第5話

香織が会議室を抜け出し、廊下を歩きながら重要な情報を探る間、涼介は会議室でスーツ姿の男性たちと話を続けていた。彼は目の前の資料を見ながら、企業の最新プロジェクトについて巧みに質問を投げかけていた。


「新しい臨床試験プロジェクトには、多くの資金が投入されているようですが、どのような成果を期待しているのでしょうか?」

涼介は、まるで本物のプロジェクトマネージャーのように振る舞っていた。


「そうですね、このプロジェクトは非常に重要であり、期待も大きいです。具体的には…」

と男性が説明を始めると、涼介は心の中で笑っていた。


一方、香織は廊下を歩きながら、偶然にもコーヒーブレイク中の社員たちの会話を耳にする。


「最近、臨床試験のデータが改ざんされているって噂があるんだよ。上層部が隠蔽しているとか…」

一人の社員が言った。


「本当かよ?そんなことがバレたら大変だろうに。」別の社員が驚いた様子で応じる。


香織はその会話をメモし、さらなる情報を探すためにオフィス内を探索していた。その途中、彼女はひとつの扉に目が止まった。


「立ち入り禁止」


の札がかかっているその扉に、香織は興味をそそられた。


「立ち入り禁止ってことは、何か大事なものが隠されているに違いないわね。」

香織は周りに誰もいないことを確認し、そっと扉を開けた。


そこは、企業の秘密資料が保管されている部屋だった。香織は慎重に中に入り、資料を一つ一つ確認し始めた。その時、背後から声が聞こえた。


「おっと、お嬢さん。そこはちょっと危ない場所だよ。」

振り返ると、警備員が立っていた。香織は咄嗟に笑顔を作り、言い訳を考えた。


「すみません、ちょっと迷子になっちゃって…。お手洗いを探してたんです。」

香織は笑顔で言い訳をするが、警備員は怪訝そうな顔をした。


「ここは立ち入り禁止区域だ。お手洗いなら向こうの廊下にあるよ。」

警備員は親切に案内しようとするが、香織は機転を利かせて言った。


「ありがとうございます。実は、上司が急ぎの書類を探していたんです。手伝ってもらえますか?」

香織は警備員をうまく巻き込んで、その場を切り抜けた。


---


一方、会議室では涼介がスーツ姿の男性たちと話を続けていた。彼は企業の上層部の人間関係についても質問し、少しずつ核心に迫っていた。


「ところで、プロジェクトリーダーの田中さんは最近どんな感じですか?彼とは以前一緒に仕事をしたことがありまして。」

涼介は自然な流れで質問を続けた。


「田中ですか?彼は最近、ストレスで参っているようですよ。上層部からのプレッシャーが相当なものみたいで…」

と男性が答えた。


涼介はその情報を聞き、内心で微笑んだ。

「なるほど、これで田中さんにもう少し近づけるかもしれないな。」


香織が会議室に戻ってくると、二人は視線を交わし、暗黙の了解で情報を交換した。


「さて、そろそろ本題に入りましょうか。私たちは、真実を追求するためにここに来ました。どうかご協力をお願いします。」

涼介が言うと、会議室の空気が一変した。

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