきソコに居たモヒカンさんじゃね?


「ガキども、分かってんだろうが、武器は無しだぜ」


 あ、審判?いや手際良すぎだろ。

 まあいいか、これも冒険者の流儀だ。


「覚悟はいいかチビ!」

「さっさと来い茶トラ!」


 おーおー、グルグル喉鳴らして怒ってやがる。

 まわりも盛り上がってんな、いい気なもんだ。


 ま、俺も最近色々あって、かなりストレス溜まっててな?

 なんでまあ、ちょっと発散させてもらうわ!


「野郎ぶちのめす!!」

「こいやァ!シャァァァ!!」


 なんでそこで猫の威嚇声なんだよ!!



 ◇◆◇



「ははは!デカいから顎が殴りやすいな!さっさと立てよ!!」

「ちっ!たまたまだ!今に見てやがれ!」


 ―――


「オラどうしたチビ!!足にきちまったか!!」

「くっそ!肉球が!!肉球が顎に!!」


 ―――


「坊ちゃま頑張って!勝ったら夕飯が豪華になりますよ!!」

「マリーも賭けてんのかよ?!」


 ―――


「おい…獣人、お前、なかなか…やるな?」

「テメェも、人族のくせに…タフじゃねぇか…」


 ―――


「…あー、オレの、負けだ…強えなアンタ、ハハッ」

「そうかよ…お前も、強かったな、ははは…」

「銀髪だ!勝ったのは僅差で銀髪の小僧だーーー!!」

「チキショウ!今日の酒代が!!」

「やりました!今日はお肉いっぱいですよ!!」



 ◇◆◇




 いやー、思いっきり暴れてスッキリした!

 獣人とケンカしたのは初めてだったが、なんとかなったな?

 でも、やっぱり体格差がきつかった、あと体毛でダメージ減らされる。

 親父に習った体術が役に立ったな。


 しかしまあ、運動した後の肉はうまい!!

 まあ何の肉かは知らないんだけどな!!

 …変なのじゃなきゃいいなぁ。


「美味いけど、この肉ちょっと固いな」

「そうか?オレぁ丁度いいぜ、アニキ!」


 …うん、一緒に居るんだよな、金虎族。

 何か、二足歩行する茶トラに、懐かれてしまった。


 俺が喧嘩に勝ってから、こいつは下っ端ムーブになった、アニキ呼びだし。

 まあいいさ、お互い全力で喧嘩したんだ、もうダチみたいなもんだろ。


 最初の態度は、何か冒険者は舐められたら駄目だと聞いてたかららしい。

 俺もケンカ売ったのはやり過ぎな気がするしな、ちょっとテンション上がりすぎてた。


「マリーは、あまり坊ちゃまに、無茶してほしく無いんですけどね?」

「すまねえ、マリー姐さんオレのせいで」

「いや、雷牙を猫呼ばわりしたのは俺が悪かったし」


 うん、でも二足歩行キャッツなの、どう見ても。

 悪いとは思ってるが、今後も心のなかではネコ扱いだ。


 そうそう、雷牙はマリーを何故か姐さんと呼ぶようになった。

 そりゃもう割とすぐに。


「アニキ、オレの本能がよ、マリーの姐さんに逆らうなって言ってんだ」


 闘う前から、上位者として認めてんのか。


「つか、俺の事は別に呼び捨てでいいんだぜ?」

「いいんだ、オレぁアニキの心意気に惚れたんだからよ!

 人族で魔術師なのに、頭一つデカいオレとヒビらず正面から殴り合うなんてよ、同じ獣人でも中々居ねぇぜ!」


 おいおい、よせやいそんなデカい声で。

 照れるじゃねーかハハハ。


「それによ、アニキは魔術師なのに、最後まで魔術使わなかったじゃねえか」

「あたりまえだ、ありゃケンカだぞ」

「そういう筋通すところだぜ」


 わかってるじゃんか。

 ケンカは拳でやるものだからな。

 うんうん、話が合うな。

 まあネコだが。


「それにしてもアニキ呼びは照れ…ん?そういえば、雷牙って何歳なんだ?」

「十四歳だぜ!」

「一個下かよ!」


 見えねえ、いや獣人の年齢なんて判別出来ないけど。

 声が低いからか、年上だと思い込んでた。

 じゃあ別に、アニキでもおかしくないか。


「オレぁ、故郷から出てきたばっかりだからな!」

「ああ、俺たちと似たようなもんか」


 うん、Fランクだ。

 あ、今日登録したばっかりなんだ、同じだな?


