陰キャ女子高生が脱ボッチ目指して人気ダンジョン配信者になろうと思ってたら人気になる前に強くなっちゃったし、クラスのギャルを助けたら何故かカップルチャンネルをやりながらダンジョン配信する事になりました。
第2話 バズり散らかしインキャオタク女、ギャルとの邂逅
第2話 バズり散らかしインキャオタク女、ギャルとの邂逅
ギャルからの逃亡に成功した翌日。
いつも通りに登校し教室内にて席に着いた頃、私はふと昨日のことを思い出していた。
(奈良咲さん、今日も学校に来てるのかな……? 来てるよね……ギャルって基本的に学校休まないし……)
そして私は、クラスにお喋りする友達も居ないので、いつも通りにスマホを取り出す事にした。
その時、彼女は現れたのだ。
「あ、若菜ちゃんだよね! ちょっといい?」
「ひゃっ、ひゃい! 何でしょうか!?」
その着崩した制服の中でも特に目立つ短いスカートと長い金髪の髪を揺らしながらこちらに迫ってくるその人は、まさに昨日見たギャルそのものであった。
そして、彼女は私のそばに来ると、昨日と同様に眩い笑顔を浮かべながら喋り出した。
「やっぱ若菜ちゃんだ! ね、昨日の事覚えてるよね! ほんっとにありがと! あたしだけじゃあの子の事、絶対助けらんなかった!」
「は、はい!? き、きき、昨日ですか!?」
「うん! 昨日は結局、指輪使って帰ったんだけどさ、助けてくれた人どっかで見たことあるなーって思ってて、よく考えたら同じクラスじゃんってなってさ!」
「な、なるほど……?」
「したら直接お礼言えるじゃんね! 気づいた時めっちゃ運命感じたわ!」
「そ、そうですね……?」
どうしよう、話のペースが早い……ずっと頭に『?』浮かんでる……
というか、いつの間にか雑談始まっちゃった……なんでぇ……
「若菜ちゃんもダンジョン潜ってるんだよね! やっぱ一番奥にあるって言われてる『聖杯』が目的? それとも別のレアアイテム目当て!?」
「あ、あっ、えっと……」
「あ、ごめん! 一人で喋りすぎたかも! テンション上がっちゃって、つい」
「そ、そうなんですか……あはは」
……絶対上手く会話できてない! とりあえずなんか言わないと……!
「ま、まあ……ダンジョンには潜ってますけど、配信までする必要はないかも知れませんね……同接一人でしたし……」
何でそんなひねくれた事言うの私……! せっかく向こうから来てくれたのに……!
「え? 昨日の夜、若菜ちゃんのアカウント見たけど登録者結構居なかった? 同接千人くらいは居てもおかしくないなーって思ったけど」
「……へ?」
そう言われて、ちょうど手にしていたスマホを操作して自分のチャンネルを見る。
その結果、私は衝撃的な光景を目にすることとなった。
「登録者、五万人……!? なんで……!?」
「昨日から増えっぱなしだけど、若菜ちゃんの強さにしてはむしろ少ないくらいじゃない? あの速度でキングオーク倒してる人なんてあたし見た事ないよ?」
なんか数字が異常繁殖してる……!!
昨日まで十人くらいだったのに……! なんで……?
「昨日の若菜ちゃん凄かったってうちのリスナーも言ってたし、もっと自信持ちなよ!」
「へ? り、リスナー……? 奈良咲さんも配信者なんですか……?」
「そだよ! アスカって名前で配信してるんだけど……って、それは後でいいか。昨日はダンジョン配信してたらなんか子供見つけて、地上に戻ろうとしてた時に襲われて困ってたからマジで助かったよー。若菜ちゃん居なかったらあたし百パー死んでたし!」
「……ちなみに奈良咲さんは、どれくらい登録者居るんですか……?」
「あたし? 五十万ちょいだったかな?」
すごい人数……あの時、どっかにカメラとかあったんだ。逃げるのに必死で、全然気が付かなかった……
じゃあ昨日の事が奈良咲さんの配信に乗ったのが登録者が増えた原因だ……! 私、バズったんだ!
(これ、もしかして友達ができるチャンス!? ついに私もぼっち卒業!?)
