第24話 最終決戦!
奈良咲さんを探すためにダンジョンに入った私。
(女神様がこの前、ダンジョンに入ってきた人間の事は知ってるって言ってたし、彼女なら奈良咲さんの居場所を知ってるかも)
そう思った私は、セーブストーンを使って彼女の元に飛ぶ。
すると、私の体は泉のど真ん中に到着して、水浸しになりながらも女神様の目の前に着地した。
「あらぁ……! ワカナさん。突然出てきてびっくりしちゃいましたぁ」
「あ、すいません……あの、奈良咲さんは来てませんか?」
「えっとぉ、今日は来てませんねー? どうかされたんですかぁ?」
「色々あって探してるんですけど、見つからないんです」
「そうですかぁ、大変ですねぇ。私の方でも探しておきますから、見つけたらお伝えしますねぇ」
残念ながらヒントは得られなかったけど、探していればいずれ見つかるはずだ。
そう思って、なぜか中途半端な位置に置いてしまったらしいセーブストーンを回収しつつ探索を始めようとした時、女神様との会話にあった違和感に気がついた。
「女神様、一つ質問をしてもいいですか?」
「いいですよぉ、なんでも聞いてくださぁい」
「女神様、なんで『奈良咲』さんが『アスカ』さんだって知ってたんですか? 私、ダンジョンの中で奈良咲さんって呼んだことは一度も無いはずですけど」
「それはもう、女神ですからねぇ。ダンジョンの中に一度でも入ってきた人間のことは、例えダンジョンの外に居たとしても分かるんですよぉ」
「でも、そうだとしたら、私がダンジョンに入ってくる事も知っていたはずですよね? ですが、女神様は私が入ってきて驚いたと言っていました。なぜ私が入って来ることを知っていた事を、わざわざ隠そうとしたんですか?」
「……」
「もしかして、奈良咲さんがここに来た事を隠そうとしたんじゃないですか。答えてください」
「……まぁ、ちょうどいいタイミングですかねぇ」
そういうと彼女は、泉の水を槍のように変化させて、こちらを突き刺そうとしてきた。
そして私がその攻撃を弾くと、女神は言葉を続ける。
「あらぁ、流石にコレでは倒せませんかぁ……」
「……やはり、奈良咲さんはここに居たんですね」
「はい、先ほどいらっしゃいましたからねぇ……ところで、言葉の端を捉えてましたけどぉ、もしかして、以前から私の事を疑っていたんですかぁ?」
「はい。人間の願いを叶えるなんてメリットない事をしている地点で怪しいですし、なによりダンジョンの奥に進むたび……いえ、貴女に近づくたびに私達の願いが叶っていたのも都合が良すぎましたから」
私の友達が欲しいという願い。委員長の私と関わりたいという願い。ルルちゃんの姉が欲しいという願い。
これらの願いは、ダンジョンの奥に進むたびに叶っていた。
そう、まるで、何者かがダンジョンの奥まで私たちを導こうとするように。
「そもそも、ダンジョンという存在が現実のものになって時間が経っているのにも関わらず、未だにその正体が解明されていないこともずっと疑問でした」
「それでぇ、その疑問に対する回答はぁ……?」
「それは、奥に進んだ人間を貴女が殺しているからだと私は推測しています。そして貴女は、願いを持つ人間を食べるモンスターなんじゃないですか? だとしたらこのダンジョン自体も、貴女が人間を確保する為に地球に寄生して作り出したものと考えることができますけど、どうでしょうか?」
「大正解、ですけどぉ……人を寄生虫みたいに扱うなんてひどいですぅ…………私、ちゃんと人の形をしてるじゃないですかぁ」
そう言いながら彼女は、大量の水の槍を作り出した。
そして私は、それが放たれる前に疑問を解消する為、話を続ける。
「ということは、わざわざ奈良咲さんの願いを叶えたのは、私たち四人と同時に戦うのを避ける為でしたか」
「そうですよぉ。彼女は強くなりたいと願っていましたから、一度願いを叶えてあげれば必ずまた来ると思ったんですよぉ。勿論、彼女を殺して、探しに来た貴女達も殺していく予定でしたけどねぇ……そして狙い通り、貴女は一人で来てくれましたぁ」
そんな会話を続けながらも、いよいよ降り注いでくる大量の水の槍。
私はそれを回避しながらも、本題を問う。
「それで、奈良咲さんはどうしたんですか?」
「勿論、殺しましたぁ」