「なあ、アニキ達はパーティー組んでるんだろ?オレも仲間に入れてくれねぇかる」

「ああ、いやまだコンビ?」

「三人なら明日登録しましょうか!」


 ちなみに、パーティーと言っても、お一人様から登録出来る。

 ぼっちパーティーって呼ばれてるんだが、響きが哀しい。

 なので、みんな大体三人位そろったら登録するらしい。


 雷牙をパーティーに入れる…うん、丁度いいんじゃない?

 良い奴っぽいし、ランクも同じだしな。

 これから一緒にやっていくのに、うってつけだ。


「いいぜ、じゃあ明日は三人で、パーティー登録しに行こう!」

「やったぜ!よろしくなアニキ!姐さん!」

「頑張りましょうね!坊ちゃま!雷牙君!」


 いいね!冒険者らしくなってきたな!



 ◇◆◇



 翌日の朝。


「アニキィ!オレの自慢の、尻の穴を見てくれっ!!」

「やめろ」


 ジョギングから戻ったら、茶トラが、尻の穴を見せつけてきた。


 何故コイツは朝っぱらから、俺にケツを向けてくるのか。


「猫系の獣人の一部は、お尻の穴をとても良い物と考えていて、信頼する相手に自慢しにくるそうです!!」


 豆知識助かるわ、マリー。

 あと、猫って言っちゃってるし。


「さあ、アニキ嗅いでくれ!」

「やらんわ、仕舞え」


 お前は文化の違いを学べよ。

 取り敢えず、二足歩行する猫に、尻を向けるのを止めさせる。

 ほら座れ、まず飯だ。


 宿の食堂で、何かの穀物と豆が、どろどろに混ざった奴を食う。

 正直、あんまり上手くないが…消化しやすく栄養満点、朝食に最適ってマリーが言うので。

 たしかに、これから働くのに、重い食い物は運動の妨げになるか。


 獣人は何食うのかな、と思ったが、雷牙も同じの食ってる。

 ちゃんとスプーンで口に運んでる、あの肉球で器用に使うよな、本物の猫よりも人寄りの形した指だけど、掴みにくいだろ。


「アニキはよ、毎朝ああやって走ってんのか?」

「そうだなー、鍛錬は子供の頃からの習慣だ」


 何せ、暇だったから。

 終わったら素振り…をすると木刀が飛んでいってガラスを割るから、筋トレをやってたな。


「生まれてから、半ば幽閉されてたから、鍛える以外の遊びも無かったからなぁ…」

「…アニキも色々と抱えてんだな」


 まあ、たまにコッソリ外出してたけど、マリーと一緒に。

 買い物とかに付き合う形だけどな。


「アニキは魔術師だけどよ、あれだけ動けるんだから剣とかはやらねぇのか?」

「坊ちゃまに刃物を持たせると、どっかに飛んでいっちゃいますから!」

「剣…いや、武器全般の才能ないんだよ」


 短剣も、同じ事になるし。

 多分、他の武器も無理だ。


「あんだけ喧嘩強えのに、なんでだ?」

「知らん、良いんだよ魔術師だし」


 殴り合いは得意なんだよな、何でだろうな。


「まあ前衛と斥候ならオレに任せてくれよな!ガハハ!」


 うん、獣人の耳と鼻には期待してる。

 だから、しっぽを俺の足にビタビタするのを止めろ。


「マリーは遊撃ですね!まかせて下さい!」


 うん、マリーは何でも出来るから。

 剣さばきは流石、親父に教わってただけある。


「じゃ、俺も前に出て殴るか」

「坊ちゃま、駄目ですよ?」

「アニキ、魔術師は後ろに居ろよ」


 やっぱり?まあ仕方ないか…。

 気持ち的には、前に出たいんだがな。

 親父の子なのに、なんで俺には剣の才能が無いのか…。




