Ep5 考察

 魔物との初戦闘を終え、いろんなことをとりとめもなく考えていたら、夜になってしまった。翌朝にはこの宿を出て、野宿(!)をするらしい。

 このパーティーは世にも奇妙な構成というか権力構造をしていて、パーティーの結成とか運営をしているのは、剣士のビネガーなんだよね。普通は勇者だと思うじゃん。実をいうと戦闘力的にも勇者のほうが高い(とファンブックに書いてあった)し。でも、ビネガーの気配り力とかリーダーシップってえげつなくて、魔王討伐の計画を立てたのはビネガーなんだよね。

 で、そのビネガーが野宿するよって指示を出したの。まぁ従うしかないよね。魔王軍の残党を蹴散らしながら旅をするらしい。うーん。なんかやだな。どうせ元の世界に戻る(と思う)のに、あんまり仲間に愛着が湧くと別れが辛くなる。これからはソロ行動の時間を多めに取ろうかな。

 さて。安心して夜が過ごせる今のうちに考えておきたいのは、

・なんで僕はここに転生してきたのか

・これからどうするのか

・僕が昔持っていた紋章について

・シュガーと結婚する問題 の4つだ。

 まず、一番大きな問題、それは言うまでもなく「なんで僕はここに転生してきたのか」だ。それが判明すれば、元の世界に戻る手がかりになることは間違い無い。

 でも、一番すぐに考えるべきは「シュガーと結婚する問題」だよね。はぐらかし続けるにも限度があるし、最悪の場合、数年間は勇者ソルトではなく「僕」とシュガーが結婚生活をする、という誰得なラブストーリーを展開するハメになる。

 でも僕は難しいことが嫌いなので、まずは考えてて楽しそうな、「なんで僕はここに転生してきたのか」について考えることにする。正直言って、全く見当がつかない。とりあえず、今わかってることを整理すると、

・僕は魔王がすでに討伐された世界に、勇者として転生した

・僕は転生以前の記憶がないが、この世界については漫画を何周もしてるから熟知している

・でも、なぜか戦闘に関する情報だけ頭から抜け落ちている

・勇者が持っていた紋章が、なぜか消失した(原作漫画の作者も「読者の想像に任せる」としている。ふざけんな)

・その紋章が何だったのかすら覚えていない

これだけの情報から僕がここにやってきた理由を考察しなければならない。でも大丈夫っしょ。元の世界にいたときから、漫画の考察は得意だし。

 では、考察していきます。まず、「この世界については漫画を何周もしてるから熟知しているのに、なぜか戦闘に関する情報だけ頭から抜け落ちている」という謎現象について。

 まず思い浮かぶのは、「戦闘に関する情報を覚えられていると困るから」。誰が、とかなんで、とかは置いといて、例えば、この世界に僕を転生させた何者かが、僕(=勇者の肉体)をボロボロのゴミクズにしてから元の世界に返そうとしてる、とか。

 でもなぁ。それはそこまで現実性は高くないんじゃないかな。だったらすべての記憶を失わせるだろうし。

 2つ目は「紋章が消えたから」。紋章が消えた時点で、僕は半分くらいこの世界に転生してて、紋章と一緒に戦闘の記憶も消し飛んだ、とか。よくわからなくなってきた。

 ていうか、それを考えても「なんで僕はここに転生してきたのか」という至上命題の達成に至るのだろうか。よくわからなくなって来た。もういい。寝る。

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