第15話 レッツ生着替え!
水着に着替える為に一時的に配信を切り、誰も見ていないと分かりつつも何となく木の陰の方へと移動して着替えを始めた私達。
そんな中、私は委員長から時折見向けられるねっちょりした視線を背に、お着替え中のルルちゃんをチラチラチラチラと眺めていた。
(ふへへ……タオルの中でゴソゴソ着替えてるルルちゃん可愛いな。やっぱ幼女はこうでなくちゃね……)
彼女を見ていると、できるだけ動きを小さくしてなるべく肌が出ないように注意を払いながら着替えているのがよくわかる。
私から見れば幼く見える彼女だって、心はすでに立派な乙女なのだ。
その事実を改めて感じて、ゴソゴソと動くいじらしい彼女に心をざわめかせながら、奈良咲さんの方に目を向けた、すると。
「あっ」
奈良咲さんと目があってしまった。
どうやら私が奈良咲さんを見ていた事に気づいたらしく、彼女はニヤニヤしながらこちらに話しかけてきた。
「ワカナちゃん、あたしの着替え見てたっしょー……えっち」
「あっ、えっと、これは違くてっ!」
「へへ、ワカナちゃんなら見てもいいよー? その代わり、あたしも見ちゃうけどねー」
そう言われて、私は素直に奈良咲さんの着替えを見続けた。
すると突然、彼女の着替える手が止まった。
そしてこちらに顔を向けて、一言。
「あ、あの、これからパンツ脱ぐから流石にあっち向いててもらっていーい?」
そう言われて私は、速攻で顔を逸らした。
そして、やたらとバクバクする心臓を抑えて、すぐに着替えを終えた。
(ふぅ……人生で最も有意義な時間でしたね……)
そして、私がそんな事を思いながら木の陰から出ると、他の三人も集まってきた。
奈良咲さんは黄色をベースにオレンジの花柄のついた、明るい印象を受けるビキニタイプの水着。
委員長はいつもと同じように黒をベースにした、スリットから生足を覗かせるセクシーの味を感じさせるような水着。
ルルちゃんは肩を出すタイプの白ワンピース水着を身につけて、持ち前の可愛らしさを爆発させていた。
(みんな似合いすぎでしょ……というか、私の場違い感すごくない? みんな武器置いてるのに私だけ靴もナイフも装備してるままだし……これ『余計な異物が混じるな雑魚』ってリスナーに怒られたりしない?)
なんで私が思っていると、奈良咲さんがこちらに駆け寄ってきて、私の顔から足まで一通り眺めた後に口を開いた。
「ワカナちゃんは……めっちゃ可愛いじゃん! ナイフと靴は明らかに浮いてるけど……にしても、フリル付きの白ビキニなんて着てくれるの!? 絶対肩出てないと思ってた!」
「い、一番露出度が少ないのがコレだったんです……」
「あー、そういえばルルちゃんが着る用のやつ以外、結構ちゃんと肌出てるのしか無かったもんねー、いいんちょーの趣味?」
そう言いながらも奈良咲さんは、委員長の方を向く。
そして委員長は、そんな問いに応じた。
「なにやら変態扱いされているような気もしますが……まあ、これだけ綺麗な肌をしているのですから、似合うと思いまして。まあ、リスナーの目にも触れる訳ですから、隠すべきところは隠れる水着を選びましたけどね」
「あ、初めて良いんちょーと意見があったかも。あたしもワカナちゃんはもっと足出すべきだと思ってたし!」
「……貴方と意見が被っても嬉しくはありませんけどね」
「相変わらずあたしには辛辣だなぁ……もうちょいデレてくれてもいいんだよ?」
「では、ワカナさんと別れていただけますか?」
「それは無理! ごめん!」
そうして、気づいたら何故か私を中心とした口論が繰り広げられそうになっていた。
それを受けて私は、二人の話を遮って提案をする。
「そ、それくらいにして、配信を再開しましょう!」
ちょっと前の私なら、こんな風に人の間に入って意見を言うなんて考えられなかっただろう。
こんな事ができるようになったのは成長だし、なにより環境に恵まれたのだと改めて思う。
そして、私が自分の意思を伝えると、二人はそのまま口論に進む事なく話を終えてくれた。
そうして、私はすぐに配信を再開して、リスナーに問いかける。
「き、聞こえてますかー?」
そして、私の発言にコメント欄は答えてくれた。
:きたきたきたきたきた
:うっほぉ……
:水着回だおっしゃおらぁ!
