第11話
香織と涼介は、企業の裏口から中へと忍び込んだ。彼らの前に広がるのは、薄暗くて狭い通路だった。足音を立てないように慎重に進みながら、彼らは企業の内部に潜入していった。
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通路を抜けると、広い倉庫のような部屋に出た。部屋の隅には段ボール箱が積み上げられており、その中にはさまざまな書類や物品が詰め込まれていた。香織と涼介は、隠れる場所を探して素早く動いた。
「ここは…企業の秘密の保管庫かしら?」
香織が小声で尋ねる。
「そのようだな。見てみろ、あの箱のラベルには『極秘』って書いてあるぞ。」
涼介は興味深そうに箱を指差した。
二人は慎重に箱を開け、中身を確認し始めた。そこには、企業の不正行為を示す証拠がたくさん詰まっていた。
「これで決まりね。これだけの証拠があれば、企業を倒すことができるわ。」
香織は嬉しそうに言った。
「しかし、これをどうやって持ち出すかが問題だな。箱ごと運ぶのは無理だし…」
涼介は考え込んだ。
その時、二人の背後から突然声が聞こえた。
「おい、そこの二人!何をしているんだ?」
振り返ると、そこには企業の警備員が立っていた。香織と涼介は一瞬硬直したが、香織がすぐに機転を利かせた。
「えーと、私たちはここで…掃除をしているんです!ええ、そう、掃除です!」
香織は無理やり笑顔を作りながら言った。
「掃除?こんな時間に?」
警備員は疑いの目を向けた。
「そうなんです。実は夜間にしか掃除できない特別な理由がありまして…ほら、あそこにある汚れなんかも特別な方法で…」
涼介も香織に合わせて言った。
「そんな馬鹿な話があるか!君たち、すぐにここから出て行け!」
警備員は怒鳴りながら近づいてきた。
香織と涼介は顔を見合わせ、一瞬の隙をついて警備員をかわし、通路に向かって駆け出した。
「逃げろ、涼介!」
香織が叫ぶ。
「了解!行くぞ、香織!」
涼介も全力で走り出した。
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二人は通路を駆け抜け、なんとかビルの外に逃げ出すことに成功した。息を切らしながらも、二人は無事に探偵事務所に戻った。
「ふぅ、なんとか逃げ切れたわね。でも、この証拠をどうやって持ち出すか、もう一度考えないと。」香織は息を整えながら言った。
「そうだな。次はもっと巧妙な方法を考えないといけない。」
涼介も同意した。
探偵事務所で待っていた一郎と花子は、二人の無事を見て安心した。
「香織さん、涼介さん、無事でよかった!何があったの?」
花子が心配そうに尋ねた。
「まあ、いろいろあったけど、とりあえず証拠は確認できた。でも、次はもっと計画的にやらないとね。」
香織は笑いながら答えた。
「それにしても、あの警備員の顔、今でも思い出すと笑っちゃうわ。」
涼介も笑い出した。
「本当ね。次はもっと上手くやりましょう。」
香織も笑顔で言った。
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