第47話 異修羅会
「お前が、、、我が同門を壊滅させただと、、、?」
「ああ、そうだが?お前の同門は全員俺が手にかけたぞ?」
「どうして、、、どうして我が同胞たちを皆殺しにしたのだ!?!?」
「俺の大切なものを奪ったからだ」
ヴァンは殺気を纏った冷たい声で管理者に告げる。
「お前の同門は
「あの戦争、、、?まさか、お、お前は!?」
管理者はヴァンのことは知っていたが、それはあくまでもカーサスでの彼である。
その過去までは知らなかった。
だが、それはあくまでもヴァンとして認識していなかっただけだ。
ヴァンの過去はこの世界にいる者たちは誰でも知っている。
管理者はついに気がついてしまった。
ヴァンの真の姿に。
彼がどのような人物で、過去に何をやったのかを。
それに気がついた管理者は一気に戦意を喪失する。
こいつは本物の化け物だ。
自分程度では逆立ちしたところでどう足掻いても勝てない。
管理者はヴァンの正体に気がついた途端、体から冷や汗が止まらなくなる。
どうすれば、この場を乗り切れる?
どうすれば、ここから逃げられる?
この化け物から今すぐ逃げ出したい。
先ほどまでの勇ましい姿はまるで嘘のように怯えている。
怯える管理者を見てヴァンは思う。
あの異端審問官は自分の正体に気がつきながらも勇ましく挑んできた。
そして、横槍があったとはいえ、自分から逃げ切ることに成功している。
彼は最後まで諦めなかったのだ。
彼は確かに、力こそは弱かったが、その勇気と根性は本物だ。
彼はまさしく強者であった。
しかし、こいつは力こそはあるものの、自分の正体を知った途端、怯えた様子で逃げることしか考えていない。
心の底から管理者に落胆する。
最後に名前だけでも聞いておこうかとも思っていたが、その気すらも失せた。
もう戦う気もないならば、このまま始末してしまう。
ヴァンはそう思うと、白く輝く魔弾を生成する。
その魔弾は先ほどまでのものとは違い、輝きがより一層強くなっている。
それもそのはずである。
ヴァンはなるべく、この極秘拠点の原型が残るように威力を大幅に抑えていたのだ。
しかし、今回のは極秘拠点ごと管理者のことを葬り去るためのものだ。
だから、先ほどまでとは比べ物にならないほどの威力を秘めている。
そうして、ヴァンが管理者にトドメを刺そうとした時、いきなり天井から何かが突き破って出てくる。
ヴァンはすぐに後方へステップを踏むことで天井を突き破って出てきた何かとの距離を取る。
天井を突き破って出てきたのは全長6メートルほどの二足歩行型の生物であり、全身は黒い毛で覆われている。
しかし、既存のどの動物とも似ておらず、目は巨大な単眼で頭からは巨大な巻き角が一対生えている。
単眼の巨人は近くにいた管理者を掴み上げると、
「お、おい!!やめろ!!やめろぉぉおおおお!!!!!」
そのまま管理者を捕食した。
捕食する際、頭をしっかり噛み潰していたため、管理者は確実に死んだであろう。
まさか、自分以外にも侵入者がいるとは思ってもいなかったヴァンはこの巨人の登場には驚いた。
一瞬、あいつの差金かとも思ったが、あいつからの差金はあの宝石店の店員であった。
これは想定外の出来事だと判断しても問題ないだろう。
管理者のことを捕食した巨人にヴァンは話しかける。
「いきなり現れて俺の獲物を取るとはなかなか肝がすわってるじゃねぇか?お前は誰の差金だあ?」
『僕はキャム。異修羅会の命令でここに来た』
「異修羅会だと?おいおい、またもや大物の登場じゃねぇか!」
異修羅会とは、サーカスの五大派閥の一つであり、異種族のみで構成されている組織だ。
異種族とは、マザーやこのキャムのようにこの世界に属していない異世界から来た生物たちの総称である。
ある時、サーカスの中心に謎のワープホールが現れ、異種族はそのワープホールからこの世界へやって来たのだ。
今ではサーカスでは異種族は当たり前の存在であるが、最初のうちはその奇怪な見た目から差別され、人間たちとの抗争も絶えなかった。
そして、この抗争の際に異種族を人間から守るために組織されたのが異修羅会だ。
異修羅会は異種族史上主義などではなく、基本的に異種族と人間の仲を保つのが仕事だ。
時には武力で対抗することもあるが、基本的には対話などで解決することを務めている。
そのため、異修羅会の管轄はサーカスの街とは思えないほど秩序を保っており、唯一外部の人間たちも安心して旅行できるスポットだ。
それでもサーカスの街であるため、他の国と比べたら治安は悪いのだが。
異修羅会の管轄がここまで安全なのは彼らの実力が恐ろしく高いためである。
いくら規模がでかいと言っても力がなければ、他の勢力によって蹂躙されてしまう。
だが、異修羅会は総員が多いのに加え、個々の能力も高く、上位陣は生物としての桁が違うレベルの実力者揃いだ。
あのヴァンでも下手に喧嘩を売れないといえば、彼らの実力がよく分かるだろう。
彼らは桁違いの戦力を持つ平和主義者の軍団なのだ。
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