Ep7 仮説
「はぁ。なんだ。夢か。」
変な時間に目が覚めてしまった。
それにしてもなんだったんだ?あの夢。僕の妄想として結論づけるには少々解像度が高すぎる。かといって、漫画に描かれていた勇者ソルトはあんなに狂気じみた眼をしていなかった、はず。
ということは、勇者ソルトの記憶が僕の脳内で勝手に再現されたのか?漫画でも描かれていなかった、勇者ソルトの裏の記憶。ただそこには、不可解な点もあった。
1つ目は、紋章。「死の紋章」なんて設定、漫画のどこにも出てこなかった。
2つ目は、勇者ソルトの発言。「紋章の力を使ったら、僕は死ぬ」みたいなことを言っていたが、僕はこうして生きている。
この2つの疑問から、僕はこんな仮説を立てた。
勇者ソルトはすでに死んでいて、その肉体に僕を転移させたのではないか?
それを裏付ける証拠は、いくつか挙がってるんだよね。第一に、昔の勇者ソルトの、モロ死亡フラグのプロポーズ。もう一つは、結婚を約束したはずのシュガーが、いつになってもその話題に触れようとせず、僕に対して時折みせる、ひどく悲しげな表情。
そうなると、誰が僕を転移させたのかは、だいたい予想がつくよね。シュガーだ。シュガーは、本来死んでいるはずの
だとすると、僕が元の世界に戻るための条件は、自ずと見えてくる。勇者ソルトの蘇生だ。が、当然僕は死者蘇生の方法なんか知らないし、さっきいった通りなんで転生者に僕を選んだのかがわからない。「死の紋章」についての情報ももって調べる必要がありそうだし、まだ仮説を検証することはできないのだが、この仮説に基づいて行動する価値は十分にありそうだ。
まだまだいろいろ考えたいが、とりあえず寝よう。明日は早いんだ。睡眠が足りないと仲間に迷惑をかけてしまう。もう一度夢の続きを見ることができたら好都合だし。
僕はもっと考えておくべきだった。「死の紋章」とは何なのか。その紋章の副作用がどれだけ恐ろしいのか‥‥いや、本当は気がついていたのだろう。気がついていて、でもそれに眼を向けることができなかった。
それがあまりに恐ろしい力を持っていることに。
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