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「ちょ、お兄ちゃん⁉ 何、止めてッ!」
少年は妹を強引に組み伏せ、身体を重ねてきた。
「お兄ちゃん⁉ 怖いよ⁉ 誰か、誰か助けて!」
妹は困惑した。兄の顔は怒りに歪み、目は虚ろだった。口元からは涎が零れ、常ならぬ剛力で妹を押さえつけてくる。
妹の足元には、およそ人体の一部とは思えない、熱くて硬いものがあたる。妹はそれを理解できなくとも、本能的に恐怖した。しかし覆いかぶさる兄を振り払おうとしても、凄まじい力で押さえつけられて抵抗できない。
色欲の悪魔の呪いである。
少年は妹を凌辱した。妹の口からは悲鳴が漏れたので、両手で首を捻じりあげて黙らせた。そうすることで、下の締まりも良くなるような気がした。
圧倒的な力で、少年は事を進める。下腹部に感じる未知の快感が脳髄を焼くようである。先ほどまであった妹を守るための決意は、台風の前の蝋燭の火のようにあっけなく消え去った。妹の悲鳴は少年の耳に届かない。
少年は正気を失い、溢れるような欲望の波に飲まれ、酩酊したように妹の身体を求め続けた。
全てが終わったころには、妹は息絶えていた。
急速に身体の熱が奪われてゆき、少年は自らが犯した罪を自覚した。快楽に染まっていた頭が今度は、自分がやったことへの悔恨と嫌悪にとって代わる。
少年は吐いた。泣きながら吐いた。胃の中のものを全て出し尽くしても後悔の念は微塵も減らず、少年は血を吐いた。
眩暈がする目で、妹を見やる。妹の顔は苦痛に歪んでいた。まるでこの世で最も醜悪なものを見たかのような、可哀相な顔だった。
少年は妹を川に沈めた。妹の死体を野ざらしにしておくわけにはいかなかった。自らの保身のために守るべき妹を犠牲とした後悔が、少年の全身を貫いた。泣こうが喚こうが妹は還ってこない。自分が殺したのだ。
家を失い、前科を負い、この先どうやって生きていけばよいのか。
少年は叫んだ。しかしその叫びは、燃え盛る町からの悲鳴と怒号にかき消され、誰にも届くことはなかった。
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