第45話 経験は消費するもの

 「は?何勝手に決めてんの?もしかして、駒として見てる?」

「違う違う!素人でも上手い人達っているじゃん?ホントに良い演奏なら

それでいいし、ボロボロなら辛口に評価して、それでお終いでいいよ。」

「アタシ『元アイドル』ってだけで、そこまで音楽には詳しくないんだけど!?」

「でも、プロの世界で聴いてるから、上手い下手は分かるでしょ?」

「そもそもその人達どうしたいの?生徒会候補…じゃないよね?」

「私に一票を投じてくれる人への投資よ、投資!こういうのも、今から

準備しておくのも悪くないと思ってね。土曜日にこの貸スタジオでね!」

場所をしっかりアプリに載せておいて、長くなりそうな電話を切った。

 土曜日、貸スタジオ前に現れたのは、見るからに嫌そうな顔の姉と、

その腕にくっつく笑顔の妹。とりあえず仲は良さそうなままで何より。

舞ちゃんは正直どちらでも良かったが、ここでお帰り願おうものなら

きっと手に負えない。ついて来てもらうしかなかった。

 合流場所の第二スタジオに皆で入ると、福岡先輩ともう二人のメンバー。

「やあ、よく来てくれたね。紹介するよ、亜矢。この子達は…。」

「…待って。え、マジ?ネネ姫じゃん!アンタよく連れて来たね!」

知らないのが私だけのような雰囲気だ。どうせ私はアイドル関連の物は見ないよ。

「ボクが声を掛けたのはこの子だけど…。でも驚いたよ。芸能人じゃないか。」

「…プレッシャー。」

そう。歌手は一流の音楽を知っている、そういうイメージが勝手に

根付いているので、素人には専門家にしか見えていないだろう。

全てが格の高いあの学園では、果たして音楽もハイレベルなクオリティなのか。

面白い発見もありそうだ。

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