第12話 新たなロリ、きたれり。

「す、ストップ、私は番人じゃないよ! 番人はもっとふとももが太いから!」


「……?」



 しまった、つい幼女特有の細くて繊細で、なんだか舐めたら甘そうな足が目が入ってしまい変な事を口走ってしまった。

 

 その証拠に、私の目先に立っている白髪ハーフアップのフリフリドレス幼女も、その可愛らしいお目目を細めてこちらを見ている。

 


(まずい……このままだと通報されて『仁堂若菜容疑者は、つい幼女の生足に惹かれて舐め回すように見つめてしまった、などと供述しており……』みたいな流れになりかねない……!)



 何とか言い訳をしなければ、と思ったその時、幼女の背後に突如、新たなクリスタルゴーレムが出現し、その巨大な足で幼女を踏み潰そうとした。



「後ろっ! 危ない!」



 そうしてそれに気づいた私は加速を使い幼女に突っ込んで、すぐに彼女を抱え上げて救出した。



「大丈夫!? 怪我してない!?」


「……!」


「あっあっ、勝手に持ち上げちゃってごめんね! すぐ下ろすからね!」



 そして、私はフリーズしている様子の彼女を、なんとなくお尻を触らないようにゆっくりと着地させた後、クリスタルゴーレムに向直る。



「おのれクリスタルゴーレム! 番人とはいえ、やっていい事と悪いことがあるでしょうが! バラバラにしてやる!!」



 そうして、私がクリスタルゴーレムに斬りかかろうとしたその瞬間、私の背後から何かが飛んできて、私の顔を横切った。


 そして次の瞬間、クリスタルゴーレムの体が大爆発を起こした。



「爆発っ……!?」



 そして、私がすぐに後ろを振り向くと、白髪フリフリドレス幼女はクリスタルゴーレムへと向き直りながらも、どこからか取り出した爆弾のようなものを構えていた。


 そんな彼女に対して私は、問いを投げかける。



「もしかして、協力してくれるの?」


「はいっ、助けてもらったのでっ!」


「……じゃあ、一緒に倒そうか! 貴女は好きに爆弾投げていいよ、小回りが効く私が合わせる!」


「分かりましたっ!」



 そうして私は、幼女とのふれあい……もといコミュニケーションを終えた後、クリスタルゴーレムの元へと走る。


 そして、ゴーレムの足元にたどり着いた瞬間、私が予想していた通りのタイミングで背後から爆弾が飛んできた。


 勿論、私はそれを回避して、爆発した箇所に追撃を加える。



(やっぱり、私には爆弾が飛んでくるタイミングが分かる!)



 前提として、私は幼女が大好きだ。


 そして、今この爆弾を投げている子はまごう事なき『幼女』であり、それも『白髪ハーフアップのフリフリドレス幼女』である。


 そんな私だから当然、幼女が一生懸命に物を投げる際に発生させる呼吸音を聞き取る自信があったし、実際にできた。


 それが例え、爆発音が響くこの空間であっても。



(よく聞こえる、ロリが爆弾を投げる前にその小さな体で精一杯力む際に発生するわずかな呼吸音が……! これなら爆弾が飛んでくるタイミングも完璧に分かる!)



 そうして私は、爆発によって脆くなった箇所に向けて、次々とナイフを振り下ろす。


 そして、クリスタルゴーレムは二人での連続攻撃を前にしてカウンターを満足に放つことすらできないまま、私が一人で削り倒した時の半分の時間もかからずに倒れ、そのまま宝箱だけを残して消滅した。


 その後、それを確認した私はナイフをしまいながら幼女の元に戻りながら、敵を倒した今のタイミングならいけると思って、彼女の視線に合わせて軽く腰を曲げて、ハイタッチの姿勢をとりながら声をかける。