……なんて思ってたらいつの間にか奈良咲さんのお友達が三人も近づいてきて来て、囲まれてしまっていた。
ひいぃ……ギャルが増えた……! 喜んでる暇もない……!
「お、明日香がウチら以外と喋ってんの珍しーじゃん、なんかあったん?」
「昨日ダンジョンで助けてもらったの! 若菜ちゃん凄いんだよ! 昨日なんてキングオークを一人で倒しちゃったんだから!」
「いやウチらそっちの話されても分からんし! ま、明日香が褒めてんだから凄いんだろうけどさ」
ひいぃ……ギャルの群れに囲まれてしまった……! 髪色がみんな眩しくて目が爆発しそう……私はここで死ぬんだぁ……
なんて思っていた頃、奈良咲さんとギャルの群れは相変わらず会話を続けていた。
「んで、礼言い終わったのに話してるって事は、まだなんか用事あんじゃないの?」
「あ、そうだった! 若菜ちゃん、登録者伸びてるけど、もっと伸ばしたいよね! ね!」
なんか私の方に来た……! へ、返事しなきゃ……!
「の、伸ばしたい、です……?」
「じゃ、あたしとカップルチャンネルやろ! バズってる今がチャンスだよ!」
カップルチャンネル……?
カップル……チャンネル……??
そんな風に、あまり聞き覚えのない単語を受け入れられないでいると、お友達の一人が奈良咲さんに話しかけていた。
「女同士でカップルチャンネルとかウケんの?」
「分かんない! でもバズりそうじゃない? ダンジョン配信でカップルチャンネルって珍しいし!」
「ほーん。ま、明日香の趣味は知らんけどアタシのケツは触らせねぇからな」
「今あたし、若菜ちゃんにしか興味無いから結構ですー」
……ずっと何の話してるの?
「若菜ちゃんはどう思う? ダンジョン配信者でカップルチャンネル! 絶対バズるよね!?」
またこっち来た……!
「ははは、はい!! 良いとおも、思い、ます……かね? へへ……」
「だよね! じゃあ今のうちに事務所に連絡してくるね! じゃあ今日の放課後時間ある? 早速ダンジョン行こ! コラボ配信、良いよね?」
「あ、はい……はい?」
「やった! じゃあ配信中はあたしの事アスカって呼んでね、あたしは若菜ちゃんの事ワカナって呼ぶから……ってこっちは変わんないか! じゃ、連絡してくるから、これからよろしくねー!」
そうして、私の理解を置きざりにした彼女はギャル特有の行動力を発揮して、スマホを片手にどこかへ行ってしまった。
事務所に連絡って、なんか大ごとになってる……?
「相変わらず明日香、飛びつくの早ぇー。ま、アタシもよく分からんけど応援してっからさ、頑張んなよ!」
そして、ギャルの群れに居る一人が私にそう伝えると、彼女たちはすぐに撤退していった。
「友達作ろうとしてただけなのに何でこんな事に……とりあえずY(旧ツブヤイッター)でも見よ……」
そして私は心の安寧を取り戻すべく、キラキラが控えめのSNSを開く。
そうして、ぼっちオタクライフを楽しもうとした瞬間、黒髪ロングで背の高い、クラスの美人委員長さんが話しかけてきた。
「仁堂さん、ちょっと良いですか?」
「あっ、えっと……委員長さん、ですよね……? どうしたんですか?」
そして彼女は髪を自分の耳元へ寄せながら、私の耳元に近づいてきて小さく呟いた。
「余計なお世話かもしれないけど、虐められたりしてないですか? 私でよければ力になるから、何かあったら言って下さいね?」
あ、この人いい人だ。
顔も髪も綺麗なのに性格までいいんだ……委員長の事知らなかったし、なんなら今も名前すら知らないけど、レア度SSRの覇権キャラなんだ……!
「あ、ありがとうございます。でも、大丈夫です……今のところは……へへ」
「分かったわ、でも、一人で抱え込まないでいいんですからね?」
そうして、私が優しさに包まれている事を自覚してなんだか優しい気持ちになりながらも時間は進み、放課後を迎えた。
そして私は、委員長から向けられているなんだかねっとりとした視線に気づかないまま、奈良咲さんとのコラボ配信を行うべく、ダンジョンへと向かった。
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