第9話 まーた服溶けてるよこの人たち……
私が触角付き幼女と『なかよし』する為に彼女の元へと近づこうとした時、奈良咲さんが私の背後からしがみついてきた。
「ワカナちゃん!? 行っちゃダメ! 触角生えてるしあの子、絶対モンスターだよ! よく見るとなんか奥に歯の生えたラフレシアみたいなの生えてるし!」
「わ、私は行かなきゃいけないんです! だって目の前にこんなに可愛い幼女が居るんですよ……!? その子が仲良くしたいって言うんだから、なかよしにならないなんて、そんなのあり得ませんよ……! そんなの人間の行動じゃないです止めないで下さい……! うへへぇお姉ちゃんが今行くからねっ……!」
「なんかワカナちゃん凄い喋るね!? あと目が怖いよ! 正気に戻って!」
そして私は、合法的な幼女触れ合いコーナーへと向かうべく全力を発揮して、腰に抱きついてきている奈良咲さんごと引きずり幼女へと向かう。
そうして、そのまま幼女の側へと辿り着いた私は淑女の嗜みとして微笑み《ほほえみ》を浮かべながら、彼女に優しく話しかける。
「ま、待たせちゃってごめんねぇ……ふ、ふひひ、お姉ちゃんと遊ぼうねぇ……何して欲しい? お姉ちゃんがなんでもしてあげるからねぇ……」
「うれしい……! じゃあ、おねぇちゃんに、ぎゅーってしてほしいな?」
「ぎゅー!? つまり抱きしめていいって事……!? い、いいの……!? ふへへ……で、では失礼して……」
そして、そんな幼女の思いに応えるべく彼女に近づいたその瞬間、突然彼女の口が裂けて、そこから大量の緑色の液体がこちらに向かって放出された。
それを見た私は本能的に回避行動に移ろうとした……しかし。
「あああ幼女がっ裂けたっ……! いやまずは攻撃回避を、って重っ……!」
目の前の幼女しか見ていなかった私は、腰に奈良咲さんがしがみついていた事をすっかり忘れていて、つい身軽な自分を想定したまま回避しようとしてしまった。
その影響で背後にうまく飛び退けず、地面に腰をついた私と今なお腰にしがみついている奈良咲さんは、放たれた液体を全身に浴びてしまった。
そして、次の瞬間、奈良咲さんが私の腰から手を離すと、彼女は自らの体についた液体を必死に剥がそうとしながら慌てたような様子で声を上げた。
「うえぇっ! なんか服が溶け始めてるんだけど! このままだと裸が配信に映っちゃう!」
そして、奈良咲さんが声を上げたその瞬間、その声を聞いた委員長が奈良咲さんの近くで浮遊していたカメラへと一瞬で飛び込んできて、瞬時にそれを破壊した。
その後委員長は、私と奈良咲さんを持ち上げて幼女から距離をとると、得意げな顔を浮かべながら私に話しかけてくる。
「ワカナさんの裸体は私だけのものです! 何があろうと周囲の目には絶対に晒させませんからご安心を!」
「私の裸体は決して委員長のものではないですけど……と、とりあえず、ありがとうございます?」
そうして、自らの肉体の所有権を主張しつつお礼を言った後に改めて奈良咲さんに視界を移すと、彼女が叫んでいた通り服の一部が溶けて、その姿は既に配信には映せない感じのものになっていた。
そして、それを見た私は自分の姿も確認する。
「やっぱり私の服もだいぶ溶けてる……! でも、先にモンスターを!」
そうして私は、ナイフを鞘から取り出し構えた。
そして、それを見た委員長が私に話しかけてくる。
「ワカナさん、あのモンスターについて、何か知っていませんか? 倒すヒントがあると助かるのですが」
「……おそらくアレは『ドリアード』だと思います。美少女に似せた疑似餌で人間を呼び寄せた後、本体がその人を捕食するモンスターです。おそらく先程の攻撃で防御を強制的に無効化させた後、攻撃してくるはずです」
「なるほど。つまり、一発目で服を溶かして二発目で攻撃してくる……と。ならば、二発目さえもらわなければ問題ないですね」
そして、私が委員長の問いに答えた瞬間、彼女はチェーンソーのスターターを引っ張りあげて回転する刃を起動し、改めて私に語りかけてきた。
「ここは最短で決着をつけましょう。私が道を切り開きます、ワカナさんはその隙に本体をお願いします!」
「で、でもこのまま攻撃しに行ったらダメージを受けるリスクがありますし……それに、委員長まで服を溶かされてしまいますよ?」
「問題ありませんよ。ダメージに関しては二発目を貰う前に切り刻めば良いだけですし……そしてなにより、いつまでもワカナさんを裸のままで居させる訳には行きませんから!」
委員長はそう言うと、口が裂けた幼女の元へと走り出した。
それに対して幼女は先程と同じように、緑色の液体を委員長に向けて放出する。
しかし、彼女はそれをもろに浴びながらも奇声をあげながら勢いそのままに、幼女を切り刻んだ。
「イヒヒヒッ!! これでお前もバラバラぁッ!」
そうして、私よりも大量の液体を浴びたせいか、既にゴスロリがすべて全部溶けきってしまった素っ裸の委員長が液体の中から出てくると、彼女は声をあげた。
「さあ、ワカナさんは本体を!」
そうして私は、ドリアードの本体である歯の生えたラフレシアの元へ飛び込んで、心の底から出てきた恨みつらみをぶつけた。
「私の……私の、ただ幼女と仲良くなりたいと願うだけの純心を弄んで……! 許さないっ!」
そうして私は、邪悪なラフレシアことドリアードの死体が消えるまで何度もズタズタに切り刻んだ。
(許さない……! 許さない……! 許さない……! 私の幼女を返してよ……!!)
そんな風にして、心の声が導くままにドリアードに向けてナイフを振るっていると、それを見ていた奈良咲さんと委員長さんの声が私の元へ聞こえてきた。
「ワカナさん、なんて素敵な目……!」
「えー! 普段のワカナちゃんの方が絶対可愛いよー! てか、そろそろ止めないと! もうモンスター消えかけてるし、あんなに腕振ってたら痛くなっちゃうよ!」
そして、二人の話を聞きながらも、存在しない幼女で一本釣りされた恨みに飲まれてしまいドリアードを切り刻む手を自らの意思で止められなかった私は、肩を奈良咲さんに掴まれる事でようやくナイフを握る拳をほどく事ができた。
そうして私は、ドリアードと戦闘していた時間で完全に服が溶け切ってしまった奈良咲さんに、正気に戻してもらったお礼を伝えた。
「と、止めてくれてありがとうございます。切り始めたら何かこう、心の底から色々と出てきてしまって……自分では止められなかったんです」
「色々? あー、ワカナちゃん、子供好きって事? たしかに、子供の姿で出てきて騙すなんて卑怯だし、許せないよね! 分かる!」
「あ、えっと、子供が好きと言いますか、なんと言いますか……まあ、はい、そんな感じです、はい」
おそらく、彼女の言う『
(でも、それを説明したら確実に引かれてしまうので説明はしません。決して)
なんて私が思っていた頃、奈良咲さんが改めて口を開いた。
「それで……今のあたし達完全に痴女だけど、どうする?」
そう言われて、私は二人の姿を確認した後、自らの体に視線を向けて現状を見た後にもう一度、顔を上げる。
そうして確認できたのは完全に服が溶け切ってしまいすっぽんぽんになった、三人の痴女であった。
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