第44話 VS 管理者⑤
ついに魔術までも解禁したヴァンはとりあえず、管理者の出方を窺う。
こちらから攻めても良いのだが、相手は自分の魔術は初見である。
あまり攻めすぎると呆気なく負けてしまうかもしれないのだ。
ここは慎重に相手の成長を促しつつ戦うのが吉だろう。
ヴァンは管理者がどのような行動を取るのかを楽しみに待っている。
一方、管理者の方は初めて焦りという感情に襲われていた。
(あの魔力量は一体なんなのだ!?明らかに人間の領域から逸脱しているぞ!?)
ヴァンが放つ魔力量が一気に跳ね上がったことに驚きを隠せていない様子だ。
ただの魔力出力上昇であれば、管理者も驚くことはない。
わざと魔力を制限しているものなどごまんといるのだ。
しかし、これほどまで魔力出力が上がる者など見たことがなかった。
明らかに常識から外れた魔力量に管理者は驚きを隠せない。
だが、所詮は魔力出力だけだ。
魔術は魔力量だけでは決まらない。
管理者はそう自分に言い聞かせると、ヴァンへ向けて再び札を投げつける。
今度は紫色の札であり、一度も出したことのない札だ。
ヴァンは紫色の札を撃ち落とすようなことはせず、そのまま受けてみることにする。
そして、ヴァンに紫色の札がぶつかった瞬間、ヴァンの周りがいきなり強い力で押しつけられるように力が働く。
それはまるで、地球の中心へと引っ張られているような感覚である。
この感覚には覚えがあり、ヴァンはすぐにこれが重力魔術であると気づく。
まさか、管理者が重力魔術も使えるとは思ってもいなかったので、素直に感心する。
重力魔術は習得難易度が高く、多くの者は習得する前に挫折するか、命が尽きてしまうかの二択である。
そのため、重力魔術が使える管理者は一握りの天才であることが分かる。
ちなみに、ヴァンもオリジナルの魔術ではあるものの、重力操作系の魔術は使える。
そして、今受けている重力魔術の出力程度ではヴァンの動きを止めることはできない。
ヴァンは何もなかったかのように重力魔術でできたクレーターの中から外へ出てくる。
普通ならば、身動きが取れないどころか、潰れてしまってもおかしくない重力魔術から無傷かつ、平気な顔をして出てきた。
それはあり得ないことだ。
管理者は目の前の光景が信じられずに目を見開いていた。
そんな管理者にヴァンは言う。
「こんな程度の重力魔術じゃあ、足止めなんか出来ねぇぞ?お前も全力出して来いよ?このままじゃあ、負けちまうぜ?」
お前も本気を出したらどうだと。
その言葉を聞いた管理者は何かのスイッチが入る。
その瞬間、管理者の纏うオーラが変わる。
まるで、先ほどまでの人物が別人のように感じるほどに。
そして、管理者は答える。
「貴様はここで、絶対に殺す!!」
お前を殺して見せると。
それに対し、ヴァンは答える。
「やれるものならやってみやがれ。俺は期待しているぜ?お前の本気の強さになる」
やられるものならやってみせろと。
そう言われたならば、期待に応えるのが礼儀というものだろう。
管理者は今まで封じていた魔力を全て解放する。
ここで、全て吐き出す勢いでだ。
命すらも燃やしている。
そんな彼を見たヴァンは楽しそうな笑みを浮かべる。
これはとても楽しめそうだと。
ヴァンは全力を出した管理者へ向けて構える。
「ハウンドーーーー」
そう唱えると同時に、白い魔弾が管理者へ向けて放たれる。
覚醒した管理者にとって魔弾の速度はまるで、スロー再生のように見えていた。
だから、管理者は圧倒的な速度から繰り出される魔弾を難なく避ける。
魔弾を避けた管理者はそのまま目にも留まらぬ速さでヴァンとの距離を詰め、青龍刀を薙ぎ払う。
「ゼクスーーーー」
ヴァンは右手を剣へと変形させた後、ゼクスと唱えると、右手の剣が白色のオーラのようなものを纏った。
そして、薙ぎ払われた青龍刀を受け止める。
それと同時に右腕の上腕の外側を無数の小さなボックスに変形させ、ボックスから高速で弾丸が発射される。
管理者はそれを右手の青龍刀で弾き飛ばす。
その隙にヴァンは腹へ蹴りを入れ、管理者との距離を取ろうとする。
しかし、管理者はすぐに体勢を立て直すと、ヴァンへ向けて青龍刀を二本共投擲してくる。
ヴァンはハウンドにより、青龍刀を弾き飛ばす。
その間に管理者はヴァンの懐近くまで迫っており、手には何かの札を持っている。
その札の色は灰色であり、これも見たことのない札である。
ヴァンは近くまで迫った管理者から距離を取るために蹴りを放つ。
しかし、管理者の超反応により、ヴァンが繰り出した蹴りは回避されてしまう。
それと同時に、管理者は手に持つ札を至近距離でヴァンへ向けて放つ。
ヴァンと謎の札が接触した瞬間、強い衝撃が発生し、ヴァンは後方へ弾き飛ばされる。
あまりの威力にヴァンは体勢の制御が出来ずに何枚もの壁をぶち破りながら吹き飛ばされていく。
その隙を管理者が見逃すわけもなく、吹き飛ばされるヴァンについて行くように彼もヴァンの突き破った穴から追いかけてくる
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