第46話 音鳴る方へ

 「先に軽く自己紹介だけ済ませておくわ。私は因幡亜矢いなばあや、キーボード担当よ。」

福岡侑ふくおかゆう。亜矢とは幼馴染でね、ここではギター担当だよ。」

「…武蔵李穂むさしりほ。ドラム。」

黒髪ロング、男装の麗人、無口。同じ学校…つまりは先輩にあたるのだが、

やっぱりここ、色々キャラが濃い。キャラ濃い人達専門のとこなのかな。

おっといけない。話題の中心は今は音楽。分からないなりにしっかり聴いてみる。

 スタジオでの演奏で、間近で聴いているというのもあるが、とても耳に来る。

しかし、耳を塞ぎたくなるようなノイズという訳ではない。素人でも分かる、

心地良いサウンドが響き渡っている。こんな音を響かせているだけでも

なかなかのレベルなのではないだろうか。だけど、隣のネネは少々心地良さとは

程遠い表情をしている。その意味が分からないまま、短い演奏は終わった。

 「っと…、こんな感じかな。京さん、どう?聴いてみて。」

「ちょっと走り過ぎてたわよ侑。何度も言ってるじゃない!聞いてたの?」

「しょうがないよ、人前で弾くの久しぶりでね…。李穂は?」

「ちょっと、ミスった…。」

三人での反省会を遮って真っ先に口を出したのは、他でもない京音々だった。

「因幡先輩もリズム乱れてましたよ、それで全部乱れるんです。折角音は

良いもの持ってるのに…。行こう、海香。満足じゃないけど、これまで。」

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