第22話 忍法

 バイトが終わると近くの公園で待っていてくれた世上さん。


「お待たせ...ごめんね...待たせちゃって」


「あっ、いやいや全然待ってない...よ?」


「...それで...話って?」と、さっそく本題に入ろうとする俺。


「あぁ...えっと...その...本当に...ごめんなさい」と謝られる。


「え?」


「いや...たくさん迷惑かけちゃったから...」


「それはもう大丈夫だよ。俺も...勘違いしてただけだから」


「...」


 無言の時間が流れる。


「また...こうしてたまに会って...話して...休日には...出かけたり...とか。もし良かったらその...バスケとか教えてくれたりしたら...うれしいかな」


「...うん」


 そうして、また無言の時間が流れる。


「あの...」と世上さんが言いかけた瞬間、「こんな時間に何してるんですか?」と声を掛けられる。


 振り返るとそこには...鷺ノ宮が立っていた。


「うっぉ!!びっくりした!」


「驚きすぎですよ」と、言いながらちらっと世上さんを見つめる。


「...鷺ノ宮さん...」


「私のことご存知なんですね」


「それは...テレビでも見たことあるし...。あっ、えっと...世上凪咲です...」


「まぁ、私もあなたのことは聞いています。あまりいい話ではありませんが」


「...ごめんなさい」


「謝罪は結構です。それで?こんなところで二人で何をしてたんですか?」


「いや...ただ話していただけだよ」


「...本当ですか?今にでも告白しそうな雰囲気でしたけど。こんな時間ですし、もう帰ったほうがいいと思いますけど」


「...そういう鷺ノ宮は何しにここに来たんだよ」


「別に。部活帰りの友達の家によって帰っていたところです。そしたら、先輩の姿が見えたので来ただけですけど」


「...なるほどね」


「仲直りできたようで何よりです。けど、私は正直あなたのことが好きではありません」


「おい」


「事実ですから。仕方ないです」


「...そう...だよね」


「はい。はっきりここで宣言しておきます。先輩は私のものですから」


「...おい。いつの間にお前のものになったんだよ」


「今この瞬間からです。なので「それなら...私は全力で奪うつもりで頑張るね...」と、世上さんはまっすぐとした目でそういった。


「その前にあなたはあの男をどうにかしたほうがいいのでは?」


「あの男?」


「私のところにも来ましたよ。色々とお話は聞きました」


「...まさか...」


「東山とかいう男です」


「...」と、言葉を失う世上さん。



「それっていつのことだよ」


「2,3週間前くらいでしょうか?あの人、どう考えても激やばですから」


「でも...2週間くらいはもう姿も見てないし...もう大丈夫だと思うけど」


「そんな簡単にあきらめる男には見えませんでしたがね」


「...」


「油断大敵です。まぁ、夜も遅いですしこのまま3人で帰りましょう」


 そうして、世上さんを送り届けたのち、鷺ノ宮と二人きりになる。


「先輩。先に忠告しておきます。あの人とは縁を切ったほうがいいと思います」


「...いきなりなんだよ」


「いえ。正確にはあの男...東山という男には要注意という...」


 そんな話をしていると、ちょうど目の前にその男と思わしき金髪男子が目に入る。


 奇妙な偶然に動揺している間もなく、俺と鷺ノ宮は黙り込んでしまう。


 だって...そこには、あの金髪男が二人...立っていたのだから。

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