陰キャ女子高生が脱ボッチ目指して人気ダンジョン配信者になろうと思ってたら人気になる前に強くなっちゃったし、クラスのギャルを助けたら何故かカップルチャンネルをやりながらダンジョン配信する事になりました

第25話(最終回) 永遠たれ！ 百合の花達！

「やはり、数が多いとやりにくいですねぇ……！」

　委員長とルルちゃんが来てくれてからは、明確に戦況はこちらに傾いた。

　勿論、女神も対抗するように次々と偽物の女神を出すものの、こちらの処理速度の方が早く、女神本体を攻撃できるようになるのも時間の問題だった。

　しかし、そう楽には倒させてもらえないようで、私が近場にいた偽物の女神を処理して少し離れた位置に移動した時、女神が呟いた。

「まずは一人目……！」

　そうして偽物の女神が減っていく中、突如ルルちゃんの背後から水の槍が飛び出してきた。

(まずい、ルルちゃんとは距離がある……！　助けに行けるか……！)

　そして、私が加速を起動しようとした時、委員長が声をあげた。

「ルルさん、危ない！」

　そして委員長は、水の槍とルルちゃんの間に入り彼女を庇った。

　その後、水の槍は委員長のお腹を貫いた……かのように見えた。

　しかし、委員長は傷一つなく立っていて、ルルちゃんもその事に驚いている様子だった。

「い、委員長さんっ！　私を庇って……って、傷口はどこへ？」

「お腹に力を入れて受けたので大丈夫です！　それよりも、体勢を立て直して下さい！」

　そうして、ルルちゃんを庇って水の槍にお腹を貫かれたはずの委員長は、その攻撃を肉体一つで弾いたようで、まるで問題がなさそうにしていた。

(そういえば、だいぶ前に『服以外も全部溶かすスライム』を浴びてもダメージを受けてなかったけど、あれ、シンプルに体が丈夫なだけだったんだ……怖ぁ)

　なんて思ってたら、委員長が私に語りかけてきた。

「ワカナさん、貴女は一人ではありません！　背中は任せて、貴女は自由に戦ってください！」

　そんな風に語る彼女が色んな意味でヤバい人なのには変わりはないけど、頼もしいのは事実だ。

　私の加速は向かい合っての戦いで使っても強力なものだけど、理想を言えば相手の視界外から突っ込んで不意打ちできるのが一番強い。

(隙を伺うべきだ、今は仲間を信じて様子見しよう)

　そうして、私が引き続き偽物の女神を一体ずつ倒していると、女神は水の剣を作り出して委員長に切りかかる。

「化け物ですか貴女はぁ……！」

「単体で増殖してる貴女に言われたくは無いですよっ！」

　そんな風に口論しながら二人は水の剣とチェーンソーをぶつけ合って、鍔迫り合いを発生させていた。

　そして、それと同時に偽物の女神の大部分を倒し切って余裕が増えてきた私は偽物の女神を処理しながらも、いつでも隙をつけるように、二名の化け物が衝突している機を伺う。

(まだ私の事を警戒してる、今はまだ待機……って、あれ？　今、女神の背中側で何か動いた……？)

　そうして、私がその事に気がついたと同時に女神の視界の外から影が突っ込んできて、次の瞬間には女神の右脇腹が引き裂かれた。

　そして、その影の行き先を確認するとそこには奈良咲さんが立っていた。

「奈良咲さんっ！」

「ワカナちゃん！　あたし離れて隠れてたんだけど音がしたから戻ってきた！　迷惑かけちゃったから、その責任は取らないとね！」

　そうして、奈良咲さんの無事を知ると同時に、新たな発見があった。

　どうやら女神は戦闘に集中しているせいで、私達を探知する能力を使う余裕が無いらしい。

(やっぱり奈良咲さんは無事だった……！　それに、奈良咲さんに意識が移ってる今なら、確実に隙がつける……！)

　そして、突如登場した奈良咲さんに向けて女神が口を開いた。

「戻って来ましたかぁ、勇敢ですねぇ。ですが、足が震えていますよぉ……そもそも貴女のせいでお仲間は私と戦うハメになっている訳なのは理解していますよねぇ。いい加減、みなさんが貴女のことを足手まといだと思ってることに気づいた方がいいですよぉ」

「……確かに、こうなったのは全部あたしの弱さが原因だよ。でも、みんなはそんな事を思う人たちじゃないって、あたしは知ってるから。だから私は、自分の弱さからもう逃げない！　ワカナちゃんの力になれるくらい、強くなるんだぁっ！」

　そうして、奈良咲さんがその覚悟を叫ぶと、女神の傷口から漏れ出た体液が私の持っていた七色のダイヤモンドに吸収されて、強烈な光を放ち始めた。

　そして私は、光をまとうそれを奈良咲さんに投げ渡す。

「奈良咲さん！　コレを受け取ってください！」

「おっとっとぉ！　って、これ、宝石……？　ってか、鉤爪が……！」

「奈良咲さん！　貴女の想いを強く願ってください！」

　すると、彼女は迷わずに答えてくれた。

「あたしは、強くなりたい！　ワカナちゃんの足を引っ張らないくらい、いや、ワカナちゃんを支えられるくらいにっ！」

　そうして、そんな奈良咲さんの意思に応えるように七色のダイヤモンドは形を変えて、やがて鉤爪となって彼女の腕に装着された。

「なんか武器になった！　なんで！？」

　おそらく、聖杯を起動するだけの力を持っている女神の体液が吸収された事で、その力が七色のダイヤモンドに吸収されたのだろう。

　そして、その推測は女神の言葉で確信に変わった。

「なるほどぉ、奈良咲さんを喜ばせたいというワカナさんの願いと、ワカナさんの為に強くなりたいという奈良咲さんの願いが一つになり、私の願いを叶える力がそれを叶えたとぉ……願いを叶え合って強くなるなんて美談、私は認めませんよぉ！」

