第24話 バスケが楽しい
正直なところ、もし神田&岡崎ペアならきっと余裕で勝てただろう。
しかし、やっぱり俺がお荷物で自由に動くことできない神田。
腐っても強豪校の部活に残っているだけのことはある。
「...神田!パス!」と、何とかディフェンスを掻い潜りパスをもらおうとするが、あっさりとカットされてしまう。
「らっき!んじゃ、攻守交代ね」
そうして勝負は、6対7...1点ビハインド。もし3Pを決められようもんならその時点で敗北確定である。
3Pを警戒していると、あっさりと抜かれてしまう可能性がある...。
もし、6対8になればいよいよ限界ギリギリ...。
だから...3Pを警戒しつつ...ドリブルで抜かれないように立ち回る。
向こうもそれを察してか、無理な体制でシュートを打たず、パスを回すスタイルに切り替える。
「...っち」
これじゃあ、徐々にゴールに近づいてしまう...。
どこかスキが生まれれば...。
そんなとき...鷺ノ宮が言っていたことが脳裏によぎる。
『先輩はディフェンスの時、何考えてます?』
『そりゃ...相手の姿勢とか目線でどっちに行きたいかを見てる...』
『そんだけっすか?』
『あとは...味方がいれば味方の位置とか考えたりとか...』
『まぁ、流石に歴は長いだけあって、知識はありますねw45点ってところですかね。あとは選手の特徴、癖、意識の先...それに対してこちらが狙っていることを悟らせないフェイクを入れたりとか...そこまでできればまぁ合格ですかね』
『...そこまではできる気がしないんだが』
『まぁ、先輩は張り詰めた場面とかに遭遇したことないですもんねw限界ギリギリで見せた隙フェイクは結構使えますよ』
...そう...いまだ。
限界ギリギリのこの状況...。そうだ...この瞬間を俺は待っていた...。
少しだけ重心を左にしたように見せる。
すると釣られて右に移動し、無理やり3Pを打ってくる。
しかし、俺が入れたのはフェイクであり何とかジャンプし、ボールに触ることができた。
結果、エアボールとなり見事に神田がキャッチするのだった。
攻守交替...。
「はぁ...はぁ...」
これが勝負...。本気と本気のぶつかり合い...。
「...神田...。残りの3P分...俺が決める」
「え?マジっすか?行けるんですか?」
多分、人生初めてのゾーンってやつに入った。
相手の動きも目線も全部が見える。
なんだこの感覚...最高にバスケが楽しい!!
その後は一瞬であった。
ボールを渡されたのと同時に3Pシュートを放つ...。
それはまるでお手本として打ってくれていた...何度も見てきた鷺ノ宮のシュートの軌道そのままのシュート。
打った瞬間に入ることが確信できるほどのシュートだった。
「しゃああ!!!」と、コート上での初めての咆哮。
そのまま連続で攻撃となり、ボールをもらった瞬間に再度3Pの構えに入ると止めようと前に出てくる。
重心はやや右...。なら、クロスで左右に揺さぶり、そのままドリブルで二人を抜き...そのままレイアップできれいに決める...。
まるで映像で見ていたようなことができている感覚...。
前に言っていた鷺ノ宮のゾーンの言葉の意味...。ようやく理解ができた。
イメージの再現と、全能感...。
まるで自分が自分ではないような感覚に陥るのだった。
そうして、勝利すると女子どもは何も言わずに逃げるように体育館を出て行った。
「っはwざまぁねーなw」と、最後まであおる神田...。
鷺ノ宮と一緒にいすぎて、こいつもだいぶ毒されてしまったな...と感じるのだった。
そうして、俺は神田...そして岡崎とハイタッチするのだった。
◇
「まじで先輩すごかったんだから!まじで!」
「はいはい、すごかったんでしょうねーw」
「おい!ちゃんと話聞けよ、鷺ノ宮!てか、なんで来なかったんだよ!」
「今日はちょっとね。まぁでも、先輩は努力お化けですから。きっかけ一つで化けること自体はそんなに予想外ではないですけどね」と、ドライだけどしっかり俺をほめてくれる鷺ノ宮。
「...あんがとな」
「私はなんもしてないです。先輩の頑張りでしょ」
「いや...多分俺一人ならこんなことにはなってなかったと思う。神田も岡崎も...ありがとうな」
「「はい!!」」
バスケが...楽しい。今はただそれだけだった。
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