第34話 依頼人の正体
ヴァンは電話を切った後、事務所に行き、仕事用のパソコンをリビングへ持ってくる。
そして、送られてきたデータを確認し始める。
ヴァンは体の大部分が機械であるが、脳はそのまま生身なので、直接頭にデータを送るなんてことは出来ない。
一応、体の内部構造にはデータを受信して義眼に映すなんてことも出来たりするのだが、普通にウイルスに感染する危険性があるので、ヴァンは使ったことはない。
もしも、ウイルスに感染して体が動かせなくなったら一貫の終わりだ。
一応、セーフティーがあるので、体の自由を奪われて暴走するってことはないのだが、それでも危険因子を排除することに越したことはない。
大人しくパソコンに届いたデータを確認するのが最適解なのだ。
ヴァンは大人しくパソコンに送られてきたデータを確認してみる。
送られてきたデータには極秘拠点の場所や常駐している構成員の数とそれぞれの情報、見張りのルーティンなども事細かに書かれている。
他にも出入りのある構成員の情報やその頻度なども書かれている。
あまりにも完璧すぎる情報にヴァンは少し引いてしまう。
こんなのゲームの攻略記事を見ているのと同じようなものではないか。
ヴァンはつくづくそう思う。
まあ、普通に考えて情報は多ければ多いほど良いので、普通にありがたい。
そして、このデータには極秘拠点に侵入する最適な時間帯と管理者がいるところまでの最適ルートなどのサービスもついていた。
本当に、ただ指示に従って侵入するだけで管理者のところまで行けそうである。
ヴァンは送られてきたデータを一通り目を通し、内容を覚えると、大きなため息をつく。
どうやら、パソコンと睨めっこして疲れてしまったようだ。
ヴァンはとりあえず、今日は寝ることにする。
送られてきたデータには昼時の14時ジャストに侵入することが最適解と書かれていた。
普通ならば、夜に行くのが正解かと思われるが、この施設は極秘拠点だと言うこともあり、主に真夜中に活動をしているらしい。
そして、夜に活動している影響で昼間は警備が手薄になるようだ。
その隙をついて極秘拠点の中へ侵入しようと言う魂胆である。
流石は我が友といったところか。
相変わらず、作戦も完璧である。
彼の作戦通りに動く予定なので、ヴァンはベッドで横になる。
もちろん、横には楓がベッタリとついている。
まあ、昨日からこの調子なので、今更気にすることもない。
ヴァンはそのまま眠ろうとした時、
「なあ、ヴァン?少しいいか?」
楓が話しかけてくる。
それも真面目なトーンでだ。
ヴァンは何か重要なことだと思い、真剣な声色で答える。
「ああ、いいぜ?」
問題ないと。
ヴァンからの返事を聞いた楓はそのまま話を続ける。
「さっきの電話相手は何者だ?あれはただ者ではない。特に私の正体に気づいている点がおかしい。あれはこの世界の者ではない可能性が高い。一体何者なんだ?」
「実は俺もよく知らねぇんだ。ただ気まぐれで助けたら仲良くなったって感じだからな。詳しいことはあいつは教えてくれねぇし、探っても何も出てこなかった」
ヴァンは素直に電話相手の正体は分からないと答える。
ヴァンも彼の正体が気になり、何度も調査をしたのだが、彼にまつわる情報は何も出てこなかった。
それは言葉通りの意味であり、出身地や年齢、経歴など全ての情報が存在していないのだ。
これは明らかにおかしなことだ。
彼には大きな秘密がある。
それ以外は何も分からなかったのだ。
だが、彼はヴァンにとっては友達であり、よく依頼をしてくる常連でもある。
ヴァンにとってそれだけの情報で問題ない。
だから、ヴァンは彼について多くのことは知らないのだ。
ヴァンから分からないと伝えられた楓はこれ以上質問したところで意味がないため、正体を探るのは諦める。
だが、父たちに報告はしなければならない。
また厄介ごとが舞い込んできたなと楓は心の中でため息をついたのだった。
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