「それは嘘です。奈良咲さんの逃げ足は本物です。あのすばしっこい奈良咲さんがそうそう簡単にやられるとは思いません。それに、セーブストーンを手元に置いておいたのにも関わらず私を攻撃し損ねたのは、奈良咲さんを探す事に力を割いていた時に私が来たから、対応できなかったんですよね」
「……あらぁ、セーブストーンを私の手元に移動させた事までバレてしまいましたかぁ。確かに貴女の言う通り、奈良咲さんは殺しそこねましたよぉ。でも、帰還の指輪は奪いましたから貴女さえ殺せば時間の問題ですし、結局は同じ事ですよぉ」
……私の目標は奈良咲さんを見つける事である。
つまり、彼女が生きているのであれば問題はない。
(それに、彼女の攻撃はそこまで激しいわけではない。これならば加速を使えば充分に避けられるし、いずれ倒せるはずだ)
そして、私がそんな風に思いながらも反撃のタイミングを見計らっていると、女神は言葉を続けた。
「しかし、これで彼女を殺しそこねたのは二度目ですねぇ……まあ、今回は油断しませんが。貴女は本当に彼女を救うのが上手ですねぇ」
「二度目……?」
「はい、子供を使えば逃げられないと思っていたのに、貴女がそれを邪魔したんですからぁ」
そういえば、奈良咲さんと初めて出会った時、彼女はキングオークから子供を庇っていた。
(あんな浅い階層にキングオークが居るのはおかしいと思ってたけど、キングオークとあの子供は女神が仕組んだことだったのか)
そうして、かつて頭の片隅にしまった疑問が解消されたと同時に、新たな疑問が浮かんできた。
「ところで、随分とおしゃべりなんですね。私はまだダメージを受けていませんよ?」
「だってぇ……今から貴女は死ぬんですから、答え合わせくらいさせてあげたいじゃないですかぁ」
そうして、私の問いに答えた彼女は水を操って、巨大な水の柱を数本発生させた。
そして、その中から新たな女神が出現した。
「偽者の女神……!」
「前回は、不意を突くために一体しか出しませんでしたが、そのせいで殺しそこねましたからねぇ。今度は最初から本気ですよぉ」
そうして、生成された偽物の女神からも一斉に、水の槍による攻撃が飛んでくる。
(流石に数が多い……! 加速を使えば避けられるけど、反撃のタイミングが読めない!)
そうして私が回避に集中しながら様子を伺っていると、彼女は嬉しそうに語りかけてくる。
「そう言えば、あの時は笑ってしましたねぇ『自分が願いを叶える為なら誰かが傷ついてもいい、なんて考える人は私達の中には居ない』でしたっけぇ。ご立派ですよねぇ……それでぇ、その『お仲間』は、どこに居るんですかぁ?」
そう言いながら彼女は、ニヤリとしていた。
しかし、そんな表情を見たことにより私の頭は、むしろ冷静になっていた。
(……これは挑発だ。彼女から見れば、戦闘の形勢は彼女有利に見えているはず。なのに、なぜ今、私を挑発する必要がある?)
さっきまでは余裕ぶってお喋りしてたのに、今になって急激に攻撃が激しくなった。
理由は分からないけど、相手は焦っている、なら今は、耐えるだけでいい。
そうして、攻撃の回避に専念する私に、彼女が段々と冷静さを失っているのが見てとれた。
「ちょこまかとぉ……! 私に時間をかけては、奈良咲さんが死んでしまうかもしれませんよぉ……早く特攻しに来た方が来たほうがいいんじゃないですかぁ?」
勿論そんな挑発を無視して私は、回避に専念する。
そうして、攻撃を回避し続けていた時、私の耳元に音が聞こえてきた。
(……足音!)
そして、音のする方を振り返るとそこに立っていたのは、委員長とルルちゃんだった。
「助けに来ましたよ!」
「入れ違った際の連絡役は信頼できる者に任せたうえ、委員長さんに連絡をして共にきましたっ!」
そこで初めて、女神が焦っていた理由が判明した。
彼女が早く戦いを終わらせようとしていたのは、二人がこちらに来ることを探知したからだ。
(ここが反撃の時!)
そして、そう判断した私は、来てくれた二人に自らの意思を伝える。
「彼女を倒して、奈良咲さんを助け出します!」
そうして、ダンジョンの大ボスたる女神との戦いが始まった。
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読んでいただきありがとうございます!
次回、最終回です。是非、最後までお付き合いください!
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