第33話 極秘拠点破壊依頼

「それなら、知ってること全部話してくれねぇか?俺も色々と知りてぇことがあるんだ」


 ヴァンは大体のことは把握している電話相手に洗いざらい吐くように言う。


 しかし、


『それは出来ないね』


 電話相手にはあっさり無理だと断られてしまう。


 そのことを不審に思ったヴァンは問い詰める。


「何で、話すことができねぇんだ?あれか?情報料がないからとかか?」


『いや、そう言うわけではないよ。ただ君たちには話せないってだけだよ。いや、君たち以外の全ての人に話すことは出来ないね』


「それはどう言うことだ?」


『うーん、君に何も話さない方が物事が上手く進むってことかな。変に教えたりしたら色々と問題が起きるんだ。だから、君に何も教えないことが最善策なんだよ』


「お前って、いつもそう言うよな。まあ、いつもお前の言う通りになるから今回も信じてやるが」


『そう言ってもらえると助かるよ』


 そうして、一旦会話の区切りがつく。


 そのタイミングで電話相手は本題に入る。


『それで、本題に入るんだけど、君にはグリモワールの極秘拠点の破壊をお願いしたい。その拠点を破壊しておかないと、後々面倒なことになるからね』


「また面倒な仕事だな。それで、報酬の方は弾んでくれるんだよなあ?」


『それはもちろんだよ。君のような優秀な傭兵を雇うんだ。相場よりも高い額を提示するから安心してくれて大丈夫だよ』


「分かった。これで契約は成立だな。それで、その極秘拠点の情報は送ってくれるんだよな?」


『そっちの方も安心して大丈夫だよ。事前に色々と調べてるからね。今からそのデータを送るよ』


 そう言った後、事務所の方から通知音が聞こえてくる。


 どうやら、電話相手がヴァンのパソコンにデータを送信したようだ。


 データの内容は後で確認すれば良いだろう。


 そうして、ヴァンは電話相手との通話を続ける。


「それで、その極秘拠点は普通に外からぶっ壊しちまっても問題ねぇのか?」


『いや、今回はこの極秘拠点の管理者を倒してもらう必要がある。だから、まずは中に潜入してもらいたい』


「ええ〜面倒くせぇな〜外から大質量攻撃したら死ぬんじゃねぇのか?」


『それはちょっと難しいかな。その管理者はグリモワールの中でも実力者の部類にいるからね。多分逃げられるんじゃない?』


 ヴァンはそう聞いた途端、顔色が変わる。


 その顔の変化を間近で見ている楓は呆れ返ったような表情を浮かべている。


 そう、ヴァンは満面の笑みを浮かべているのだ。


 極秘拠点の管理者が相当な手練れであると聞いたことで、彼の戦闘狂としてのスイッチが入った。


 電話越しでもヴァンの変化に気がついたのだろう。


 電話相手はヴァンの興味を引くように話を続ける。


『その管理者以外にも極秘拠点にはグリモワールの手練れが複数にいると言う情報も入ってるよ。極稀ではあるけど、グリモワールの幹部の出入りもあると聞いてるよ』


「ホーリーシット!!それマジかよ!!クソ面白そうじゃねぇか!!」


『喜んでもらえたようで良かったよ。それじゃあ、詳しいことはデータで送ってるから確認してね。私は忙しいからこの辺りで切らせてもらうよ』


 電話相手はそう伝えると、ヴァンとの通話を切ったのだった。


 新たに面倒な依頼が舞い込んできたと心底嫌だったヴァンであったが、強敵と戦えるとなれば、それは話が変わってくる。


 今では依頼が楽しみで仕方ないヴァンであった。


 そんなヴァンを見ている楓は馬鹿なことで騒いでいる兄たちのことを思い出し、苦笑を浮かべているのだった。

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