第13話 ギャルと幼女と変態と変態

 幼女と出会い、別れ、また出会った日から一日が経過した。


 そして今、学校の教室にいる私は、昨日の記憶に思いを馳せていた。



「ルルちゃん……だよね? なんでここに?」


「その、若菜さんとお話ししたくて、家を探して来ちゃいました……えへへ」


「な、なるほど……? とりあえず、私の部屋に行こっか……?」



 そんなやり取りから始まった会話を要約すると、二点に絞る事ができた。


 一つ目は、助けてもらったお礼に私を家に招待したいとのこと。


 そして二つ目は、ダンジョンの奥にあると噂されている『聖杯』の入手を目的として、共にダンジョンの奥に進むのに協力して欲しい。


 と言うことであった。


 ちなみに、どうやって私の家を特定したのかを聞いてみたら……



「財力と権力ですっ!」



 との返事が返ってきた。


 まぁ、ドレス着てたしね。お金持ちなら仕方ないよね。


 そうして話し合いをした結果、お礼の件は配信の都合で予定を組む必要がある為、後日にする事。


 そして、私がダンジョン攻略に協力する代わりにルルちゃんにも配信に参加してもらえる事が決まって、今日に至った。



(……さて、気を取り直して。今日の放課後は、奈良咲さんと委員長に、ルルちゃんを紹介するんだよね……あと、七色のダイヤモンドも渡さなきゃ)



 つまり、私が今日、最優先にやるべきことは、ようやく合格点を取り補習から解放された奈良咲さんと委員長さんにルルちゃんを紹介する事。


 もちろん、今日新しく人を連れていく事は二人にも連絡済みで、彼女の事情も伝えてある。


 そして、七色のダイヤモンドを奈良咲さんに渡す必要もあるが、まずはルルちゃんの紹介が優先だろう。



(後は顔合わせするだけ……よし、やるぞ!)



 そうして、やるべき事を再確認しながら学校生活を過ごし数時間が経過して、早くも放課後となった。


 そして、私は学校を出た後、早速ダンジョンへと突入する。



(ダンジョン着いたけど、もう三人は居るのかな……?)



 そうして、私がダンジョンに入ると、既に中にいた三人と目があった。


 そして私は三人の元へと小走りで向かって、声をかける。



「お、お待たせしました!」



 それに対して早速、奈良咲さんが私に抱きつきながら返事を返してくれた。



「うわーん! 若菜ちゃん会いたかったよぉ! 補習も終わったし、これでやっと配信再開できるねー!」


「そ、そうですね……で、でも今は他の人の目もありますから、一旦離れませんか?」


「やだー! 今日はずっと一緒にいるー!」


「で、でも、ルルちゃんの紹介もしたいですし、なにより、その、委員長がすごい顔してるので……」



 そうして、不気味なほどに静かにしていた委員長の方を見ると、彼女は表情をころりと変えてニコニコ微笑んできた。



 (怖い。早くルルちゃんの話題を振って話を逸そう)



 そして、私が委員長を見てそんな風に思いはじめた頃、ルルちゃん本人が喋り出してくれたので一旦奈良咲さんに離れもらった後、そちらに向き直る。



「あの……私、今来たばかりで、あまりお二人とお話ができていないのですけど、この方達が昨日話していたお仲間ということでよろしいのでしょうか?」


「そ、そうだよ! こっちの金髪の人がアスカさんで、黒髪の人が委員長さん。昨日も話したけど私はこの二人とダンジョン配信をしてるから、ダンジョンの攻略の為にはルルちゃんにも配信に参加してもらうのが一番いいと思うんだけど、それでも大丈夫?」


「はい、協力していただけるのであればかまいません。改めて、よろしくお願いいたします」



 そうして、ルルちゃんへの確認を終えた頃、奈良咲さんがルルちゃんに視線を合わせるように屈みながら口を開いた。



「まだちょっとしか話せてないけど、これから仲良くしようね、よろしくねっ!」



 そう言った奈良咲さんは、ルルちゃんの手をとって握手して、そのままにぎにぎし始めた。



「ひゃっ! あ、あの、手っ!」



 そうして、突然手を取られて驚いている様子のルルちゃんに奈良咲さんは言葉を続ける。



「めっちゃ手柔らかー! あたしにも妹居るけど、負けないくらい美人さんだー!」


「えっと、あの……」


「あれ? 触られるの嫌だった?」


「あ、えと、ち、違うんです! その、手を握られるのに慣れていないので、つい驚いてしまい……」


「ははーん。さては若菜ちゃんと同じ照れ屋さんタイプかぁ、かぁわいいねぇ。若菜ちゃんも初めて手握った時はワタワタしてたねぇ……」



 そうして、私と出会った頃を懐かしんでいる奈良咲さんの発言を聞いて私も、最初にいきなり手を握られた時は驚いたなぁ……なんて思っていると、ルルちゃんがこちらを見つめながら話しかけてきた。



「若菜さんも、私と同じなんですか?」


「ま、まぁ、びっくりはするよね。突然だとね」


「で、ですよね。その、ちょっと照れますよね……えへへ」


「そ、そうだね……へへ」



 かわいい。



(よし、この子は本日をもって、私の妹とします)



 そうして、私に妹ができた後、未だ手を握られたままのルルちゃんに向かって委員長が口を開いた。



「こほん。次は私が自己紹介する番ですね。本名は薙間莉子と言いますが……まあ、委員長と呼ばれる事が多いですから、委員長と呼んでください」


「あ……もしかして『虐殺の黒姫』さんですか? あの、奇声をあげながらモンスターを切り刻む動画で有名な……」


「……確かにそうですが、あれは私が気分が良くなっている所だけを悪意をもって切り抜くことで作られた動画ですから、普段は落ち着いているつもりです。なので、そのつもりでお願いしますね」



 ……委員長、自分の事を『落ち着いているつもり』だと思ってたんだ、私に使用済みの下着を履かせようとしてきたのに。


 なんて思いながらも、ふと新しい発見があった事に気づいた。



(というか、委員長って薙間さんっていうんだ……同級生なのに名前知らなかったな)



 そうして、委員長の名前に思いを馳せていた頃、ようやくルルちゃんの柔らかいおててを離した奈良咲さんが口を開いた。



「それじゃあ自己紹介も終わったし、早速配信しない? 今日はいいんちょーが機材持ってきてくれてるんだっけ?」


「ええ、既に準備はできていますよ」



 そうして委員長は、収納用のワームホールを出現させて、中から既にセット済みの機材を取り出した。


 そして彼女は、私に顔を向けて喋り出す。



「それでは、ワカナさん、リーダーとして開始の号令をお願いします」


「へっ!? わ、私がリーダーなんですか!?」


「私達三人を繋いでいるのはワカナさんですから」



 そうして私は委員長に言われた通り、やった事もない号令をしてみる。



「そ、それではっ! 配信を開始しましゅっ!」



 ……全力で噛んでしまった。


 こんなに視線が集まっている中で噛んだ経験なんて初めてで、どんどん顔が赤くなっていくのが自分でも分かる。


 そして、一瞬だけ静かになった後、すぐに三人の反応が返ってきた。



「あはは、顔真っ赤だ。ワカナちゃんは可愛いねぇ」


「は、張り切って行きましょう! おー!」


「正直ムラムラします」



 そして、そんな反応を受けて私は、顔に籠る熱を振り切るように言い直す。



「……つっ! 開始しますっ!」



 そうして、三者三様の辱めに耐えながら、私は配信開始のボタンを押した。



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