第5話 変態……?
琥珀蛇に襲われそうになった瞬間、ゴスロリ姿の委員長さんが私達の前に現れて、蛇の首を切り落とした。
そして、そんな彼女は私の体を上から下まで一通り眺めると、小さく呟いた。
「仁堂さんの
「……つっっ!!」
その言葉を聞いた瞬間私の両手は反射的に動き、その貧相な体を覆い隠していた。
これ変態って思われてるよね……! 体隠す前にまずは説明しなきゃなのについ……!
(いやその前に私の体なんてなんのエンタメでもないんだから、そんなに見なくていいよ!)
なんて私が考えていた頃、ハッとした表情を浮かべた委員長さんは、慌てた様子で口を開いた。
「あっ、違くて……んんっ! ぐっ、偶然ね! こんな所で! 仁堂さんは何をしていたのかしら……!?」
「えっ、あっ、お、温泉に入ってたんです! だから裸なんです、変態とかじゃないんです!」
「わ、分かってるわ! 私も配信見てたんだから!」
「へ……? 見てたんですか? でもさっき偶然って……」
「あっ……」
そうして謎の会話が続いたタイミングで、こちらに戻ってきた奈良咲さんが話に入ってきた。
「あれ、いいんちょーだ! なんでここに居んの? てかなんでゴスロリ!?」
「……やっぱり奈良咲さんも居たのね」
「あ、もしかして、私たちの配信見てお風呂を覗きにきた感じ? 委員長やるねー」
そうして、モンスターの登場で戦闘のスイッチが入ったせいか、先ほどのしおらしさから立ち直った様子の奈良咲さんは、
そして委員長は、より慌てた様子でこちらに弁明してきた。
「ち、違うわよ! 決してお風呂を覗きにきたとかじゃなくて、私はただ仁堂さんを見守らなきゃって……本当なの、仁堂さん!」
そんな慌てる彼女の様子を見て、私はなんだか少し冷静になってきた。
私もとりあえず話を聞きたい……が、その前に言わねばならない事がある。
「あの……とりあえず、服を着ていいですかね……?」
そうして私と奈良咲さんは服を着直した後、委員長と再度向き合った。
そして、私がどう話を切り出すか迷っていた頃、奈良咲さんが委員長に語りかける。
「それで、いいんちょーはなんでダンジョンに居るの? お宝探し?」
「そんなの貴女から仁堂さんを守る為に決まってるでしょう!」
委員長はそう言うと、私の方に視線を向けてきた。
あ、このタイミングなら会話に入れるかも……!
「あ、えっと……私を守る為って、どう言う事ですか?」
「仁堂さん。理由は分からないけど貴女はきっと、この女に何か弱みを握られて強引にカップルチャンネルをやらせられているのよね! ファン一号の私には分かるわ!」
ファン一号……? 確かにいつ配信しても一人は配信を見てくれる人は居たけど……
あ、そういえば奈良咲さんを助けた日も同接一人だったな……もしかしてその一人が委員長さん?
なんて私が過去を思い返していたら、奈良咲さんが言葉を返した。
「えーっと、つまりいいんちょーは、若菜ちゃんの追っかけって事?」
「追っかけじゃなくて『ファン一号』よ、チャンネル登録だって私が一人目なんだから! そんな私からすれば仁堂さんが無理やりカップルチャンネルをやらされてる事くらい分かるわ、だから助けに来たのよ!」
「え、それでダンジョンまで追っかけて来たの? めっちゃ強火ファンじゃん。いいんちょー怖っ」
「別に怖くないわよ失礼ね! でもその
委員長はそう言うと手に持った巨大チェーンソーのスターターを引っ張りあげて起動した。
その瞬間、回転する刃の奏でる凶悪な音が周囲に鳴り響く。
……って、奈良咲さんって赤の女王って呼ばれてるの? なにそれかっこいい、いいなぁ……
「てか、そのチェーンソーで思い出した! よく見たら配信者の『虐殺の黒姫』じゃん! 登録者百万超えてたよね! なんでそんな大物配信者がこんなことしてんのさ!」
「だから仁堂さんを助ける為って言ってるでしょう、覚悟しなさい! というか仁堂さんと最初にコラボするのは私のはずだったのに! 仁堂さんの初めてを返しなさいよ!」
「知らないよー! てか若菜ちゃん、見てないで助けてー!」
私も二つ名みたいなの欲しい……でも自分で名乗るのは恥ずかしいから私の知らない所でこっそりかっこいい名前で呼んでほしいな……
って、そんな事思ってる場合じゃない! 奈良咲さん追いかけられてるし、とりあえず止めないと!