:いろいろと盛り上がって参りました
なんか若干熱が激しすぎる気もするけど……まあ、盛り上がってくれる分には良いでしょ。
なんて思ってたら、その中に一つ、気になるコメントを見つけた。
:またカメラ壊れる流れかと思ってた
正直、私もその可能性はあるなと思っていた。
最近はやたらと壊れる機会が多かったし、今日もまた突然配信ができなくなるんじゃないかとすら、頭の片隅で考えていた。
(まぁ、カメラを一旦停止させるイベントとかいうフラグも回避したし、大丈夫でしょ)
そもそも、ダンジョン配信用に使っているカメラは探索に対応すべく耐久性が高くつくられているもので、本来はカメラ破壊イベントなど、簡単に起こるようなものではない。
だから今度こそ大丈夫だろう……なんて思ってたら、委員長が口を開いた。
「こう言う時って、巨大なタコやイカが出てきて、水着を剥ぎ取られるのがお約束だったりしますよね」
そうして、委員長がそう言い終えた瞬間、すぐ近くの海から突然巨大な水飛沫があがった。
そして、その中からは、私達四人を陰で覆い尽くすほどに巨大なタコの魔物と、同じような大きさのイカが出てきた。
それを受けて奈良咲さんは声を上げる。
「いいんちょーが変なフラグ立てるからー!」
「ま、まさか本当に出てくるとは思わないじゃないですか!」
「てか、カメラ回ってるんだから本当に水着まで剥ぎ取られたら終わりだよー!」
そんな会話がなされていた時、私はタコとイカが攻撃を仕掛けてこないうちに靴を起動して加速し、奈良咲さんにはかぎ爪、委員長にはチェンソー、ルルちゃんには爆弾をしまっている袋をそれぞれ拾って手渡した。
それと同時に、イカがその巨大な触手を振りかざして奈良咲さんに襲いかかった。
その瞬間、私は今までの経験からなのか、直感的に気づいた。
(これは奈良咲さんには避けきれない!)
そう気づいた私は、
「……っつ!」
「ワカナちゃ……って、うわあぁっ!」
そうして、奈良咲さんを庇ったは良いものの、私は足をイカに拘束されて、そのまま体を持ち上げられてしまった。
しかも結局、奈良咲さんもイカが向けてきた別の触手に捕まってしまったらしく、彼女はもがきながらも声を上げる。
「ぬるぬる気持ち悪いっ……ってか、変なとこ入ってくるなぁ!」
そうして奈良咲さんは水着の中に触手が入ってきているようで、なんだかカメラに映せない姿にされかけていた。
(粘液まみれにされながら全身を撫で回されて身悶える奈良咲さん、めちゃくちゃエッチだ……って、早く奈良咲さんを助ける方法を考えなくちゃ。なんか私もヌルヌルしてきたし)
そして私は、私の水着の中に入ろうとしてくる触手をナイフで切り落としながら、現状を打開する方法を考え始めた。
そうして数秒後、巨大イカのされるがままになっている奈良咲さんを横目に、私が次の手を決めた時、委員長が怒号を上げた。
「おのれこの野郎! よくもワカナさんの柔肌に粘液なぞ塗りたくりやがって! ぶっ殺してやる!」
そう言うと委員長は、チェーンソーのスターターを引っ張りあげて、刃を回転させ始めた。
しかし、それと同時に今度はタコの方が、委員長とルルちゃんに向かって墨を吐き出した。
「委員長さんっ! 下がってください!」
ルルちゃんはそう言うと、爆弾を投げて墨を弾き飛ばした。
そして、爆発によって拡散したタコの墨によってカメラは真っ黒になり、幸運にも奈良咲さんの惨事を映さなくなっていた。
しかしカメラと違いマイクの方は生きていたようで、宙に浮かぶコメント欄は流れ続ける。
:なんも見えねぇ!
:おのれタコ野郎!!
:あの墨吐きゲロ野郎を殺せ!!!
みんなちょっと怒りすぎじゃない……?
なんて思いながらも私は、私を捕まえるイカの触手を切り落として、そのままの勢いで残った付け根の方を踏みつけて加速しイカの本体を切りつけた。
そして、それと同時に委員長とルルちゃんに指示を飛ばした。
「イカとアスカさんは私が何とかします! 二人はタコを!」
そうしてすぐに私は奈良咲さんを捉えている触手を切り落とし、彼女を救出して着地する。
そして、それを見た委員長とルルちゃんは、タコの方を向き直った。
それを受けて私は、三人とマイク越しに声だけ聞いてくれているリスナーにこう伝える。
「さあ、反撃開始です!」
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