第49話 たまには昔の話を

 「…ッ。おふざけで聞いてるんじゃ無いんだよね?分かった。」

購買で買ってきたパンを片手に、過去の出来事に思いを馳せるネネ。

「確かにアイドル自体は楽しかったし、結果も上々でね。ユニット活動も

成功してたから、このままトップまで行けるって思ってたんだ。でも、

上に行くに連れて分かった。まだパフォーマンスに限界がある年齢で。それに、

ちょっとずつではあるけど広がっていく個人での力量とか、ファン数の差とか…。

今でこそ輝いてる明知愛あけちあいっていう私の相方だけど、ユニットの時はアタシの方が

明らかにファン数が多くて。勿論、箱推しって言う人もいたけど…。

ある日、なんか申し訳ないなって思っちゃったんだ。愛に。変だよね?

ユニットであろうが食い合う世界なのに、譲歩じょうほする気持ちが出て来て。

その時に思った。これが危険信号なんだって。色々迷惑は掛けたから、

今更戻れない。戻ろうって気分も無いしね。…はい、これでどう?」

 我が強い割に優しすぎる。それが、彼女が降りた理由。アイドルの世界

自体を知らない。現に、初めて会った時、アイドルやってた事そのものも

知らなかった訳だし。話を聞いて納得はしてみたものの、何か腑に落ちない

部分があって多少のモヤモヤ感は残った。この感情を口に出す前に、

休み時間終了のチャイムが鳴る。このままにしておくのも、私がスッキリしない。

これはいつの日か、改めて向き合わせよう。そう心に決めた。

 変だな…。いつの間にか、契約を超えた関係になりつつある。

ネネも舞ちゃんも、最初は『使える』って感じだけで寄せ集めたのに。

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