第27話 嵐の前の静かさ

 ◇AM6:30


「...」


「おい、鷺ノ宮、聞いてんのか?」


「え?ナンスか?」


「いや...大丈夫か?すげーぼーっとしてたけど」


「あぁ...ちょっと考え事してました。それでなんでしたっけ?私のパンツの色でしたっけ?」


「いや、そんな話はしてねーよ」


「ちなみに白ですwどうです?w興奮しました?」


「しねーよ...」


「実物見ないと興奮しないってことですかぁ?w仕方ないなぁ...w」と、スカートに手をかけてバッと勢いよく下す。


「おまっ!!バカ!!//」


 しかし、そこはバスケット少女。

当然、いつも下にはジャージを履いているのだ。

まったく、先輩はこんな些細ないたずらでも一喜一憂して...かわいいなぁ...。

てか、なんかすーすーするんだけど。


 そうして、ちらっと自分の下半身を見ると...そこにはジャージなんてなかった。

そうだ...今日は朝練休みだから履いてこなかったのだ。


「!!!!/////」と、一瞬でスカートを戻すが当然先輩にはガンミされているわけで...。


「お前...痴女なのか!?」と言われてしまう。


「...ち、違いますから!//今のは事故で!!//」と言い争っていると、体育館の扉の隙間から覗いている4つの目...。


 神田と岡崎である。


「なっ!!//」


「いやぁー...いいもん見れましたわ」と、言いながら入ってくる。


「...てか、先輩と鷺ノ宮って...そういう関係なんですか?」


「「違うわ!!」」


「...忘れなさいよ?//」と、そう小声で言われるのであった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093079570638077


 そんなハプニングを終えて、本日も一日が始まるのであった。



 ◇


「...あっ、祐樹くん...こんにちは?」


「うん、こんにちはかな?」


「今日もよろしくお願いします」と、律儀に頭を下げる。


「いやいや、世上さんに教えることとかないからなぁ...」


「あのさ...そろそろ凪咲って呼んで欲しいな」


「え?あぁ...うん。き、気が向いたら呼ぶかな」


「そっか...気が向いたら...か」


「ごめん。女の子を名前で呼ぶことないから抵抗があるっていうか...」


「そんなんじゃ、彼女ができた時困るぞー」と、マスターが話に割り込んでくる。


「ちょっと、入ってこないでくださいよ...マスター」


「ここは私のお店だからね?」


「そ、そうですけど...」


「ま、まぁ...その...祐樹何が嫌なら...大丈夫だけど...」と、上目遣いでそんなことを言ってくる。


 いやいや、そんな顔されたら...いやとは言えないよ...。


「...じゃあ...名前で呼び合おうか」と、そう言った瞬間、扉が開く。


 まだお店の開店時間ではないのだが...。


 そこに立っていたのは鷺ノ宮であった。


「あっ、この子知ってる。確かバスケの子だよね?...って、もしかして2人の知り合い?」


「...鷺ノ宮」


「私が知らない間にこんなところで2人でバイトしてたんですね」


「わ、私はマスターに誘われたから始めただけで...」


「いや、別に?私に何かを言う権利があるわけじゃないですけど」


「...」と、気まずい空気を察したマスターが「とりあえず、座ってコーヒーでも飲む?」と、そういうのだった。



 ◇5分後


「...何でここでバイトしてるって知ってんだよ」


「あの男から聞いたんですよ。東山ってやつ」


 全員が全員、またあいつかというリアクションをする。


「私の周りには最近現れてないけど...」


「そーですか。けど、諦めたっていう感じではなかったですよ。明らかに。私の周りをちょこちょこうろついているくらいですからね」


「...ごめんなさい」


「別に。あなたが悪い...面もあるのかは知りませんが、まぁ被害っていうほどのことはありませんから。あと、あいつやっぱ双子らしいですよ。最終的には兄と弟とあなたの3人で付き合う計画とか...。本当、気持ち悪いですよね」


「...何それ...あり得ないんだけど...」


「本格的に警察に相談したほうがいいと思いますけどね。ここで働いていることさえ知ってるわけですから」


「それは難しいと思うぞ。実際の被害がないと警察は動かないし」


「...随分物騒な話をしてるねぇ。ストーカー被害にあってるのかい?」


「それで?鷺ノ宮は一体何しにきたんだ?」


「別に?w先輩がアルバイトしてるところをバカにしようと思ってきたんですけど、そんな気分でもなくなったので、帰りますね。それじゃあ」と、言い残して鷺ノ宮は帰っていくのだった。


 そうして、静まり返った店内。


 これはまさに嵐の前の静けさなのかもしれない。

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生意気で天才な後輩女子に毎日バカにされていたので、架空の彼女をでっちあげ自慢したら病んでいった。そんなある日、架空の彼女の設定そのままの美少女が現れて...。 田中又雄 @tanakamatao01

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