第10話 ゴスロリ戦線下着ナシ
ドリアードを倒す代償として配信用のカメラと衣服を失い、ダンジョン配信者から高校生痴女へとジョブチェンジした私達。
そんな中、これからどうするべきかと聞いてきた奈良咲さんに応えるべく、私は返答をする。
「とりあえず『知識の実』は見つかりましたし、カメラは壊れてしまったので地上に帰るのが良いと思います……けど、どうやってこれを持って帰りましょうか?」
「あ、そういえばテスト対策に頭が良くなるアイテムを探して来たんだっけ。アタシ完全に忘れてた……でも、それなら普段に『知識の実』を鞄に入れて『帰還の指輪』で帰るだけでよくない?」
「『知識の実』に関してはそうですが……問題は、この姿のままダンジョンを出た場合に服が戻るかどうかが不明という点です。流石に裸のままダンジョンを出た経験はないので、このままダンジョンを出るのは色々とリスクがあります」
「確かに……てか、もしこのままダンジョン出て服が戻らなかったら、もしかして逮捕……!? あたし達刑務所行き!?」
「け、刑務所はともかく、補導はされると思います……仮にダンジョンで服を探すにしても、このまま歩くのは抵抗ありますし……どうしましょうかね?」
そんな風にして、私と奈良咲さんがどう警察のお世話になる事を回避するかするかについて頭を悩ませていると、委員長が口を開いた。
「服なら私が予備を持っていますよ。今取り出しますから少々お待ちを……」
彼女がそう言った瞬間、彼女のすぐ真横にワームホールが出現した。
そして、そこに
「いいんちょー、なにその黒い穴!? てか、手入れていいの!?」
「これは『収納用ワームホール』です、ダンジョンで拾ったものなので手を入れても問題ありません……というか、あまり大きな声を出さないでください。もし声に釣られて誰か来たら、この痴態を見られてしまいますよ」
「……いいんちょーにも恥ずかしいって感情とかあるんだねー。今もぜんぜん身体を隠そうとしてないし、気にしないタイプかと思ってた」
「どう言う意味ですか! というか、服を探すのに手が空いていないだけで隠せるなら隠します! 良いから目を逸らしなさい……ああでも、ワカナさんの方も見てはいけませんよ!」
「注文が多いねぇ!?」
そして、そんな二人の会話を聞きながら委員長が服の予備を出してくれるのを待っていると、彼女はすぐにそれを見つけだして、私の元に差し出してきた。
「ええと……これです、見つかりました。さぁワカナさんコチラをどうぞ」
そうして、委員長に手渡されたのは、彼女とお揃いのゴスロリであった。
しかし、いざそれを手に取ってみると委員長のものと比べて、やたらとスカートの丈が短くなっている事に気がついた。
そして私は、その事について彼女に質問を投げかけた。
「あ……あの、これ、なんだかスカートが短くないですか? 委員長が着てたやつの半分くらいしかないんですけど……?」
「すみません、ワームホールの容量の限界までアイテムを詰めていたので、ロングスカートは入らなかったんです。でも、ミニスカートなら丈が短い分ギリギリ入りましたので、予備の服はそれしかないんです」
「そんなに都合よくミニスカートだけが入ることなんてあるんですか……!?」
「まあ、確かにかなり短めですから少々抵抗はあるかもしれませんが、ワカナさんなら絶対に似合いますから! 大丈夫ですよ!」
そして、そんな委員長の言葉を聞いて、改めてそのミニスカゴスロリを見つめる。
(まぁ、そもそも借りれるだけでもありがたいし、これしか無いなら仕方ないよね……)
なんて思ってたら、いつの間にか目をギンギンにして若干興奮した様子の委員長さんが言葉を続けた。
「あと、申し訳ありませんが下着の予備は私の使用済みの物しかありません……でも、こんな時ですから仕方ないですよね! さぁ、どうぞワカナさん! 私と下着を共有しましょう!」
そうして、委員長はそう言うと、畳まれた黒い布地の上下セットを渡そうとしてきた。
それに対して私は、若干の恐怖を覚えながらもはっきりと拒否する。
「え、遠慮します! とりあえず服があれば十分ですから!」
「しかし……スカートも短いですし、一歩間違えたら大惨事ですから、せめて下だけでも……」
「下はなお結構です! あとは家に帰るだけですから!!」
「……そうですか。でも、遠慮しなくていいんですからね?」
そして私は、なんだか不服そうな委員長から目を逸らすようにして、急いで渡された服を着た。
その後、私は改めてスカートの丈を確認する。
(……これ、やっぱり短いな、完全に膝出てるし……これ、ほぼ女児服のスカートでしょ……幼女以外が履いたら変態認定される丈じゃない……?)
