第43話 テンプレにはご用心

 「四時…十五分です。まだ日が高いから、気付かなかったんですね。」

「四時!?ヤバい!起こしてくれて助かった!あっギター!!

今度こそ亜矢あやに殺される!ごめん!また今度礼するから今日はこれで!」

そう言って乱暴に投げて来たのは、ラムネ味のキャンディーだった。

ドタバタしながらだったので、嵐の様に去っていく瞬間を見送るしかなかった。

その日はそれ以外に特に何も出来事は無かったので、報告を済ませて帰った。

 次の日、教室の前がとても騒がしい。ついにネネが元アイドルということが

バレてしまったのか、はたまた別の理由か。とにかく、これでは教室に入れない。

困っていた所、一人のクラスメイトが振り返って私に言ってきた。

「北見さんおはよ!北見さんってどこでゆうサマと知り合ったの!?」

指を差したその先には、昨日の放課後に見た紺のブレザーが立っていた。

「あっ昨日の!ちょっとここじゃ話せないや。屋上行こうよ屋上!」

ズンズン近付いて来て手を掴まれると、黄色い声というものがそこら中から

沸き上がった。私はこういう状況には興味が無いが、なるほど。よく見れば

このブレザー、中性的な外見をしている。背も高い方だった。一瞬男性かと

見間違う程の顔立ちなので、まるで少女マンガの状況になるのも頷けた。

 「改めて昨日はありがとう。何とか、ギリギリで間に合ったよ。

…ちょっと肘を食らっちゃったけどね。まだ一年だったんだ?」

「はい、お元気なら何よりです。用はそれだけですか?それでは。」

屋上に来ただけで、特に用は無かったようだ。早く教室に戻ろう。

しかし、この時はとても素早い動作で壁際に追いやられた。

いわゆる壁ドンのシチュエーションで近くからささやかれる。

「とても助かったのは事実なんだよ。だから、ボクの好意をそう

邪険じゃけんにしないで欲しいな。ちょっと付き合ってくれればいいんだ。」

…ここまでテンプレのシチュエーションだと、逆に気味が悪くなってきた。

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