第50話 VS キャム③
その場に立ち上がったキャムはヴァンのことを見つめる。
彼は今まで戦ってきた者たちとは強さのステージが明らかに違った。
今はこうして戦えているが、それもヴァンがわざと手加減をしているためだ。
彼が本気を出していたら今頃、キャムはこの世にはいないだろう。
彼が戦闘狂であることがキャムの命を繋ぎ止めたのだった。
このまま戦ってもキャムには勝ち目がないだろう。
それならば、撤退するかと言われれば、その選択肢はできない。
ヴァンはあまりにも危険すぎる。
今のままでは大丈夫かもしれないが、いつ何が起きるか分からない。
彼が世界に反旗を翻した時、この世界は混沌に包まれるだろう。
彼にはそれほどまでの危険性が内包されている。
そして、キャムは管理者とは違い、この状況を打開するための策がしっかりある。
そのため、キャムは諦めずにヴァンに挑み続けているのだ。
キャムは立ち上がるとすぐに目にエネルギーを溜め、ヴァンへ向けてビームを放つ。
ヴァンは盾でキャムの放つビームを防ぐ。
ビームを防いだヴァンはそのまま反撃として腕と肩の砲身からレーザーを放つ。
キャムは両手で目を守るように構えると、そのままヴァンのレーザーを防ぐ。
キャムがここまでヴァンの攻撃に耐えられているのは体がただ頑丈なだけではない。
キャムの毛は特殊であり、物理攻撃だけでなく、魔力などの攻撃をも弾く効果がある。
特に魔力耐性は異常に高く、魔術師の軍団であるグリモワールの天敵とも言えるだろう。
あまりにも攻撃が強すぎる場合はキャムの毛とはいえ、弾き切ることはできないのだが、それでも大部分のダメージを減らすことができる。
そのため、グリモワール相手と一対一で戦う場合、幹部以外には基本的に負けることはないだろう。
物理耐性の方もこの毛は高いのだが、魔力耐性に比べては低く、特に衝撃が伝わる打撃攻撃などには弱く、直接的なダメージは防げてもその衝撃は完全には防ぎきれない。
熱や冷気などの高温、低温などにも耐性があるのに加え、キャム本体にも熱耐性が高いため、ヴァンのレーザーを素手で防ぐことができている。
ヴァンはまだキャムの毛が打撃攻撃には弱いことに気がついていないため、まだ焦るような時ではない。
しかし、ヴァンは圧倒的な戦闘センスを持っているため、これ以上戦闘が長引いてしまうと弱点に気付かれる可能性は高い。
そうなれば、キャムもヴァンにあっさりやられてしまうだろう。
なので、キャムはなるべく時間をかけずにヴァンを無力化しなければならない。
だが、キャムの力ではヴァンを無力化などは不可能に近く、作戦のために時間稼ぎをしなければならない。
このまま押し切ることは不可能で、時間が経つほど弱点に気づかれる可能性が上がり、敗北に繋がってしまう。
この戦いはキャムの方が不利な状況に立たされているのだ。
レーザーを防いだキャムはヴァンに近づこうとするが、それと同時に先ほどまで使っていた盾を勢い良く投擲してきた。
キャムは投擲された盾を無視することはできないため、両手で盾を受け止める。
その際、ヴァンの投げた盾は大盾であったため、キャムは一瞬ではあるものの視界が塞がれてしまった。
キャムはすぐに盾を左へ投げ飛ばした時、視界には超巨大な砲台を構えているヴァンの姿があった。
そして、キャムが盾を投げ飛ばしたと同時に、キャムへ向けて砲台からレーザーを放つ。
放たれたレーザーは今までのレーザーとは比較にならないほど強力であり、キャムも直撃は避けなければまずいほどだ。
しかし、レーザーの範囲が広く、大盾で視界を塞がれて時間を稼がれているため、今からでは回避が間に合わない。
なので、キャムはレーザーを受け止めるしかない。
放たれたレーザーをキャムは両手を前にする形で受け止める。
掌はレーザーによって激しく押され、耐えきれずにあちこちから血が噴き出す。
それと同時に、キャムの体は高い再生能力によってすぐに治っていく。
キャムは必死に負けないよう力を込め、レーザーを押さえつけようとする。
そうして、キャムは負傷と治癒を何十回も繰り返した後、レーザーをなんとか防ぎ切ることに成功する。
レーザーを防ぎ切れたのは良いものの、キャムの消耗は激しく、息が上がっている。
この短時間で何十回もの再生を行ったことにより、キャムは大幅に体力を削られてしまった。
先ほどまではまだ時間稼ぎできるほどの体力はあったが、今はもうその体力すらも残っていない。
ここから短期決戦を仕掛けるにしてもヴァンはまだ本気を出していないのに加え、まだまだ体力も有り余っている。
まあ、ヴァンはサイボーグであるため、体力という概念はなく、エネルギーが続く限りは無限に動き続けることができる。
そのため、キャムは一気に窮地に立たされてしまったのだ。
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