第2話

門司港の静かな夜が明ける頃、香織と涼介はジャーナリストのオフィスに向かっていた。古びたビルの一室、未整理の書類が山積みになった部屋に足を踏み入れると、二人は黙々と調査を始めた。


「こんなところで何を調べるつもり?机の中から秘密のファイルが飛び出してくるわけじゃないし。」香織が皮肉混じりに言うと、涼介は微笑みながら答えた。


「確かに。でも、ジャーナリストは常にメモを残すものだ。見逃すなよ。」

涼介は手際よく机の引き出しを開け、何か手がかりを探し始めた。


やがて、香織が引き出しの奥から一冊の手帳を見つけた。彼女は手帳を開き、ページをめくりながら重要な部分を読み上げる。


「ここに書かれているのは…企業の内部告発者と接触していた記録だわ。彼の名前は田中誠、彼が何か重要な情報を持っているかもしれない。」


涼介は頷き、手帳の内容を詳細にメモする。


「香織、次のステップはこの田中誠に接触することだな。だが、彼も危険に晒されている可能性が高い。我々も用心しなければならない。」

涼介の声には緊張が感じられた。


二人はカフェで田中誠との会合を設定し、彼からさらなる情報を得ることを決意した。カフェの窓際に座る田中は、手元のカップを弄りながら不安そうな表情を浮かべていた。


「あなたたちが例の探偵ですね?ここまで来るとは、勇気があると言うべきか…」

田中が小声で言う。


「ありがとう、田中さん。でも勇気だけじゃなく、しっかりとした情報も必要なんです。」

香織は優しく微笑みながら答えた。


「そういうことだ。あなたが持っている情報が決め手になる。」

涼介も落ち着いた声で続けた。


田中は、企業の不正行為に関する詳細な証拠を彼らに提供した。その証拠は、新薬の臨床試験結果の捏造や環境汚染、賄賂と汚職など、信じがたいほどの悪事が記されていた。


「これが、企業の闇の一端です。真実を明らかにするために、協力します。」

田中の目には強い決意が宿っていた。


「ありがとう、田中さん。これで真実に近づけるわ。」

香織は感謝の意を示しながらも、内心で次なる危険を予感していた。

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