第4話 転生狼さんは少女を助けたい
日課の縄張りを巡回してる時に、偶然それを見つけた。いや、見つけてしまった。
『なんだ?こんな場所で白い…よ、幼女だと!?なんでこんな時間に!!あっ…』
人間の領域側まで覗きに来たら、視界の端にフラフラと揺れる白い物をみつけた。
思ってもないタイミングで出会ってしまったそれに注目してみれば、望んでいた筈の人間で一般人のしかも子供である。
フラフラと森を進む子にどうすればいいかと悩んでるうちに、倒れてしまったその少女のもとへ走り寄ってしまった。
うーむ、な、何と話しかけるべきか…
人間と意思疎通ができなかったことを忘れてる狼さんである
『
「…ぁ」
『
二度目の失敗かと嘆く狼さんは、再度気を失った少女にあたふたと慌てたり周りをぐるぐる歩いて見えた傷に再度驚いて回復魔法を掛けたりと混乱しつつも思考の角で情報の獲得をしていた。
『しかし、何故こんな所に、こんな子供が…やたらと傷だらけだし子供にしてはやせ細り過ぎだろう!迷子か?迷子なのか!?親は一体何を……まさか?孤児!?』
等と合ってるのかあってないのか分からない思考をしつつも体は淡々と行動を始めていた。
『水か?食い物か?魔物はほとんどいないと言っても放置するのもまずそうだし、そう言えばすっかり忘れてたが人間に生肉は不味いよな!?こんな体じゃ水も運べないし!ど、ど…どうしたら…』
なんて思考をしつつ向けた視界の先にはリンゴの樹が生えてるのに気がついた。
『そうだ!人間時代の看病のお供といえばリンゴか!!これをどうにか…えい、仕方ない』
リンゴをいくつか取り少女の近くに転がすと少女の口に果実か果汁でも入れと願いながらリンゴを噛み砕き始めるのだった。
3つ4つと繰り返し6つ目に少女が目を覚まし予定外の遭遇と言えど、少女の笑い声と共に狼さんの作戦は一歩進めたのだった。
朝日が昇り洞窟の中に光が差し込んでくると、白い狼さんと添い寝する白銀の髪の少女を照らし出し狼さんは目を覚ました。
『
自分の尻尾を掴まれた眠る少女にいい加減離してくれと言わんばかり鼻先で少女の肩を揺り起こす。
「……ふぁっ……おふぁよ」
ようやく起きた少女は、キョロキョロと周囲を見回して、夜の事を思い出した様に不安げに狼さんを見つめて安心した様に笑顔を浮かべた。
『
「あはは、君もおはようって言ってくれてるのかな?」
まだまだ意思疎通には遠そうだと狼さんは鼻先で最後の一個となったリンゴを少女に押しやった。
「わぁ、赤の実!ありがと」
ふむ、
獲物も取るのに加えて、この子のご飯も何とかしないとな…
なんて考えながら巣穴から出ようとすると少女に尻尾を掴まれ止められた。
「ま、待って!…どこ行くの?追いてかないで…」
尻尾を掴まれた事に怒ろうと振り向いたら少女の泣き顔に威勢は削がれてしまった。
『
なんて言いつつ鼻先で巣穴に押しやったりそれでも付いてくるを数度繰り返すと、体力が切れた少女は悲しそうに狼さんを見つめて座り込んだ。
「…待ってる…ちゃんと帰ってきてね!」
『
未だに意思疎通は無理そうだけど巣穴の入口から振り返り吠えて駆け出していく狼さんに少女は手を小さく振っていた。
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