第21話 久しぶりの再会
あれから2週間ほどが経過した。
あの一件以降彼が私の目の前に現れることはなかった。
これで彼があきらめるだろうか...。
そんな薄い安心を抱きながらも、とりあえず私はカラオケ屋に向かっていた。
何がともあれ一件落着となったので、1か月以上ぶりに私は佑樹くんに会いに行くのだった。
こんなに緊張しているのはいつぶりだろうか...。
もしかしたら拒絶されるかもしれない...。ううん。きっとされるはずだ。
それでも...私はもう諦めない。もし嫌われるのだとしてもちゃんと話したうえで嫌われたい。
そういう思いで私はお店の前まで来たのだった。
時刻はPM4:30。
常連さんが来るまでにはまだ時間がある。
そうして、扉に手をかけて...開くのだった。
「いらっ...」と言った瞬間に私に気づき言葉を失う。
「...久しぶり...」と、手を振ると「...うん」とだけ返答された。
マスターはそのまま暖簾くぐり、バックヤードに入っていく。
「...ごめんね...いきなり...来て...」
「いや...別に。大丈夫だよ...。謝らないといけないのは俺の方だから...。ごめん」
そんなまさかの展開に私は取り乱してしまう。
「な、なんで...佑樹くんが謝るの...?全部私が悪いのに...」
「そんなことない。あの時...ちゃんと話を聞くべきだったのに...」
「そんな...全然謝ることなんかないのに...」
「とりあえず...コーヒー飲む?」
「...うん。その前にさ...あの...あの時の私のお客さん...。佑樹くんのところに来たりしてない?」
「...若野 大地...だっけ?」
「...え?誰それ...」
「え?あの男の人...。自分でそう言ってたけど...」
「それっていつのこと?」
「え?うーん...2、3週間前くらいのことかな?」
「...そう」
確かに私に言った名前が本名...という確信はない。
そもそも若野大地も東山宗も自称でしかないのだ。
けど、なんのために偽名を...?身バレを防ぐため...?
「その時、なんか言ってた?」
「えっと...俺は彼女と付き合うことになったから。君のことなんて最初から眼中になかったとか...なんとか...」
「それ!嘘だから!」と、立ち上がって否定すると「うん。なんとなくあれは嘘なんだろうなとは思ってたよ」と、笑ってそう言ってくれた...。
前にも増して憎しみの感情が増えていく。
私があいつの彼女に?ありえない。そんなことを言いふらしていたことが憎くて憎くて仕方ない。
「ごめんね...。それ以外には何もされてない?」
「うん。大丈夫。世上さんのほうは大丈夫?何かされてない?」
「...ストーカーまがいのこととかはめっちゃされてたけど、今は...大丈夫。ビンタして二度とかかわらないでって言ってから2週間くらい経ったけど今のところ何もないし...」
「そっか。それならよかった」
やっぱ...優しいな。こうして、一緒に話している時間がただただ心地よい。
ずっと...この場所にいたい...。ずっと...ずっと。
「...バイトのあと...少しだけ時間もらえないかな?」
「...うん。いいよ」
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