Ep3 問題
「おーいソルトーー!どうしたんだー」
宿の下の大広間からビネガーの叫び声が聞こえる。僕はさっき起きたときに自分の回復力に驚いて大声をあげてしまったんだ。そりゃ仲間からも心配されちまうよなぁ。
ビネガーといえば、妙に心配性で周りへの気配りができる(という設定だった気がする)からなぁ。そういうキャラってだいたい僧侶とか魔法使いに多い気がするんだけどなぁ。剣士と言ったらもっと豪快なやつのことをイメージしてただけに、作品を読んだときは驚いたんだよね。
逆にシュガーは、ド天然で我が強くて、いつもは仲間に対して冷たい態度を取るが、稀にほんとは仲間大好き人間なところが出ちゃう、所謂ツンデレキャラだった気がする。そんでもって、最終話で主人公の勇者ソルトと結婚するんだよね。
え。結婚するの?
そういえば忘れてた。勇者ソルトはボス戦前、シュガーに対してこんなことを言ってた。
「この戦いで魔王を倒せたら、俺と結婚して欲しい」
おかしいよね。なんでこんなこと言っといて、魔王を倒せてるんだよ。今の発言バチクソ死亡フラグじゃねえか。
さて、どうするよ。そういえば魔王との戦いから帰ってきて、凱旋してるとき、シュガーがやたらとこっちを見てたんだよね。まさか裏にこんな心理があったとは。
でもなぁ。僕はこの世界で恋愛するつもりなんかないからなぁ。ふざけんなよ転生前のソルト。ああ。めっちゃ元の世界に戻りたい。蒸発したい。漫画で見たことあるよこの展開。
結婚生活を続けてくうちにどんどん相手に惹かれてくんだよね。んなわけないじゃん。僕だって一昨日までは別の世界で別の人生を歩んでいて、それなりに恋愛してきてるんだから。
はぁ。問題は山積みだけどさ。とりあえず飯食お。全てはそれからだ。
「いただきまーす!…うっまなにこれ。めちゃくちゃ美味いやないか」
思わず声が出てきてしまった。なにこれ。何と何をどう調理したらこの味になるのよ。うますぎんだろ。なんてことをほげーって考えてたら、シュガーがつぶやいた。
「食べてるときに声が出るとか、アホすぎ」
「…仰る通りでございます」
返事をするので精一杯だった。主人公の性格とかは把握してるから、あんま違和感はないと思うけど。
気まずい。非常に気まずい。
勝手に気まずくなりながら食事をしてる途中、町民が宿に駆け込んで来た。
「勇者様!魔物が現れました!」
よっしゃ助かった!ここから抜け出せるぜ!僕は仲間へ一人でもなんとかなることを伝え、宿から駆け出した。
「グルルル」
宿から走って三秒(僕の移動速度のステータスがイカれてる)。街の外れについた僕は、眼の前にいた魔物に対してビビっていた。そりゃ僕だって知ってたさ。この漫画の魔物が引くほどリアルに描かれてること。知ってたけどさ。いざ目の前にすると怖すぎない!?
大丈夫。僕は最強なはずだから。こんなクソ雑魚魔物(実際のところ強さはわからない)剣で一撃。僕は剣を抜いて———
「えいやああああああ!!」
「グルルルル」
ノ ー ダ メ ー ジ
えええええ!?なんで無傷なの!?おかしいだろ!俺は勇者だぞ!
ってか次って…モンスターのターンじゃ———
\(^o^)/オワタ
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