 ◆◇◆




「ようボウズ!昨日は儲けさせてもらったぜ!」

「こんちわ、モヒカンさん」

「ケントだ、ケント」


 派手な色のモヒカンに、瓶底みたいな丸いゴーグルと肩トゲパット。

 イカれた格好だけど、名前は普通なんだよな、良い人だし。


 このケントさん、昨日審判やってくれた人で、ベテランの冒険者さん。

 なかなか面倒見が良い人らしく、俺達にも気さくに話しかけてくれる。

 見た目に反して、かなり常識人だ。


「ん?メイドの嬢ちゃんに虎のボウズと三人で連れ立って来たって事は、アレか?パーティーでも組むのか?」

「おう!そうだぜ!」

「組むことになりました!」


 まあ、昨日の様子見てれば、そう思うか。

 ん、どうしたんだ…何だかケントさんが、頭のトサカを弄りながら考え込んでる。


「そうか、お前たちも、これから冒険者の試練を受ける事になるんだな」

「…え、何ですかそれ聞いてない」


 何?試験でもあるの?


「まあ、行けば分かるさ。

 そうだな、一つ言えるのは…そう簡単に、パーティーを組めると思うなって事だ」


 …何だよ、思わせぶりだな。

 とか思ってたら、俺達がパーティー申請すると聞いた、周りのベテラン達がざわめき出す。


「おいおい、昨日の奴らか…あいつら大丈夫か?」

「はっ、まあお手並み拝見といこうか」

「ガキども、これから地獄だぜ?」

「まあ、冒険者の洗礼ってヤツだ!」


 …何だなんだ、何が起こるんだ?

 まさか、実力を見るために、パーティー組んで模擬戦とか?


「なあ、マリー何か知ってるか?」

「いえ…存じ上げませんね」

「どうせ分からねぇなら、とりあえず行かねぇか?」


 まあ、そうだな。

 とにかく、受付に並ぶか。


 しばらくソワソワしてると、俺達の順番が来た。


「今日は、パーティーの申請ですね。

 では、こちらに必要事項の記入をお願いします」


 相変わらずの営業スマイルだな、うん。


 事前に俺がリーダーをやる事に決まってたので、一番上に名前を書く。

 次がマリー、サブリーダーだな、まあ三人しかいないけど。

 雷牙は、その手で文字書けるのか?え、肉球に挟んで書いてんの??器用だなー。


「あとは…ああ、パーティー名どうしようか?」

「アニキに任せるぜ!」

「わかりやすく、坊ちゃまの名前を入れて決めましょう」


 うーん、昨日の新人達みたいな、尖り過ぎたネーミングは嫌だな…。

 それでいてシンプルに、か。

 マリーが言うように、確かにリーダーが誰か分かりやすい名前で…。

 うーん…、よし!


「『ウィンドミル』とか、どうだ?」

「良いと思います!かっこいいです!」

「だな!さすがアニキだぜ!」


 うんうん、無難過ぎるかなーと思ったが、好評で良かった。

 いやー、パーティー名が決まると、身が引き締まるなー!

 これから、俺たち『ウィンドミル』の冒険が始まるわけだ!

 やっば、ちょっとワクワクしてきたな!!


「すいませんー!これで登録お願いしまーす!」


 書類を受け取った受付のお姉さんが、テキパキと処理していく。

 うんうん、流れる様な仕事ふり…ん?


 受付嬢さんの手が、突然ビタリと止まった。

 どうしたんだ…何か間違えてたかな?


「あれ、何か問題でもありました…?」

「ええ、実は…」


 え?まさか、今になって王国から指名手配でも掛かったか?

