第4話

郊外の閑静な住宅街に住む佐藤からの情報を手に入れた香織と涼介は、いよいよ企業の中枢に迫ることを決意する。目指すは、星光産業株式会社の本社ビル。東京の中心部にそびえ立つそのビルは、高層階から見下ろす景色が一望できる豪華なオフィスだ。


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東京のビル群の中にひときわ目立つガラス張りの高層ビル、そこが星光産業株式会社の本社だ。香織と涼介はその前に立ち、しばし見上げていた。


「こんなに立派なビルなのに、中でやっていることは真っ黒だなんてね。」

香織が呟く。


「見かけに騙されるなってことだ。さて、行こうか。」

涼介はにやりと笑い、二人はビルの中に足を踏み入れた。


ロビーは広々としており、白い大理石の床に高級感が漂っている。受付カウンターには、制服を着た女性たちがにこやかに対応している。その中の一人に、涼介が声をかけた。


「おはようございます。私たちは、新しい臨床試験プロジェクトについての打ち合わせに来ました。」


受付の女性は一瞬戸惑ったようだが、プロの笑顔を崩さずに応じた。

「お名前をいただけますか?」


「田中誠と申します。こちらは私の助手です。」

涼介が平然と答えると、香織は隣で頷いた。


「田中誠様ですね。少々お待ちください。」

受付の女性はコンピュータを操作し、確認を取ると、満面の笑みを浮かべた。

「どうぞ、14階の会議室にお進みください。」


エレベーターの中で、香織が小声で呟いた。

「助手って…。私の方がしっかりしてるんだからね。」


涼介は肩をすくめて笑った。

「まあ、役割分担ってやつだ。君がボスでも構わないけど。」


14階に到着すると、二人は広々とした会議室に案内された。窓からは東京の街並みが一望できるが、涼介はそんな景色には目もくれず、すぐに書類を広げた。


「さて、ここで何が見つかるか…。おっと、早速お出迎えか。」

涼介が言うと、会議室のドアが開き、数名のスーツ姿の男性が入ってきた。


「お待たせしました。田中さんと助手さんですね?」

一人の男性がにこやかに言った。


「はい、そうです。今日は新しい臨床試験プロジェクトについてお話を伺いに来ました。」

涼介は一瞬の隙も見せずに応じた。


「では、こちらにお座りください。まずは資料を…」

と男性が言いかけたその時、香織がにこやかに口を挟んだ。


「すみません、先にお手洗いを借りてもいいですか?」


「もちろんです。このフロアの右奥にありますよ。」

男性が答えると、香織は礼を言って会議室を出て行った。


涼介はその間、男性たちとの会話を続けつつ、香織が戻るのを待った。香織はお手洗いに向かうふりをして、企業内部の様子を探るために廊下を歩き回り、重要な情報を得るチャンスを窺っていた。

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