第32話 誰からの電話

「それで、メディアの規制の強化が入ったは結局どうしてなんだ?」


 ヴァンは国王の話で聞きそびれていたことを楓に質問する。


 それに楓も答える。


「それはその王様に潰された会社の二の舞を作らないようにするためだ。うちの王様は優しいけど、敵には徹底的だからな。これ以上被害者を出さないために放送法やらが制定されたんだ」


「王様から国民を守るために出来たのか、、、もしかしなくても王様って暴君だったりするのか?」


「うーん、どうだろう?うちの国民には凄く情に厚くて、接しやすくてノリもいいからな。国内人気は凄く高くて歴代最高の王だともてはやされているぞ?まあ、他国からは暴君って言われているが」


「もうよく分かんねぇな」


 ヴァンは楓たちの国王があまりにも常識外れすぎて見定めることを諦める。


 その国王はあまりにも規格外すぎる。


 ヴァンでも話を聞く限りでは見定めることが出来ないほどだ。


 一体どのような人物なのだろうか?


 ヴァンも少しは会ってみたくなる。


 どれほどの実力者なのかが知りたいためだ。


 きっと、その国王は強いのだろう。


 どれほどの実力者なのか気になる。


 ヴァンがそう思っていると、


「おい、ヴァン?今王様と戦ってみたいなとか考えているだろ?」


 楓からジト目で指摘される。


 どうやら、楓には全てバレているようだ。


 楓は言葉を続ける。


「冗談でもそんなこと考えてはいけないぞ?王様は生物としての次元が違うからな。戦いにすらならないぞ」


 ヴァンの実力では国王と戦ったところで、一方的に蹂躙されるだけだと。


 それに、楓は国王は生物としての次元すらも違うと言った。


 その言葉は普通ならば、相手を諦めさせることに有効だろう。


 しかし、戦闘狂であるヴァンには逆効果だ。


 ヴァンは余計にその国王と戦ってみたくなった。


 自分とは実力も存在すらも隔絶された絶対的な強者。


 ヴァンは一度でもそんな格上と戦ってみたいと思った。


 そんなヴァンの態度に楓は呆れ返ってため息をつく。


 そんなヴァンの通信端末にいきなり電話がかかってくる。


 ヴァンは心底面倒臭そうに電話の相手を確認した時、その表情が引きずったものに変わる。


 ヴァンの顔色が変わったことで、楓は電話の相手とはあまり話したくないのだということを察する。


 ヴァンは今すぐに電話を切りたい気持ちを抑え、電話に出る。


「おい、こんな時間に何のようだ?しょうもねぇことだったらお前んところのロボ軍団片っ端から壊すからな?」


『相変わらず、君は恐ろしいことを言うね。そんなことしたら、どれくらいの被害額になると思っているだい?私たちは大赤字だよ』


 電話をかけてきた相手はヴァンからの言葉を軽口だと思い、それに飄々とした態度で答える。


 電話から聞こえてくる声的に相手は男性のようだ。


 それも声から年齢は若いことが推測できる。


 ちなみに、ヴァンは冗談ではなく、マジでしょうもないことだったら電話相手が保有するロボットを全て破壊するつもりである。


 ヴァンも中々の鬼畜である。


 実際、この電話相手も何度かヴァンに自慢のロボット軍団を破壊されたことがある。


 そのため、対策はしっかりしているので、ヴァンに破壊されたとしてもある程度は問題ない。


 それでも被害総額は大変なことになるため、出来ることならば、避けなければならない。


 そして、電話相手は話を続ける。


『君に依頼したい案件があるんだ。受けてくれるよね?』


「いや、無理だが?普通にお前からの依頼は大体めんどくせぇし、いらねぇ敵を増やす羽目になるしで受けるメリットがねぇからな」


『昼間は僕のロボットの邪魔をしたのによくそんなこと言えるよね。君じゃなかったら、どうなってたか分からないからね?』


「どうもなってないから問題ねぇだろ?それじゃあ、電話切るからな」


『まあまあ、そんなに焦らないでよ。この案件は君にも得があるし、何なら君が保護してる楓さん・・・にも関係あるからさ』


「何でお前がそれを知ってる?」


 ヴァンは予想外すぎる言葉につい、聞き返してしまう。


 どうして、こいつは楓のことを知っている?


 政府の役人やその他勢力ですらもまだ気づいていないはずだ。


 それに、楓にはクローンやホムンクルスが存在しており、そのホムンクルスたちも全員違う名前である。


 そのため、楓という名前を特定することすら難しい。


 政府ですらも楓の姿は特定できていたものの名前までは出来ていなかった。


 それなのに、この電話相手は楓の名前も知っていれば、保護していることすらも知っている。


 元から彼は並外れた情報収集能力があることは知っていた。


 しかし、ここまでだとは思いもしなかった。


 近くで電話のやりとりを聞いていた楓も驚きを隠せていないようだ。


 そして、ヴァンは確かめるためにも質問する。


「それで、お前はどこまで知っている?」


『大体のことは知っているよ。彼女がなぜこの世界に呼ばれたのか、彼女の正体とか、後はこの街で誰が何をやろうとしているのかもね』


 そして、電話相手は答える。


 自分は全てのことを知っているのかと。

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