 いや、そこまで深刻な雰囲気でもないけど…。


 そんな事を考えていると、受付嬢さんが、少し申し訳無さそうにこちらを見た。


「申し訳ありませんが、こちらのパーティー名は既に使われております」


 …ん??


「あの、どういう事?」

「過去に他の方が登録されたパーティー名は、使用出来ない様になっております。

 申し訳ありませんが、名称を変えて登録をお願いします」


 …ああ、被ると紛らわしいからか。

 有名なパーティーと同じ名前に出来たら、偽物とか出て来ちゃうからな、しょうがない。


「じゃあ『ウィンダム』で」

「すいません、実在した著名人など特定の個人名や固有名詞は、含めない様お願いします」


 えー、そうなのか…。

 どうしよう、そんなに考えてこなかったぞ?


「千年の歴史がありますので、大抵の名称は使用されてしまってますから」

「いや、消せよ古いのは」


 無理なの?ああ、召喚勇者が作ったシステムから、誰も仕組みが分からないと。


 引き継ぎしろよ、勇者。


「銀髪の坊主、お前こっからが大変だぜ?」


 そういう事なの?ケビンさん。


「ちなみに、ギルドの魔道具にパーティー情報だけ入力して頂ければ、オートでパーティー名を決めてくれる機能もあります」


 それだど、確実だけど。

 うーん、それ使おうかな…。


「あの変に長いパーティーネームは、こういう事だったんじゃないですか?」

「お嬢さんの仰るとおりです」

「うっそだろオイ…」


 もう普通の名前は残ってないから、仕方なくオートで決めて、あんなイカれたネームになっちゃったって事か?


「まだお考えでしたら、第三候補まで考えてから提出して下さいね」

「やだーー!普通の名前がいいーーー!!」

「一部の特殊記号は使えませんよ」

「あーーー!!あーーー!!」


 勘弁してくれ!!



 ◇◆◇


「では『実家を追い出されたけどメイドさんと一緒に成り上がる!』で登録致しますね」

「あ、はい、それでお願いします」


 駄目だったよ。


「なあ、俺…頑張ったよな?」

「ええ、坊ちゃまは最善を尽くしました」

「二時間も掛かるとは思わなかったぜ、アニキ…」


 周囲の生暖かい視線、まばらな拍手と笑顔。


「これでお前らも冒険者だ、歓迎するぜ」

「ありがとうケントさん」


 俺は今、本当の意味で冒険者になれたんだ…。


「違うと思うぜアニキ…」

「はいはい!マリーは手頃な依頼受けて来ましたよ!」


 おい、そんな目で見るな弟分よ。

 あとマリーは俺をいたわれ、切り替えが早すぎる。

 泣くぞ、マジで。


「いたわるのは、夜二人きりになってからですよ、ふふ」

「誤解を招く言い方するな!」

「あわわ!エッチです!!」


 いたわるってマッサージとかな?

 やらしい事はしてない、興味はある、あります。


 て言うか、誰だ??今エッチとか言ったの。

 聞いたことある声だな…気の所為かな?


「まあ時間も無い事ですから、早速クエストに向かいましょう!」

「おう!やっと身体を動かせるぜ!ガハハ!」

「そうだな、気を取り直して行くか!」


 始まる前から疲れたけどな、ははは。

 まあ、頑張って稼ぐか!