「やった、倒せたね! ハイタッチ!」


「え、えっと……」


「……どうしたの?」


「は、ハイタッチ……」



 そうして彼女は、少し照れくさそうにしながらも掌を広げて、天使のような笑みを浮かべながら、ゆっくりとハイタッチを返してくれた。


 とても、とてもかわいかった。


 そして、私がそんな彼女を見ながら心の栄養を満たしていた頃、彼女は態度を一転させて少し怯えたような声で話しかけてきた。



「あの……さっきは攻撃してごめんなさい」


「番人と間違えたんでしょ? なら仕方ないよ。それより、怪我はない?」


「だ、大丈夫です。けど……あの、その、怒ってないんですか……?」


「全然怒ってないよ? ダンジョンにも人型のモンスターはいるし、そもそも人と会う事自体珍しい事なんだから、相手に見つかる前に不意打ちで攻撃するのは普通の事だと思うし……とにかく私は、貴女が無事ならそれでいいよ」



 そうして、私が彼女の頭に手を乗せてそっとなでると、ようやく安心したような表情を見せてくれた。



 (さっきの怯えてるみたいな顔も可愛かったけど、やっぱり幼女には笑顔が似合うよね)



 そして、私の手で揺らぐ彼女の髪からはお花のような香りが漂ってきて、とても気分が良いので、そのまま頭を撫でながら会話を続ける。



「私、ワカナって言います。貴女はなんでダンジョンにいるの? というか何歳?」


「えっと『百々瀬ももせルル』って言います。十二歳です。ダンジョンには『七色のダイヤモンド』を探しにきました」


「あ、私と一緒だ。なら丁度良かったね」



 そう言って私は、二体目のクリスタルゴーレムが落とした宝箱を指さす。



「多分だけど、あの箱に入ってると思うよ。すごく硬いけど貴女の爆弾なら壊せると思うから、やってみたらどうかな?」


「で、でも、クリスタルゴーレムを倒せたのはワカナさんのおかげですし……私が貰ってしまっても良いのですか?」


「勿論! 私はもう手に入れてるしね……って、私が倒した分の七色のダイヤモンドまだ拾ってない! もしかしてさっきの戦いで壊れちゃったりした!?」


「あ、あの、それなんですけど『七色のダイヤモンド』って、これ……ですよね。わたし、助けてもらった時に見つけて拾ったんですけど……ワカナさんが倒して手に入れたものだったんですね。お渡しします」



 そうして、私はルルちゃんから七色のダイヤモンドを受け取った。


 その後、彼女は宝箱に距離を保ちながらも近づいて爆弾を使って破壊し、七色のダイヤモンドを入手した。


 そして彼女はそれを入手した後、わざわざこちらに駆け寄ってきて、嬉しそうに報告してくれる。



「あ、ありました……! 本当にありがとうございます!」


「良かったね、これで目標達成だ! あとは帰るだけだけど……帰還の指輪は持ってる? 出口まで送ろうか?」


「い、いえっ、持ってるので大丈夫です!」


「そっか。なら、私はそろそろ帰るね。会えて嬉しかったよ! またいつか会おうね!」



 そう言って私は、帰還の指輪を起動する。


 本当ならもっと彼女とお話ししたいし、なんなら抱きしめたいし首筋の匂いを嗅ぎたいし足も舐めたい。


 だからこそ、理性の働くうちに帰る必要がある。



(彼女とは出会ったばかりだけど、この少しのやりとりだけでも純朴な女の子だと分かった。だからこそ、この子はこれ以上私と関わるべきじゃないんだ……私の事なんて忘れて、健やかに育っておくれ)

 


 そうして、私の体がその場から消えようとしたその時。



「ま、待ってください! お礼をしたいので連絡先を……」



 そんな、彼女の声が聞こえてきた。


 しかし、私の視界は光に包まれて、気づくと地上に戻っていた。



(これで……良かったんだよね。今日はなんだかかっこいいお姉さんが出来た気がするし、素敵な思い出として、胸の奥にしまっておこう……)



 そう自分を納得させて、自宅に帰った。



「ただいまー」



 そうして、Y(旧ツブヤイッター)に『配信中にトラブルがありましたが無事です、明日も配信します』と呟きながら帰宅し、玄関の扉を開いた。


 すると、そこには……



「き、来ちゃいました……えへへ」



 先ほど別れたはずの白髪ハーフアップフリフリドレス幼女ことルルちゃんが、なぜか立っていた。



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