　そう言うと女神は、奈良咲さんにむけて水の槍を放った。

「私は、ワカナちゃんの隣に立つんだぁっ！」

　そうして、奈良咲さんが女神の攻撃に対抗するように空間を引き裂くと、彼女に向かっていた水の槍と偽物の女神はまとめて一斉に消し飛んだ。

　そして、その一撃に驚いている様子の女神を横目に、私は追撃をかける。

「はあああっ！！」

　そして、不意をついた私の一撃は、女神の右腕を切り落とした。

　その後、驚いたような表情をした女神は、半ば諦めたような表情で言葉を発した。

「これは追い詰められてしまいましたぁ……どうやら私に勝ち目はなさそうですねぇ。やむを得ませんか……ダンジョンごと破壊する事にしましょうか。私は数年かけて回復すればいいですしねぇ……さて、帰還の指輪は三人分しか無いですよねぇ……！　誰が死にますかぁ？」

「誰も死にません！　今ここで倒すので！」

　そして私は、女神の言葉にそう返すと、今日の午前中に買っておいた見た目がワープストーンにそっくりなプラスチック製の赤い宝石のおもちゃをばら撒いた。

　勿論、触れば本物と偽物を見分ける事は簡単だけど、こんな一瞬で区別することはできない。

「ルルちゃん、爆弾を！」

「はいっ！」

　そして、私の指示によりルルちゃんの爆弾が起爆し、爆煙が上がったタイミングで私は再度、声を上げる。

「帰還の指輪っ！」

「おや、逃げた……？　いや、違いますねぇ……ああ、なるほどぉ。爆煙で紛れつつ帰還の指輪で帰った後に、すぐにセーブストーンで戻ってきて不意打ちするのが目的ですかぁ……！　でも、意味がありませんでしたねぇ！」

　そう叫んだ女神は、大量の水を集めて津波のように操る事で地面を攻撃して、セーブストーンの全てを一瞬で破壊した。

「本物かどうか見分けがつかないなら、全て破壊すれば良いのです！　さあこれで、セーブストーンは破壊しましたよぉ！　これでリーダーはもう返って来れませんねぇ！」

　そうして、私が居なくなったと判断したであろう女神のあげた喜びの声は、残念ながら私には聞こえていた。

　そして、そんな女神の叫びを聞いたあとで私は即座に岩陰から加速を使い飛び出して、大量の水を操る大技を放った後の隙をつき、女神の背中にナイフを一気に突き刺す。

　その後、女神はこちらに振り向きながら驚いたような表情で私に語りかけてきた。

「な、なぜ……貴女がここに……？　帰還の指輪を起動したのでは……？」

「私『帰還の指輪』とは言いましたけど、起動したとは言ってませんから」

「これは……完全に騙されましたねぇ……私の負けですぅ……」

　奈良咲さんが登場した際に、女神は既に探知能力が使えなくなっていることは判明済であったから、この不意打ちが成立すると判断できた。

　この判断ができたのも、そもそも女神を探索能力が使えないくらいに消耗させることができたのも、全て仲間がいたからだ。

(みんなと知り合えて良かったな……)

　そうして、私が女神にトドメを刺した後、彼女は消滅して青い光となり拡散した。

(女神の力が広がった……ということは、女神を倒してもダンジョンはこのままになるのかな)

　なんて思っていたら、奈良咲さんが抱きついてきた。

「ワカナちゃんっ、ごめんね、ワカナちゃんの恋人として恥ずかしくないくらいに強くなりたくて……ずっと言い出せなくて。でも、ワカナちゃんのおかげで強くなれたから、これから活躍してみせるからねっ！　これからもカップルチャンネルとして、よろしくね！」

　そして、私がそんな事を言っている奈良咲さんを抱きしめていると、委員長がこちらに迫ってきた。

「な、なに私の許可無しにワカナさんとラブコメしてるんですか！　離れなさいっ！」

「えー、カップルなんだから、ハグくらいふつーでしょー？」

「いいえ許せません！　やはり私が切り刻みます！」

「なんでー！　助けに来てくれたんじゃないのー！」

　そうして、奈良咲さんと委員長による追いかけ合いが始まった。

　そしてそれと同時に、ルルちゃんがすっと近づいてきて、私に話しかけてきてくれた。

「私、お姉ちゃんに着いて行きますからねっ！」

「あはは……ありがとね。じゃあとりあえず、一緒に委員長さんを止めようか」

　そうしてルルちゃんと会話をしていた頃、奈良咲さんに声をかけられた。

「ワカナちゃん、助けてー！」

「は、はいっ、今行きます！」

　そうして私は、奈良咲さんと委員長の元へと走り出す。

(こんな時間が、ずっと続けばいいな)

　……できれば二人も、もう少し仲良くしてくれると嬉しいけどね。

　なんて思いながらも私は、ルルちゃんと共に二人を追いかける事にした。

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　最終回まで読んでいただき、本当にありがとうございました！

「読んで良かった！」

「お疲れ様でした！」

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　そして現在、次回作を執筆中です。そちらも楽しんでいただけるように頑張りますので、ぜひ【作者フォロー】もお願いします！