 ◇◆◇



 あれから、半月程経った。


「お、アニキ!この草は不味いけど食えるぜ!」

「うん、食わないからな?」

「薬草探しも楽しいですね!」


 依頼と言っても、俺たち下っ端は野草採取や害獣駆除なんかの、地味な仕事だ。

 マリーは何でも楽しそうにやる、今も小さいスコップザクザク地面に刺してるし。

 稼ぎは、まあ真面目にやれば食えるな。


 そうやって数をこなして、段々とランクを上げると、難しいけど金になる依頼も受けることが出来るようになる。


「アニキ、ファングボアだ」

「おう、『風刃』」


 獣人は耳と鼻がいいから、索敵が優秀だ、おかげで貴重なタンパク源にありつける。


 俺の魔術は精度がイマイチで、威力を上げると肉がボロボロになるので、目眩まし程度の威力で風の刃を放つ。

 デカい牙の生えたイノシシ、突進中の鼻先に当てれば大抵は怯むし、上手く行けば目を潰せる。

 そうなったら、後はマリーの仕事だ。


「たー!討ち取りました!」


 うーん、見事。

 首の急所を一撃か、メイド服に返り血すら付いてない。


「よし、解体するか」


 最初は雷牙しか解体出来なかったが、マリーが二回目から一人で出来るようになり、俺も何度かやって覚えた。

 血の臭いに慣れなかったが、やってると慣れるもんだな。


「こうやって、命を糧にしていくんだなぁ」

「アニキ、弱肉強食だぜ」


 負けたら自分達が食われるからな、生きるのは厳しいなぁ。


「これは身が締まって良い肉です!」


 マリーは肉の選別中?赤身が好きなんだよな。

 肉屋かな、冒険者だよな?


「メイドですよ!」

「そうだったな」


 メイド服着てるからね。

 目立ち過ぎないか心配だったけど、そうでもなかったな。

 冒険者濃すぎる。


 雷牙は索敵以外にも、戦う時は手甲と鉤爪を合わせた感じの武器で暴れる。

 うーんワイルド、でも見た目は茶トラ。


 マリーは結局、両手に剣で落ち着いた。

 二刀が中々様になってる、かっこいい。


 獲物を仕留める時、一番キレイに倒せるので、必然的にメインアタッカーになった。

 まあ、純粋に強いんだが。


 そして俺は魔術でサポート。

 戦闘以外でも、種火を起こしたり飲水を出したりと、色々便利に使われてる。


「いえ、普通なりたての魔術師は、飲水まで出せるほど、魔力に余裕はありませんからね?」


 なるほど、俺は魔力切れの心配は無いからな。

 自分でもよく分かってないが、外から魔力を補充してるみたいだし。

 役に立ってるなら、よし。


 ついでに言うと、荷物は大体マリーが管理してる。

 そのメイド服の、何処に入ってるの?

 絶対マジックバッグ付いてるよね?


 と、まあこんな感じで過ごしてる。


「じゃ、そろそろ帰るか」

「そうですね、丁度いい時間です!」

「獲物も手に入ったしな!」


 まあ、ファングボアの肉は全部は食えないから、余りはギルドで売るか。



 ◇◆◇



「おめでとうございます、今回の依頼完了とボアの納品で、皆さんランクEになりました」

「おお、ありがとうございます」

「やりましたね!」

「やったなアニキ!」


 あっさり上がったなー。


「Eランクへの昇級は、試験等もありませんが、Dランクからは試験がありますから、気を抜かずに頑張って下さいね」

「見習いから、半人前になったって所か」


 で、Dから一人前と。


「それでも、皆さんは早い方ですよ。

 普通は三ヶ月以上かかりますから」


 それは、才能…じゃなく、スタートラインが恵まれてたからだろうな。

 俺もマリーも、基本的な教育や戦闘訓練を受けてた訳だし。

 雷牙も、こう見えて頭は悪くない。


 回りの新人見てると、王国の寒村出身とか、孤児とか、追い詰められて冒険者を選んだ奴も多い。

 何せ、誰でもなれるからな。

 俺みたいに、元貴族で行く宛がないやつとかも、コソコソと居る。

 まあ、たまに一攫千金と英雄に憧れてくる、馬鹿もいるらしいけど。


「ま、俺たちは堅実にやって行きますよ」

「そうですね、無理して命を落とさないで下さいね」


 ありがとう受付さん。

 才能無いからな、俺は。


「さあ!帰ってお肉を焼きますよー!」

「姐さんの料理はうめぇから楽しみだぜ!」

「ハハハその通りだ雷牙」


 まあ、あんまり難しく考えるのは止めよう。

 こうして、マリーと腹一杯食える様になったしな。


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