「まっ、待ってください委員長さん!」
そうして私が間に入り込むと、若干目がキマッていた委員長さんは慌ててチェーンソーを停止させて、私に話しかけてきた。
「な、何故止めるんですか!? あ、後の事が不安なんですね、なら大丈夫ですよ! 例え仁堂さんがどんな秘密を握られてたとしても私がこの女と関係者を全員バラバラにして、全部無かった事にしてあげますからね!」
「ち、違うんです! そもそも私は別に弱みを握られてるとかじゃないんです!」
「じゃ、じゃあ何故カップルチャンネルなんてやっているんです? まさか本当にこの女狐の事が好きで……?」
まぁ、始まりに関しては陽キャの勢いに巻き込まれただけだから、あんまり強くは反論しにくいけど……
でも、子供助けるために命張るくらい勇気あるし脱いだ服ちゃんと畳むし、何より私の事好きって言ってくれるから正直めちゃくちゃ好きだなって思ってるし……
あっ、しかもなんか奈良咲さんがワクワクした目でこっちを見てる……! そんな目で見られたら、流されただけなんて言えないよ……!
「そ、そうです。す、すす、好きだから、です」
「そ……そんな……」
そうして、ショックを受けた様な表情で動きを止める委員長に、奈良咲さんが語りかけた。
「てか、あたしが若菜ちゃんいじめるなんてありえないし! あたしも若菜ちゃん大好きだもん!」
そっか……奈良咲さん、チェーンソー向けられながらでも反論するくらい私の事好きなのかぁ……へへ。
なんて私が嬉しさを噛み締めていた頃、奈良咲さんの言葉を聞いて、わなわなと体を震わせていた委員長はガバッと顔を上げて口を開いた。
「認めない……」
「へ?」
「……絶対に認めないわ! 私の仁堂さんは恋人なんて作らないんだからぁ!」
そう言うと半泣きになった委員長は、指につけた帰還の指輪を起動し、すぐに姿を消してしまった。
そして、残された私は奈良咲さんと顔を向き合わせた。
「な、なんだったんでしょうね……」
「……若菜ちゃん、モテるんだね」
「へ!? そ、そんな事ないと思いますけど……」
当然今まで恋愛経験とか無いし、なんなら友達も居なかったし、そんな私がモテるわけがない。
だから、なんか委員長が特別に変な人だっただけなんじゃないかな……多分。
なんて思ってたら、いつの間にか奈良咲さんは自分の世界に入り込みながら、小さな声で何かを呟いていた。
「てかそうだよ、これだけ強いのに偉そうにしないし、そもそも命かけて私を助けてくれたくらいだし、若菜ちゃんの良さが気づかれるのは時間の問題だったんだ、あたしなんで気づかなかったんだろ…… 」
「……奈良咲さん? 大丈夫ですか?」
「え!? あ、うん! へーき! あたし、若菜ちゃんに好きになってもらえるように頑張るからね!」
「は、はい……?」
そんな会話の後、この後の事を話し合った結果今日は色々ありすぎたので一旦解散し、後日ダンジョン配信の続きをする事となったので指輪を使い帰宅し、そのままその日は解散となった。
……そして翌日、奈良咲さんは思わぬ悲劇に遭う事になる。
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