第42話 VS 管理者③

 死体を引き摺っているヴァンは管理者の前に戻ってくると、そのまま管理者の方へ勢い良く低空飛行する。


 管理者はそれに対応するように胸から爆発札を何枚も取り出すと、ヴァンへ向けて放つ。


 拡散するように何枚も爆発札を投げたことで、通路には逃げ道がなくなってしまう。


 そんな状況でもヴァンは引くことなどは一切せず、そのまま直進する。


 そして、ヴァンは左手に持っていた死体を爆発札へ向けて勢い良く投げた。


 投げられた死体は大きさからは考えられないほどの速度で飛んでいき、爆発札とぶつかり、大爆発を起こす。


 爆発札の爆発に巻き込まれたことで死体は木っ端微塵に弾け飛ぶ。


 その中をヴァンは勢い良く駆け抜ける。


 この時になって、管理者はようやくヴァンが死体を持っていた意味に気づく。


 ヴァンは死体を爆発札を防ぐための肉壁にするつもりだったのだ。


 死体は所詮、肉の塊に過ぎない。


 それを有効活用するのは合理的だ。


 それに、グリモワールのことが心の底から嫌いであり、グリモワールには特に冷徹なヴァンらしい戦法だろう。


 死体を爆発札の盾として投げた後、ヴァンはそのまま管理者の元へ飛んでいく。


 今からでは爆発札は間に合わない。


 管理者は青龍刀で迎え撃つことにする。


 青龍刀を構えた管理者はヴァンが動くよりも先に踏み込み、斬りかかろうとする。


 それと同時に、ヴァンは右手に持っていた死体を管理者へ投げつける。


 死体を投げつけられた管理者であったが、それも想定内であり、死体ごとヴァンを斬り伏せようと更に深く踏み込み、青龍刀を振りかぶる。


 そして、管理者が青龍刀で死体を斬った瞬間、死体は大爆発を起こした。


 そう、ヴァンは死体の中に爆弾を詰めていたのだ。


 まさか、死体が爆発するとは思ってもいなかった管理者は反応が遅れてしまい、体勢を大きく崩して後方へ吹き飛ばされてしまう。


 目の前で爆発したというのに管理者にあまりダメージが入っていないのは彼が着ている服に魔術的な防御が施されているためであろう。


 ヴァンもこの不意打ちで仕留め切れるとは思ってもいなかったので、既に追撃に移行していた。


 胸の辺りから射出されたレーザーブレードを手に取ると、そのまま管理者に斬りかかる。


 管理者は体勢を崩している状況でも直ぐに青龍刀を薙ぎ払い、レーザーブレードを弾き飛ばす。


 それと同時に、胸の辺りをレールガンの砲台へと変形させていたヴァンは至近距離から発射する。


 管理者は魔術による身体強化を足に集中させ、発射されたレールガンの砲弾を蹴り飛ばす。


 まさに紙一重の技にヴァンは内心賞賛をしながらも追撃を繰り出した。


 ヴァンは管理者の振り上げた足を手に持つと、勢い良く投げ飛ばす。


 このまま足を切断しても良かったのだが、レールガンの砲弾すらも弾くような硬さを持つ足をそう簡単に切れるとは思えない。


 そのため、足を掴み、相手を投げ飛ばすという方向に切り替えた。


 投げ飛ばされたことで、再び大きく体勢を崩された管理者は追撃を阻止するために胸ポケットから札を取り出す。


 こちらは先ほどまで使っていた爆発札とは模様や色が違う。


 そのことから、また別の魔術が刻印された札であることが分かる。


 新しい札を手に持った管理者は追撃を仕掛けようとしてくるヴァンへ向けて放つ。


 放たれた札が先ほどとは違うことを確認したヴァンは腕をレーザーガトリングへと変形すると、札に発砲する。


 ガトリングから放たれる雨のようなレーザーを掻い潜ることは難しく、新しい札はレーザーによって撃ち落とされる。


 と同時に、新しい札は起動し、札からは雷が発生する。


 放たれた雷は目で捉えることの出来ない速度でヴァンへ向けて空を駆ける。


 普通ならば、回避不能の攻撃である雷をヴァンは高速変形で出した槍を地面に突き立て、それを避雷針とすることで雷札から放たれた雷を回避する。


 雷を回避したヴァンはそのまま槍を引き抜くと、管理者へ向けて投擲する。


 管理者は槍を回避しようと左へステップを踏み込もうとする。


 その瞬間、槍はいきなり分解され、小さな槍たちが様々な軌道で管理者へ向けて飛んでいく。


 流石にこの質量の面攻撃では回避しようがないため、管理者は魔術障壁を展開して襲い来る槍たちを防ぐ。


 槍を防いでいると、いきなり極太のレーザーが魔術障壁に叩き込まれる。


 魔術障壁は基本的にどの攻撃も防ぐことが出来るが、普通に展開した場合は防御力が低い。


 そのため、魔術障壁は相手の攻撃の属性に合わせてそれに特化した形で展開するのが基本的な使われ方だ。


 例えば、槍などの物理攻撃の場合は物理防御に特化した魔術障壁を使い、魔術に対しては魔術防御に特化した魔術障壁を使う。


 そして、今回はクラスタージャベリンは物理攻撃であったため、物理防御に特化した魔術障壁を展開していた。


 ヴァンはこの特性を活かし、魔力攻撃であるレーザーを魔術障壁に叩き込み、魔術障壁ごと管理者を撃ち抜こうとしたのだ。


 ちなみに、ヴァンは魔力を用いるレーザーと高エネルギーを用いるレーザーの二種類がある。


 今回は魔力のレーザーを使用した。

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