そうして、私が人生初のゴスロリミニスカートになんだか落ち着かず、一人ソワソワしていた頃、奈良咲さんと委員長さんの会話が聞こえてきた。
「貴女に渡せる予備も一応ありますけど……まぁ、貴女は私服でも露出度が高そうですし、お貸しする必要はないですかね」
「必要だよ! てか、いつも着てる服もお腹と背中と足くらいしか出てないし!」
「……話を聞く限り、普段から布地の方が少なそうですが。まあ、着るというならこれをどうぞ」
そうして、奈良咲さんに手渡されたのは私と全く同じデザインのゴスロリであった。
その後、手渡されたそれを着始めた奈良咲さんと、自分の分を着始めた委員長はすぐに装備を整えて、私達三人は露出狂からゴスロリ隊へと進化を遂げる。
そして、それを見ていた私はふと思った。
(二人とも似合ってるな、やっぱり顔がいいと映えが違うね……というか、あとはダンジョンから出るだけか。でもこれで外出るの勇気いるなぁ……歩幅とか気をつければ中までは見えないよね……?)
そうして、私が慣れなすぎるスカート丈に意識を向けていた頃、奈良咲さんが話しかけてきた。
「そーだ、ワカナちゃん! カメラとかの配信機材が使えなくなっちゃったから、買い直すまではワカナちゃんのを使わせてもらえないかな?」
「あ……そうでしたね。じゃあ、次回からは私の機材を持ってきますね」
「やっぱ配信者同士だとこういう時助かるねー、ワカナちゃんが配信者してくれてて良かったー!」
そうして、私達が業務連絡をしていると、委員長がスッと会話に入り込んできた。
「では、機材なら私も持っていますから、その時々で都合が良い方が用意する事にしましょうか」
そして、それを聞いた奈良咲さんは驚いた様子で返答する。
「へ? いいんちょー、あたし達の配信に着いてくるの?」
「当然です。ワカナさんの裸体も守れない人にワカナさんを任せられませんから」
「あたし達、カップルチャンネルなんだけどなぁ……」
「まぁ、断られても後ろから勝手に着いていきますけどね」
そうして、断固譲る様子を見せない委員長を見た奈良咲さんが、私に話しかけてきた。
「ワカナちゃん、どーする?」
「ま、まあ実力は確かでしょうし……なによりカップルチャンネルを始めたのも登録者を伸ばす為ですよね? なら、人気配信者である委員長の力を借りるのも、奈良咲さんの登録者を伸ばす手段の一つかと」
私は友達作りの為に配信者を始めたから、奈良咲さんと仲良くなれた地点で半ば目的を達成済みだけど、彼女はそうじゃ無いはず。
奈良咲さんの為にも、こっちの方が良いはずだ。
……なにより、後ろから着いてこられても怖いし。
「そっか……まぁ、ワカナちゃんが良いならそうしよっか。ワカナちゃんの登録者も伸びるだろうしね! それじゃ、今日は帰ろっか!」
そうして、三人揃って帰還の指輪を起動し、ダンジョンから脱出しようとしたその時。
「そっか、カップルチャンネルできて浮かれてたの、あたしだけかぁ……」
奈良咲さんが発したそんな言葉が私の耳に届いてきた。
しかし、その独り言に返答するべきかどうかを悩む間もなく指輪は起動し、そのまま解散となった。
そして、知恵の実を手に入れた奈良咲さんの補習結果は……
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